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2012年10月26日 (金)

Do I Have to Hesitate? (3)

W・C・ハンディのThe Hesitating Bluesの方は出版と同じ年,1915年10月にプリンスのバンド(Prince's Band)が録音している.これもCD化されていて,ビクター・ミリタリー・バンドのHesitation Bluesと同じCDに入っている.ビクター・ミリタリー・バンドのバージョンと同様にインストゥルメンタルのダンス音楽として演奏されている.

プリンスのバンドを率いていたのはチャールズ・プリンス(Charles Adam Prince)で,この人は1869年サンフランシスコ生まれだそうだ.彼の楽団は1891年には録音したというから古い人だ.色々なダンス音楽のレコードを作っている中で,1910年にI'm Alabama Boundの録音があったのに驚いたものだ.

黒人のミュージシャンで,ハンディ版を最初に録音したのは誰だろう.ジェイムズ・リース・ユーロプ(James Reese Europe,カタカナ表記はこれでいいんですかね)の楽団が1919年3月に録音したものだろうか.その録音はCDで聞くことができる.1880年生まれの彼は,1913年には録音をしていて,ジャズ直前みたいな位置づけで重要視されている.彼はバンドリーダー,作曲家として成功していたようだが,運が悪いことに,1919年の5月に楽団のドラマーに刺し殺されてしまう.

1919年には初期のジャズ・バンド,アート・ヒックマン楽団(Art Hickman's Orchestra)の録音などもある.

さて,チャールズ・プリンスとかジェイムズ・ユーロプのバンドの録音は,大編成のバンドによるインストゥルメンタルだが,ハンディの出版した楽譜にはちゃんと歌詞もついている.楽譜はDavid A Jasen (Ed.), Beale Street And Other Classic Blues, Dover Publicationsに収められていて,その表紙は,ご婦人がクラシックな電話機で,いやクラシックといっても1915年としては最新のcandlestickタイプだろうけど,どこかに電話中,というイラストになっている.歌の文句は,“Hello Central, what's matter with this line?”と,電話の交換手に恋人への接続を申し込んでいるんだけど,嵐で回線が吹っ飛んでいて,というストーリーになっている.

Handyhesitatingblues

しかし,この最初の歌詞,誰かが歌っていたものを借用したんじゃないかね.“Hello Central”という文句,ブルースの歌詞にときおり出てくるのは,もともとよく歌われていたんだろう.ライトニン・ホプキンスとか,チャーリー・パットンのPony Bluesにも出てくるし,他にもある.スティーヴン・カルトは,Barrelhouse Words (University of Illinois press)の中で,Centralとは電話交換手の時代遅れの呼び方,としている.

また,カルトは,1901年の流行歌Hello Central, Give Me Heavenのせいでブルースの歌詞に“Hello Central”という文句が広まったのかもしれない,としている.ポール・オリバーも,この歌がブルースと黒人ポピュラーソングに影響したとしている(Songsters & Saints, Cambridge University Press).このHello Central, Give Me Heavenというのは,チャールズ・K・ハリスという人物が作って出版した歌だ.どんな歌かというと,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の蝋管レコードアーカイヴで1901年録音や,1902年録音を聞くことができる.当然ながらブルースのブの字もない音楽なのだけど.

さて,カルトの本を見ても,なぜ交換手がCentralなのか分からない.これは,多分,電話が手動交換だった時代,交換手の居る電話局をcentral officeと言っていたからじゃないかと思う.“Hello Central”といったら「もしもし交換台」みたいなことだろう.

ハンディがHesitation Bluesを出版した1915年は,ぼつぼつ自動交換機が導入されていたはずだ.それでも,交換手に手動でつないでもらう,ということも普通にあったのだろう.

さて,Hello Centralで始まるW・C・ハンディのハンディのThe Hesitating Blues,歌ものとして最初に録音したのは,ニューオーリンズ出身の女性歌手,エスター・ビジョウ (Esther Bigeou) の1923年録音だろうかね.

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