2009年11月 8日 (日)

天才二世あらわる

セネター・ジョーンズ制作のニュー・オーリンズ・ブルースでは,こんなのも良いと思う.

Bobby Powell, When You Move You Lose b/w Drifting Blues, Hep' Me 176.

Hepme176 両面ともCDで簡単に聞けるので,アナログのシングル盤を引っ張りださなくてもよいのだけど,まあ安かったし,お買い得な方だ.

ボビー・パウエルは,盲目で,ピアノも上手い,歌も上手い,プラス天才然とした雰囲気,ということで,どうもレイ・チャールズっぽく見える.別にレイ・チャールズの亜流ということもなく,声も歌い方も全然違い,独自の個性はある.と,言いたいところだが,Hep' Meではレイ・チャールズの有名曲をいくつかカバーしたりしていて,それじゃ「物真似ではない」というフォローをしにくいよ.

レイ・チャールズっぽいとなれば,ブルースのレパートリーも当然ある.なにしろ彼の代表的なヒット曲のC.C. Riderはゴスペル・ブルースの傑作だ.あれは素晴らしいと思う.まあ,レパートリーの平均値はそんなにブルースじゃないだろうけど.

このHep' Meシングル盤,1980年前後のものだが,ブルース成分は濃い.Drifting Bluesはもちろん,何度もカバーされたジョニー・ムーアズ・スリー・ブレイザーズのピアニスト,チャールズ・ブラウンの大有名曲.このパウエルのバージョン,オリジナルのメランコリックなクラブ・ブルースの面影はなく,熱いゴスペル・ブルースに仕立て直されている.これはこれでかなり聞き物だが,別にDrifting Bluesの歌詞を使わなくてもよさそうな気がしないでもない.

When You Move You Loseの方はスローのソウル・バラッドだが,非常にブルージーな曲だ.ブルース形式ではないけれど,伴奏なんか,ほとんどブルースと言えそうな感じ.聞きごたえのある曲だと思う.

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2009年10月31日 (土)

スパイダーマンあらわる

セネター・ジョーンズの持っていたレーベルの中では,Hep' MeというのがLPも含めて多くのレコードをリリースしていた.ブルースもそれなりにあって,ウォルター・ウルフマン・ワシントンとか,ボビー・パウエルのゴスペル・ブルースなどが出ていた.

Willie Garland, New Orleans Blues In B Flat b/w I'm Goin' Back Home, Hep' Me VMNP-7242/7243.

Hepme7242 ウィリー・ガーランドという人は,1960年代にKentから出したシングル盤で知られている,いや知られてもいないだろうが,シンガー/ハーピストだ.Kent盤は1967年録音だけど,それにしては古すぎるスタイルで,それがちょっと良いのだけれどね.そのKent録音の3曲はP-VineでCD化されている(West Coast Modern Blues 1960's, PCD-3060).初録音は1955年で,ガーランド・ザ・グレートという,ちょっとプロレスちっくな名前で出たものだった.そのうちの1曲Hello Miss Simmsというのは,以前買ったStompin'レーベルのLPに入っていて,これが彼のハーモニカをフィーチャーした活きの良いインストゥルメンタルで,意外と格好よかった.同セッションのものが,UK AceのCD,Spark Records Story (CDCHD801)にも2曲入っているようだ.

今回のタイトルは相当に無理をしていて説明しないと訳が分からない.Kentで蜘蛛の歌(Black Widow Spider)を歌っていた人が意外なところから出てきた,と言いたくてこんなタイトルにした.Kent盤もガーランド・ザ・グレート名義のSpark盤もロサンゼルス録音,ということなので,ニューオーリンズのセネター・ジョーンズのとこからレコードが出れば神出鬼没感がある.なんかの都合で西海岸からニューオーリンズに引っ越したのかね.

それで,このレコードは1980年前後に出たものかと思う.出来の方は,どうもねえ,残念なことになった感じだ.I'm Goin' Back Homeという曲は,ミディアム・テンポの歌入りブルース.ウィリー・ガーランドのハーモニカにも歌にもすっとぼけたような,ひなびた味があるんだけれど,伴奏がモダン過ぎてどうにも合っていない.とても歌手の個性を考えてアレンジしたようには聞こえない.まさか,何か他の歌手用に作った伴奏トラックを適当にあてがったんじゃないだろうね.

一方,New Orleans Blues In B Flatの方は,アップテンポのインストゥルメンタルのブルースで,ガーランドがハーモニカのソロを聞かせるというもの.これも同じ様な印象で,バックとガーランドの反りが合わない.このホーンとか,全然無理っ,ていう感じだよなあ.

という訳で,文句は言いたいけれど,ウィリー・ガーランド自身はマイペースで音楽していて,Kent録音と変わらぬ個性を確認できる.

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2009年10月24日 (土)

歌いきった苦しい時代

1970年代の,南部産ブルースをもう一つ.

Eddie Lang, Mean Sad World b/w Bringing Back Those Old Days, Super Dome 505.

Superdome505 ニュー・オーリンズのブルースマン,エディー・ラングのレコードでは,このブログの最初の方でFood Stamp Bluesのことを書いた.そのときにはこのレコードを持っていなかったのだけれど,その後しばらくして入手できた.1970年代半ばに出たものだろう.

それで,Mean Sad Worldだけれども,このぐらい力のこもったスロー・ブルースを歌ってくれると良いねえ.Food Stamp Bluesよりずっとテンポを落とし,張りつめた雰囲気の中で,力強い声質を張り上げて歌っていて,大変な力作になっている.歌の内容は,Food Stamp Bluesの続編みたいな,生活の苦しさをぶちまけるもののよう.

Bringing Back Those Old Daysの方は分類すればミディアム・テンポのソウル・ナンバーだろうけど,これは楽曲,アレンジとも完成途上な感じ.ラングの声は良いと思うのだけれど.

プロデューサーは,ニューオーリンズでいくつかのレーベルを持って,多くのレコードをプロデュースし,自身もかなりレコードを出しているセネター・ジョーンズで,レーベルのSuper Domeも彼のレーベルだ.セネター・ジョーンズがプロデュースしたレコードにはいくつかブルースもあって,以前にとり上げたレコードではギター・レイ・ワシントンのものがそうだった.

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2009年10月17日 (土)

ひと休みの時代

前回はカルヴィン・リーヴィだったが,リーヴィと同じようにラリー・デイヴィスもアーカンソー州リトルロックに居た.デイヴィスは1980年代以降,P-Vineのライヴ盤,RoosterのFunny Stuff,PulsarのI Ain't Begging Nobody,BullseyeのSooner Or Later,と次々にLPを出して,比較的メジャーになったほうだと思う.これらのアルバムではスロー・ブルースの力作を多く収めたPulsar盤(EvidenceでCD化)なんかは良かった.その前,1970年代のデイヴィスは,レコードが少なく,停滞気味みたいな感じがある.

Larry Davis, Find-Em Fool-Em & Forget-Em b/w Same Thing, They Did To Me, Hub-City 629-73.

Hubcity62973 1973年に出たらしいこのレコード,デイヴィスが実力を出し切っているとは言えない.悪いとも言えないけれど.

Find-Em Fool-Em & Forget-Emはミディアム・テンポの,リラックスした雰囲気のブルースで,イントロなんかはちょっとジャズっぽい.ジョージ・ジャクソンがFameレーベルから出したものがオリジナルで,そう思うせいか,Z・Z・ヒルのDown Home Bluesとか,その系統のブルースのようにも聞こえる.この曲,聞きやすくて,悪くはないんだけれど,なんだか盛り上がらない.RoosterのLPでも再演していて,そのRooster録音ではファンク・ブルースにアレンジされており,全然感じが違う.聞き比べると,うーん,Rooster録音の方が完成度が高くて,上だろうなあ.このHub-City盤のだらだら感も良いけどね.

Same Thing, They Did To Meはファンキーなブルース.なんか,こーゆーの聞き覚えがあると思ったら,彼がVirgoレーベルに録音したけど未発表に終ったWhat They Do To Me(P-VineでCD化)と同じ曲,ていうか,...同じ録音じゃないの,これ.そうだとすると,このレコードのため新しく録音したのがFind-Em Fool-Em & Forget-Emの1曲だけで,B面にはVirgo用録音でレコードにならなかったのをこっそり入れてしまったのではないか.もうちょっとで生涯気が付かないところだったよ.

レーベルのHub-Cityだが,テネシー州メンフィスとジャクソン,と記されている.Same Thing, They Did To Meの作者はB・B・キング,となっているが,B・Bは録音してないんじゃないかな.

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2009年10月11日 (日)

帰還の日

またSoul Beatレーベルのものを.

Calvin Leavy, Free From Cummins Prison Farm b/w Enjoy Being Hurt By You, Soul Beat 118.

Soulbeat118 レーベルには1976年という表記がある.カルヴィン・リーヴィのLPを出す目的で日暮泰文さんがSoul Beatのカルヴィン・ブラウンと交渉していたのは1975年の夏だそうだから,このレコードの録音は同じ頃かもう少し後だろう.日本の会社から金が入ったからもう一丁やるか,というセッションだったんじゃないの,なんて想像する.

Free From Cummins Prison FarmはタイトルからしたってCummins Prison Farmの柳の下の二匹目のドジョウを狙った感じで,実際そのようなものだが,これがとても良い.こちらはCummins Prison Farmのような告発の歌ではなく,カミンズ監獄から釈放されたときの心境を淡々と歌っている.釈放が嬉しくないこともないが,それより無一文で刑務所から放り出されて困惑している,という歌のようだ.体験なんだか,創作なんだかよく分からないが,生々しいような気はする.

その日の朝,看守が俺のところにやってきた
手に何か書類を持っていて
俺の方を見て言ったのは
「これが出たから,お前は今日から自由の身だ」

それで,人の気配のないハイウェイへ出て
ポケットには小銭の一枚もなかったが
わが家へ帰ることにしたんだ
さんざん泣かせた家族のところへ

歌のメロディーがCummins Prison Farmそのまんまなので,どうしても二番煎じに聞こえて仕方ないが,それでもリーヴィの歌は説得力がある.伴奏はCummins Prison Farmよりダウンホームで,2本のギターなど,とても良いと思う.

その裏のEnjoy Being Hurt By Youもブルースで,こちらはファンキーなリズムを使った曲.悪くはないがフツーかな.

両面とも以前The Best Of Calvin Leavy (Red Clay 8303)でCD化されていたようだ.

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2009年10月 3日 (土)

消えた?ギター・スター(下)

ちょっといかしたギタリスト,フレッド・サンダースのアナログ・シングル盤は, Soul Beatレーベルに2枚あって(1枚は持ってない),あと 1984年にSamaというレーベルから1枚,の計3枚は少なくとも存在する.

Fred Sanders, I Like What I See b/w I Had A Feeling, Sama 050.

Sama050 このレコードが出る少し前,メンフィスで活動していた歌手兼ピアニストのビッグ・サム・クラークの録音にも付き合っている.ウィリー・フォスターのライヴ盤にも参加しているそうだ.allmusic.comを見ると,この人の(本当に同一の人なのか分からないけど)項目があって,2000年のCDが載っているから,消えたどころかディジタル時代になって録音が増えたくらいかもしれない.

それで,このシングル盤だけれども, Soul Beat盤と同じような印象かな.I Had A Feelingは前回のDon't Know What You're Doing To Meとよく似たスロー・ブルース.伴奏のアレンジはもう少しモダン.歌にきめ細かく応答するギターはよいけど,2コーラスに及ぶギター・ソロは沸点手前みたいな感じがする.歌は,キビシク言うと,非力な割におおげさで,魅力を感じない.全体的には普通すぎるギター・ブルースで,個性に欠けると言えるだろう.

I Like What I Seeは弾むようなリズムを持ったややテンポの速いブルース曲で,個人的にはこっちの方が良いと思う.歌は軽量級だけど,この曲では力が抜けて自然に聞こえる.女声コーラスが入るが,その使い方もよろしいのではないかと.ギターは格好よい.ということでこれは合格点.

レーベルにはメンフィスの住所が記されている.曲の出版社のPoppa Willie Music社というのはウィリー・ミッチェルと関係あるのかも.

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2009年9月26日 (土)

消えた?ギター・スター(上)

消えた,とタイトルに書いたけれど,多分消えてなくて,メンフィス辺りで元気にしていると思う.もういい歳だろうけどね.ただ,20年以上,フレッド・サンダースというシンガー/ギタリストに関するニュースを見ていなくて,この人がどうなったのかよく分からない.

Fred Sanders, Don't Know What You're Doing To Me b/w Across The River, Soul Beat 117.

Soulbeat117 Soul Beatレーベルの新人歌手として,フレッド・サンダースがこのレコードを出したのは1970年代前半くらいだから,軽く30年以上も前のことになる.その後の活躍はどうだろう,当時のプロデューサー,カルヴィン・ブラウンが期待した通りと言えるかどうか.

Don't Know What You're Doing To Meはメロウな,リラックスした感じのスロー・ブルース.フレッド・サンダースの武器はとにかくギターで,この曲でもイントロと間奏で熱いソロを聞かせている.歌の方は,悪くもないが,ギターに比べりゃもの足りない.伴奏はリズム・ギター,電気ピアノ,ベース,ドラムというシンプルなもの.

Across The Riverは速めなテンポのインストゥルメンタル・ブルース.終始サンダースがギターを弾いている.本人も伴奏陣も完璧ではないが,ギターの音色には魅力がある.

どうもメジャーにはなり損ねたフレッド・サンダースだが,ギターの才能は評価するべきだろう.

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2009年9月20日 (日)

玉葱の味わい

Soul Beatレーベルの主力アーティストはもちろんカルヴィン・リーヴィだけれども,それ以外のアーティストも何人かいて,こんな人もレコードを出している.

Willie Cobbs, Eating Dry Onions (Sitting In The Alley Crying For Bread) b/w Worst Feeling (I Ever Had), Soul Beat 112.

Soulbeat112 ウィリー・コブスは何度かカバーされたYou Don't Love Meは知られているだろう.Rooster BluesやBullseyeでCDを出し,allmusic.comを見ると,どこで流通しているか知らないが自身のWilcoレーベルでもCDを出しているようだ.アルバム以外に,1960年代から1980年代に掛けて,色々なレーベルでかなり多くのシングル盤も作っている.

ウィリー・コブスのシングル盤作品は,現在いくつかのCDでリイシューされているようだ.しかし,これらを世界で最初にまとめてリイシューしたのは日本盤のLP,Mr. C's Blues In The Groove!, Mina M-1005だったのではないか.もっとも,このLPの発売当時の印象は,「うーん,小粒な人みたいだな」というもので,その後は興味を失って,何枚か出たCDも実は聞いていない.今そのLPを改めて聞くと,捨て難いと思うけどね.

このSoul Beat盤の2曲,MinaレーベルのLPに同じタイトルの曲が入っている.だけどそのLPに入っているものとは違う.

Eating Dry Onionsはジミー・リード風の2ビートのブルースを硬化させたような感じ.歌の節回しがなんとなくYou Don't Love Meにところどころ似てしまうのがコブスらしい.コブスが強力なブルース歌手だとは思わないけど,タイトな伴奏にのって,本人比で力作だろう.LPに入っているバージョンはホーンが入っていたりして色々違っている.出来は微妙にこのSoul Beat盤が良いかな,いや,大差無いかな.

Worst Feelingは快調なリズムに乗ったインストゥルメンタルで,コブスのハーモニカをたっぷり聞ける.コブスのハーモニカは,例えばジェリー・マッケインあたりに比べると上手くないが,ひなびた味わいはある.ギター・ソロもよい感じ.LPに入っているものは,歌入りだ.伴奏トラックは同じかもしれない.歌詞とタイトルからすりゃ歌入りが本物だろうな.

The Blues DiscographyはWorst Feelingは1967年,Eating Dry Onionsは1970年の録音としているが,それが正しいのかどうか良く分からない.

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2009年9月13日 (日)

ギャンブラーのブルース

1970年代にアーカンソー州でレコードを出していたブルースマンとしては,カルビン・リーヴィは有名人の部類だろう.カルヴィン・リーヴィ,世間の評判はどうなんだろう.Cummins Prison Farmはヒットもしたし,良い作品ということで異義なし,なんだけど.純粋に音だけを聞く限り,Cummins Prisonを除けばローカルな,いささか地味めの中堅ソウル・ブルース・シンガーで,ギタリストとしても悪くはないけど,てなところだろうか.でも,実は,この人の個性は,すんごい辛口の歌詞を歌う人,という点にあるのではないか.そう思うのはP-VineのLPの一番最後に入っていた印象的なブルース曲のBorn Unluckyとか,曲調は明るいI've Got Troublesとか,ずいぶんキビシイ境遇のことを歌っているのがあるからだ.1973年に出た2パートに及ぶこの傑作も苦い内容のように聞こえる.

Calvin Leavy, Goin' To The Dogs Pt.1 b/w Goin' To The Dogs Pt.2, Soul Beat 111.

Soulbeat111 賭博絡みのブルースは昔からあった.戦前の,古い曲だったらGeorgia SkinとかCoon Canとかがときどき歌の文句に出てくる.ペグ・レッグ・ハウエルのSkin Game Bluesとかメンフィス・ミニーのGeorgia Skinとかに出てくるGeorgia Skinというのはトランプ博打のようだ.ピーティー・ウィートストローのCoon Can Shortyで歌われるCoon Canというのはサイコロ博打らしい.戦後録音でも無論いろいろあるだろうけど,サイコロ博打の歌ではビッグ・チーフ・エリスのDices, Dicesとか,トランプ博打だったらJ・T・ブラウンのBlack Jack Bluesとかはよく印象に残っている.競馬の歌もある.ジョン・リー・フッカーが「女が競馬狂いで困る」と唸るPlayin' The Racesとか,「馬に賭けるなんて割に合わない」なんて言われるチャールズ・ブラウンのRace Track Bluesなんかがそうだ.競馬がちらっと出てくる,という程度なら当ブログで取り上げた曲のなかにもある.そう言えば前回のMy Race Hossは競馬の歌とは言えないけれど,競争馬の比喩を使った歌だった.

米国のギャンブル・スポーツでは,競馬の他,ドッグレース,ハイアライが盛んだ,と昔何かで読んだことがある.米国人のドッグレースに対するイメージってどうなんだろう?ルーツが貴族のスポーツである競馬と,ドッグレースを比べりゃ,ドッグレースは競馬のマイナーな代替品みたいな,場末っぽい感じじゃないのか.間違ってるかもしれないけど.

競馬の歌はそこそこある一方で,ドッグレースをネタに選んだ曲って他にあるんだろうか.リーヴィがドッグレースに溺れる男の歌を発想した元は,彼自身の体験なのか,誰か知っている人のことなのか,分からない.検索してみると,アーカンソー州にもウェスト・メンフィスにSouthland Parkというドッグレース場があるそうだから,リーヴィがドッグレースに馴染があったとしても不思議なことはない.ドッグレースを題材に選んだことで,ただ珍しい,という以上にギャンブラーとしての玄人っぽさや,わびしさが感じられるような気がする.

曲は出走ファンファーレのメロディーをギターで弾くイントロから始まる.このイントロからしてもの悲しいものを感じてしまう.それで,ゆったりとしたビートの,メランコリックな伴奏にのってリーヴィは切々と歌っていく.歌の主人公の男はドッグレースで負けが込んで借金漬けになっていて,家もなにも差し押えられている.そんな家の居心地が良い筈は無い.それで,男は外に出掛けるが,その行く先はまたしても近所のドッグレース場になってしまい,そこで取ったり取られたり,取られたり取られたりして一日を過ごしてしまうのだ.

女のもらう生活保護をすっちまった
一日二重勝で勝負してたんだ
それで家に帰ったら案の定
とんでもない騒動になったのよ

歌の文句にあるdaily doubleというのは,特定2レースの1着を当てる馬券,いや,これは犬だからワン券で,日本語にすると一日二重勝となる.聞いていると,この男がドッグレースを本当に好きなのかどうか,分からなくなってくる.嫌いでもないだろうが,ギャンブルの興奮も陶酔も歌には全然出てこない.むしろ自分が狙った犬がいつも来ないのでうんざりしているようでもあるし,ギャンブル依存を後悔しているようでもある.それでも自分の家は借金と争い事だらけで,男は心休まる唯一の場所であるドッグレース場からどうにも離れられないのだ.

歌の世界がこれで伝わったのかどうか分からないが,素晴らしい作品だと思う.日本盤のLP/CDには入らなかったが,海外でCDリイシューされているようだ.

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2009年9月 6日 (日)

ウェスト・メンフィスの主(完)

サニー・ブレイクはCMCで3枚のシングル盤を出していて,これはその3枚目.

Sonny Blake with the Bo-Petes, My Race Hoss b/w So Much Trouble, CMC 1022/1023.

Cmc1022 My Race Hossはミディアム・テンポの心地よいブルースで,伴奏の方はハウリン・ウルフのI Walked From Dallasをゆる~くした感じ.歌の方は,ああ,この歌の文句に覚えがあるな.アーサー・クルーダップが1941年に録音したBlack Pony Bluesだ.渋い選曲じゃん.クルーダップの初期の曲は聴いてると結構癖になるのだけれど,ブレイク氏もクルーダップのレコード何度も聞いて覚えたのかな.ハーモニカもいい感じで,結論としてはナイス・サザン・ブルース.

My Race Hossに比べるとSo Much Troubleはいくぶんモダンなハチロクのミディアム~スローのブルース.何か元歌がありそうだが分からなかった.これも,特別にどこかが際だっているというわけではないけれど,良い出来だと思う.

このレコードのレーベルには1972年10月という年月が記されているのに気が付いた.前々回に1980年頃のレコードじゃねえか,みたいなことを書いてしまったが,全然違ってた.すんません.プロデューサー,アレンジャーの名前も記されていて(誰だか良く分からないけど),My Race HossSo Much Troubleでその名前が微妙に入れ替わっているので,録音セッションは裏と表で違うのかもしれない.

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2009年8月30日 (日)

ウェスト・メンフィスの主(続き)

ハウリン・ウルフの伝記本に出ているサニー・ブレイクの話で可笑しいのは,ウルフとサニー・ボーイ・ウィリアムソン・No.2という,「混ぜるな危険」みたいな組合せでブレイクを聴きに来た,というやつだ.ウルフとサニー・ボーイが眠り込んでいるすきに2人の靴をこっそり取り換えて,2人が目を覚ましたら騒動が起きるのを見て楽しもうとした,っていうんだが,ずいぶんお茶目な人でもあるが恐ろしい遊びをする人でもある.

Sonny Blake with the Bo-Petes, Sad Christmas, Baby Pt.1 b/w Sad Christmas, Baby Pt. 2, CMC 1018/1019.

Cmc1018 前回のBig Fourに続くレコードがこの2パートに渡るクリスマス・ブルースだ.前回取り上げたBig Fourはごくダウンホームなブルースだったけれど,このSad Christmas, Babyはずっとモダンなスロー・ブルースになっている.どちらがサニー・ブレイクに合っているかというと,Big Fourの方だろう.Sad Christmas, Babyでのブレイクの歌は渋いところはあるが平凡な部類で,ハーモニカも吹かないし,彼の個性は十分味わえない.但し,バンドの伴奏はかなり良い感じなので,悪いレコードとも言えない.

Sad Christmas, Babyという曲の作者はクライズ・フレミングズ,と記されているが,誰だか知らない.題名はチャールズ・ブラウンのMerry Christmas, Babyみたいだが,全然関係ない曲だ.

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2009年8月22日 (土)

ウェスト・メンフィスの主

サニー・ブレイクという人はアーカンソー州ウェスト・メンフィスで若い頃のハウリン・ウルフをよく見ていたようで,ウルフの伝記本でその証言がいくつか使われている.ウルフを見たというのは1950年前後のことだろうが,ずっと後(1980年代?)になってこんなシングル盤を出している.

Sonny Blake, Big Four b/w James Armstrong, Thank God, Calley Wasn't Black, CMC 1013/1015.

Cmc1013 長い間,レコードも出さなければ有名になることもなく,ウェスト・メンフィスで地道に活動していた人のようだ.レーベルのCMCの住所もウェスト・メンフィスになっている.

それで,サニー・ブレイクのBig Fourだけれど,中くらいのテンポの,心地よいサザン・ダウンホーム・ブルースで好感が持てる.歌,ハーモニカ,ギター2本,ベース,ドラムというような編成で,ハーモニカはブレイク自身だろう.サニー・ボーイ・No.2をうんと地味にしたようで,堅実に吹いている.歌にもかなり味わいがある.

Big Fourとか Big Four Bluesとかいう歌が昔から色々あって,戦前にはリロイ・カー,チャーリー・ジョーダン,ボビー・リーカン,ウォルター・デイヴィスがこのタイトルで録音している.なんかあまり共通性のないメンバで,曲としては,これらは全部違う.違う曲でも,Big FourことThe Cleveland Cincinnati Chicago and St Louis Railway Companyという鉄道のことをテーマにしているのは共通している.それで,こういう戦前ものとサニー・ブレイクのBig Fourが関係しているかというと,どうも別路線の曲のようだ.ブレイクの曲は1970年代にカルヴィン・リーヴィが録音したBig Fourと大体同じだ.何か誰かのオリジナル録音がありそうだが,ちょっと思い付かない.

裏面にはジェイムズ・アームストロングという人が入っているが,これはHightoneなどでCDを何枚か出した人とは同姓同名の別人だ.ミディアム・テンポの,ローカルなソウル曲でまあまあの出来.

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2009年8月15日 (土)

ウルフ学校卒業生・その5

ハウリン・ウルフの伝記DVD,The Howlin' Wolf Story (Bluebird)にはサム・レイが撮った8ミリ・フィルムの映像が使われていて,音は無いのだけれど,一瞬でも見逃したくないような記録になっている.1960年代のシルヴィオズ(?)の風景だが,なにしろ演奏中の動くウルフのバンド,その中でリトル・ジョニー・ジョーンズがちらちら写ったりするからなあ.

Little Johnnie Jones & the Toe Twisters, Prison Bound Blues b/w Don't You Lie To Me, Rooster Blues 23.

Rooster23 ジョニー・ジョーンズは歌でもピアノでも抜群の良さを持っていたけれど,ソロ・アーティストとして十分な量の録音をする前に死んでしまった.Aristocrat,Flair,Atlanticに少しずつある録音,タンパ・レッド名義のもの,ノーマン・デイロンがクラブで録音したもの,と彼の残した作は大体CD化されている.これらの出来は,ここを見に来る方々なら知ってのとおり,というものだ.

さて,このRooster Bluesのシングル盤,ジョーンズはいつも通り良いけれど,彼の録音の中では少々難有りの方かなあ,と思っている.曲の方は,Prison Bound Bluesはもちろんリロイ・カーの良くカバーされるアレ,Don't You Lie To Meはタンパ・レッドの曲だ.この手の昔のシティ・ブルースはジョーンズにはやりやすい得意のレパートリーだったということか.

難有り,だと思うのは伴奏陣で,元気はあるが,どうも曲にぴったりあう演奏でないというのか,ジョーンズをよくサポートしていないようだ.最初聞いたときは,バンドの連中に酒が入り過ぎて,暴走しているのかと思った.いま聞き直すと,ギターとサックスの音量を下げて,ピアノの音量を上げるだけで結構良くなりそうにも思う.そんな訳で,出来は完璧ではないけれど,ジョーンズの良さを知る人ならば聞きたくなるだろうし,聞いて損はないだろう.

The Blues Discography 1943-1970によればC.J.レーベルのカール・ジョーンズが1964年に録音したもので,ギターはリー・ジャクソン,テナー・サックスはもしかしたらボイド・アトキンス,ベースとドラムは分からないそうだ.なお,彼のファースト・ネームのジョニーのつづりだが,いつもJohnnyのことが多いが,このレコードではJohnnieになっている.

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2009年8月 9日 (日)

ウルフ学校卒業生・その4

ヘンリー・グレイのSunland盤をもう1枚.

Henry Gray and His Bayou Buddies, Tell Me Baby b/w Nightime Is The Right Time, Sunland 106.

Sunland106 これは1988年の表示がある.これもなかなか良くて,1988年とは思えないスタイルのブルースを聞かせる.

Tell Me Babyはアップテンポのブルース.グレイの泥くさい歌いっぷりはかなり魅力があって,演奏も,まあ,ワイルドに決まっている.

Nightime Is The Right Timeはナッピー・ブラウン/レイ・チャールズのThe Right Timeだ.レイ・チャールズらの録音の30年くらい後の録音だけれど,グレイのバージョンはダウンホームなルイジアナ・ブルースのスタイルになっていて,レイ・チャールズらのものとどちらが古いんだか,訳が分からない.

グレイがその後録音したCDと比べて,そう変わり映えしないから,どうしてもこの盤を聞くべき,ということもない.しかし,長い間,駄作の少ない人だなあ.

ウルフ学校卒業生と言えば,一昨日の夜,テレビ(BS-i,アメリカの町,イリノイ州シカゴ ブルースの聴こえる町)でエディ・ショウ見たな.Red Roosterなんて歌ってた.いや,見た,というだけなんだけど,ウルフのレパートリーが出るあたりが,やはりねえ.

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2009年8月 2日 (日)

ウルフ学校卒業生・その3

ヘンリー・グレイのレコードだけれど,前回のSunland 103は1983年の表示があったけれど,その次に出たのは少し間が空いて1985年という表示がある.

Henry Gray and His Bayou Buddies, How Can You Do It b/w Henry's Rock, Sunland 105.

Sunland105 バンド名も変わっていて,多分メンバーは入れ替わっているのでないかと思う.ウィスパリング・スミス(1984年没)はもう亡くなっていて,ハーモニカは入らない.それでも音楽の性格にはそう変わりはない.

How Can You Do Itはアップテンポの賑やかなブルース曲で,グレイはこの曲をモーリス・ピジョーと共に1958年にAtomic-Hレーベルに録音している.これは録音当時はお蔵入りだったけれど,今ではChicago Ain't Nothin' But A Blues Band (Delmark/P-Vine)で聞ける.そのオリジナル録音はサックスのリフがジャンプ・ブルースっぽい雰囲気を出している.それから27年くらい経って録音されたこのSunland録音,ちょっとDust My Broom調のギターで始まって,なかなかダウンホームに仕上っている.グレイの歌も,あまり衰えを感じず,むしろ貫禄がついたようにも聞こえる.

Henry's Rockというのはブルースバンド付きのブギウギ・ピアノ曲.普通のブギウギ・ピアノ,と言えばそれまでだけれど,それなりに心地よい.

好みで言うと,片面は前回のDon't Start That Stuffみたいな重々しいスロー・ブルースの方がよかったかな.

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2009年7月26日 (日)

ウルフ学校卒業生・その2

ヘンリー・グレイはBlues Unlimitedに1970年に録音したすぐ後,同じ年にArhoolieに3曲(Louisiana Blues, Arhoolie CD 9004),Excelloに4曲(Swamp Blues, UK Ace CDCHD 661)と録音がある.その後,少し間が空いて,1977年にドイツでLPを作った(They Call Me Little Henry, Blue Beat 7732),なんて話があるけれど,それは聞いたことがない.Blind PigのLP(Lucky Man, Blind Pig BP 2788)が出たのは,1988年らしい.Blind PigのLPの前,グレイはフロリダのSunlandレーベルから何枚かシングル盤を出している.

Henry Gray and The Mighty House Rockers, Don't Start That Stuff b/w Talkin' About You, Sunland 103.

Sunland103 Sunlandは,1980年代にベテランの,比較的古いスタイルのブルースをシングル盤で出していたレーベルで,コンピレーションLPも出ていたようだ.このSunland 103には1983年というリリース年が記されている.

ヘンリー・グレイはDon't Start That Stuffという曲を気に入っていると見えて,このレコードの後も何度か再演している.重みのあるナイス・スロー・ブルース.グレイは左手がしっかりとリズムを刻みながら,グリッティな歌を聞かせている.ハーモニカはウィスパリング・スミスだろう.

Talkin' About Youの方は軽快なシャッフルの,ルイジアナ風ブルース.グレイならではのよく転がるピアノがかなり聞ける.

両面とも昔ながらのブルースで,何も新しいことはないが,ダウンホームな感覚は心地よい.特にDon't Start That Stuffには聞きごたえがある.

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2009年7月18日 (土)

ウルフ学校卒業生・その1

ハウリン・ウルフの伝記本を読むと,ウルフのバンドにずいぶん色々な,その後の有力ブルースマンが出入りしていることがわかる.マディ・ウォーターズのバンドもそうだろうが,ウルフが常によく目を光らせて,出来ると思った若手には声を掛けていたようだ.当ブログで取り上げたミュージシャンだと,ウルフとレコーディングがある人で言えばデトロイト・ジュニアアブ・ロックジェイムズ・コットンフレディー・ロビンソンなんかが居て,一緒にレコーディングしたことはないけどバンドの一員だったことがある,というならバイザー・スミスジョニー・リトルジョンアルヴィン・“ヤングブラッド”・ニコルズ,という風に色々名前が上がる.

Henry Gray, You're My Midnight Dream b/w I'm A Lucky Lucky Man, Blues Unlimited 1001.

Bluesunlimited1001 ヘンリー・グレイはウルフの録音,例えばI Have A Little Girlなどで小気味よくピアノを叩いていた.ウルフのバンドに出入りしていた間,へべれけになってウルフにお目玉を食らう,なんてこともあったらしいが,バンドのメンバーにいつもきちんとした身なりをさせるウルフの姿勢を尊敬しているようだ.もちろん80歳を超えた今も現役で,今年も新しくCDが出たそうだ.CD時代になってから録音が増えた人で,CDも比較的良いのだが,年齢と共にピアノの腕も声も衰えるのは否定できない.

さて,このレコードはグレイがシカゴから故郷のルイジアナへ戻って録音したもので,レーベルBlues Unlimitedは有名プロデューサーのジェイ・ミラーのものだった.ということで両面とも昔FlyrightレーベルがやっていたThe Legendary Jay Miller Sessionsの大シリーズでLPリイシューされていて,You're My Midnight Dreamの方はGonna Head For Home (Flyright LP517,シリーズ第2集),I'm A Lucky Lucky Manの方はBaton Rouge Blues (Flyright LP607,シリーズ第42集)に入っている.

そのFlyright盤の解説に,「これが1970年の録音とは信じ難い」と書かれているが,本当にその通りで,まるで1950年代の録音のようだ.You're My Midnight Dreamは重々しいスロー・ブルースで素晴らしい出来だ.とりわけヴォーカルの味わいは抜群で,これにねちっこく絡むレイジー・レスターのハーモニカも好演だ.曲の方はジミー・ロジャーズがBlues All Day Longというタイトルで録音した曲.

I'm A Lucky Lucky Man
の方は軽快な曲でこちらも良い出来で,聞いていてうきうきする.この曲をグレイはその後何度か録音して得意にしている.録音はジョニー・ロジャーズという人が1959年にAtomic Hに録音したものが最初だろう.

1970年3月,ルイジアナ集クロウリーで録音されたもので,伴奏はレイジー・レスターの他,ウィルフォード・ムーア(ギター)とウィルバート・ムーア(ベース),ハーバート・ムーア(ドラム)の兄弟,となっている.2曲ともその翌月に再録音して,それはArhoolieから出ている.

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2009年7月12日 (日)

狼とその音楽(続き)

LPとかCDで聞けるからいいや,ということでハウリン・ウルフのシングル盤はほとんど持っていない.これは,昔,LPで持っていないな,ということで買ったレコード.

Howlin' Wolf, Pop It To Me b/w I Had A Dream, Chess 2009.

Chess2009 このレコード,入手して,しばらくしてLPで両面ともリイシューされ(Killing Floor, P-Vine/Chess PLP-6079),ずっと後になってCDでも両面とも出ている(Ain't Gonna Be Your Dog, MCA CHD2-9349).両面とも1967年6月の録音でエディー・ショウのサックス,ヒューバート・サムリンのギター,ボブ・アンダーソンのベース,カッセル・バーロウのドラムなどが伴奏を勤めているとされている.

このレコードの録音された1967年にはシル・ジョンソンのCome On Sock It To Meがヒットしていて,Pop It To Meは題名のIt To Meの部分がかぶる.それで,曲の作者は,CDの方ではシル・ジョンソンとジェシー・アンダーソン,盤の方はジョンソン,(ジョー?)アームステッド,アンダーソンと記されている.それにイントロを始め聞いた感じからしても,Pop It To MeCome On Sock It To Meのヒットによって作られたアンサー・ソングだろう.1960年代後半のブルースのシングル盤なら,片面がこの手のファンキー・ソウルなのはフツーだし,ウルフにもうちょっと広いマーケットを,とチェスが考えて録音させたのかもしれない.出来は,ちょっと無理な曲というか,歌いにくそうに聞こえる.

一転してI Had A Dreamはごくオーソドックスなシャッフルのシカゴ・ブルースで,さすがにこういうのになると素晴らしい.ウルフの声はフィーリングを力ずくで耳の穴にねじこんで来るようだが,これでもウルフの全作品のなかでは中くらいかなあ.ハーモニカ・ソロも聞けるほか,ヒューバート・サムリンがいつものように弾けるようなギターを聞かせる.

なお,ウチの盤は両面ともステレオ録音だが,MCAのCDではモノラル録音になっている.なんでだろ.

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2009年7月 4日 (土)

買わなかったLP盤のこと・その4

昔,輸入レコード屋にウェスト・ヴァージニア・スリムという人のLPが置いてあったのを覚えている.レーベルはKent(Kent LP543)だったかもしれないけれど,Unitedの再発盤だったかもしれない.何度かその盤は見たはずだが,ウェスト・ヴァージニア・スリムなんつっても,彼について評論家が何か書いてるのを見たことがなかったし,まるで感心を持てなかった.それで手に取ることもないまま,そのLPのことは忘れていたけれど,CDで再発とかあるのだろうかね.忘れても問題ないLPかもしれないが,今になって少しだけ気になっている.

Jimmy Slim and the Blues 5, Sweet Chicago b/w Hey, Y'All, Rika 109.

Rika109 このジミー・スリムというのがウェスト・ヴァージニア・スリムことルーシャス・ジョンソンなのだそうだ.ウェストコーストで1960年代に活動していたと思われる人で,歌うだけでなく,ハーモニカも吹くようだ.このシングル盤はKentのLPの前,1967年2月頃にロサンゼルスで録音されたものとされている.

それでジミー・スリムのウェスト・ヴァージニア・スリムだが,どんな人かと言えば,二流か二流半くらいのダウンホーム・ブルースマン.このRika盤を聞く限り,歌でも楽器演奏でも上手くはないけれど,雰囲気は悪くない.

容易に想像できる通り,Sweet ChicagoというのはSweet Home Chicagoだ.ただ,Sweet Home Chicagoとしては少し変わったつくりで,なんかジミー・リードっぽい.リードの曲だとI'm Going Upside Your Headとか,そんな感じ.歌い方もジミー・リードっぽくて,ジミー・スリムの「ジミー」はジミー・リードの「ジミー」のつもりかもしれない.そうでなければルーシャス・ジョンソンという名前のどこから「ジミー」が出てくるんだ,という話になりそうだ.途中ハーモニカ・ソロが入るけれど,ホルダー使用(?)のごく単純な演奏で,特に良いということはないが,ローダウンな感覚はある.

ジミー・スリムがいつでもジミー・リードそっくりなわけではなく,レイジーなスロー・ブルースHey, Y'Allではまた違ったスタイルになる.こっちはライトニン・スリムとかサイラス・ホーガン辺りに似ていないこともない.なお,この曲ではハーモニカは入らない.

ジミー・スリムという人,どう聞いても小物だが,特にHey, Y'Allの方は嫌いでないなあ.ウェスト・ヴァージニア・スリム名義のLPは古レコード屋に今でもあるかもしれない.安く売っていたら買ってみるか.

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2009年6月28日 (日)

買わなかったLP盤のこと・その3

前回はシルヴィア・エンブリーだったので,今回はその元旦那でギタリストのジョニー・エンブリー.シルヴィアは多分ベースを弾いているだろう.

Johnny "Guitar" Embry and his Blues Kings, Johnny's Bounce b/w I Love The Woman, Razor 5101.

Razor5101 1979年という表示のあるレコードで,レーベルのRazorはこの翌年にジョニー・エンブリーとクイーン・シルヴィア・エンブリーの連名のLPを出している.このシングル盤の2曲はLPに入っているのかと思ったら,そうではないようだ.

内容は,1980年前後の,ごく普通のシカゴ・スタイルのブルース.Johnny's Bounceは速めのテンポのインストゥルメンタル曲で,ジョニー・エンブリーのギターが終始ソロを弾く,というもの.とりあえず,シカゴ・ブルースだな,という感じ.悪くもないけど特にオリジナリティがあるわけではない.

I Love The WomanはB・B・キング式のスロー・ブルースで,こちらは歌が入る.一応ちゃんと歌うけれど,聞きたくなるような歌でもない.インストをA面にしているし,ジョニー・エンブリーって歌が好きじゃなさそうな感じもする.それではギターの方はどうかというと,これもさほど上手いとは思えない.自分でギター弾く人だと「自分の方が上手い」と言いそう.これでは良い所がないようだが,元気の良さは取り柄だ.間奏のギターソロで強引に盛り上げちゃうとこなんかが見せ場だろう.

このレコード,都内のレコ屋で1980年代に買ったと思うが,今でも割と安く買えると思う.買ってからあまり聞かなかったし,勧めるような作品でもないけれど,この時代のシカゴ・スタイルが好きで二流が好き,という人ならそれなりに面白いだろう.

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2009年6月20日 (土)

買わなかったLP盤のこと・その2

ヘイズ・ウェアのLPをレコ屋で見掛けたころ,ジョニー・エンブリーとクイーン・シルヴィア・エンブリーのLP,After Work, Razor R5102も売っていたと記憶している.

Queen Sylvia, I Know I Ain't Number One b/w To Bad Baby, Leric 42083.

Leric42083 ベーシスト兼歌手のクイーン・シルヴィア・エンブリーは1980年にRazorのLPを出して,同じ年に作られたAlligatorのLiving Chicago Bluesシリーズにも4曲入っていて,1983年にこのLeric盤を出している.その後ヨーロッパで人気が出たのか,ドイツのL+RでLPを作っていて,それはEvidenceでCD化されている.彼女の詳しいディスコグラフィーは,
http://www.wirz.de/music/embry.htm
にある.

彼女の録音のうち,Alligatorの4曲は聞いていたけれど,そのシリーズの中では,そうねえ,アーティストの番付を作ると中間辺りかなあ.嫌いな方でもないけど,特別に進んで聞きたいということもなかったので,RazorのLPを買うこともなかった.

さて,このLeric盤,レーベルはジミー・ドウキンズのレーベルで,プロデュースもジミー・ドウキンズ,当然両面とも彼が派手にギターを弾いている.

I Know I Ain't Number Oneはマイナー・キーのアップテンポのブルースで,凄いということはないけれど,格好よくできた良い作品ではないかと思う.一方,To Bad BabyはZ・Z・ヒルのDown Home Bluesとか,ああいうリズムの曲.こちらも悪くないが,ギターはもう少し落ち着き有るお人に弾いて頂きたいようでもある.両面とも,Alligatorの録音に比べるとシルヴィア・エンブリーはかなり抑え気味に歌っている.これを「弱い」という見方もあるだろうけど,むしろスムースな歌い方が自然に感じられ,彼女の歌の良い面が出ているように聞こえる.

シルヴィア・エンブリー,ビデオのBig City Blues (Rhapsody)にも登場している.1980年に撮影されたもので,クラブでの演奏風景では,元夫のジョニー・エンブリーを含むバンドが伴奏をしている.その中でジョニー・エンブリーが後ろでやや大きめ音量でギターを弾き始める場面があるのだが,その瞬間,シルヴィア・エンブリー,「きっ」とそちらの方を振り返って,ジョニー・エンブリーを睨み付ける(ように見える).その瞬間,たちまちギターの音量が小さくなってしまうのが可笑しくて印象に残っている.このLeric盤の録音でもギタリストを睨んだかもしれないが,ジミー・ドウキンズには通じなかったかもしれない.

ビデオBig City Bluesを見ると,本職は美容師さんだったと思われるシルヴィア・エンブリー,1992年に50歳で亡くなっている.

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2009年6月13日 (土)

買わなかったLP盤のこと・その1

ヘイズ・ウェア,ヘイズ・ウェア...いたよなあ,ヘイズ・ウェア.

Hayes Ware, I Want To Bump b/w You Got Me Mama, C.J. 669.

Cj669 ヘイズ・ウェアのLP,Ghetto Woman (Bash LP426),ディスク・ユニオンへ行くといつも売ってた.売れ残っていた,という感じもあった.だけど,なんか中途半端な購買意欲をそそられないジャケットで,結局買わなかった.雑誌にレヴューが出てたな,と思って古雑誌を引っ張り出すと,ザ・ブルース44号,1981年1・2月号に記事がある.そのレヴューでは絶賛されていて,なら買ってもよさそうだが,なにしろ貧乏だったからなあ.LPは厳選主義で買っていたから,ヘイズ・ウェアなんて,訳分からない名前を言われても,ちょっとねえ.

カール・ジョーンズのC.J.から出たこの45回転盤,1970年代半ばくらいの作ではないだろうか.多分,BashのLP以前の,自己名義の録音としては最初のものだと思う.それ以前の録音というと,Vanguardから出たChicago/The Blues/Today!のジョニー・シャインズのセッションでベーシストとして参加しているのに気が付いた.それ以外の録音はあるような気がしない.

音楽の内容には,ちょっと嬉しくなる.一流とは言えなくても,アーティストの個性が特別で,この代わりになる人はいないように聞こえる.特にYou Got Me Mamaというのが良い.ギター,ベース,ドラムというごくあっさりした編成のバンドが,非常にダウンホームかつ小気味良いリズムを弾き出す,割とテンポの速いブルースで,これは誰に似ているんだろう.ヘイズ・ウェアの声は重みのある渋いブルース声で,それも魅力的だ.何か南部の草深い土地のカントリー・ブルースでこんなのがありそうだと思うのだが,誰の何の曲,というのを思い付かない.

バンプという踊りが流行っている,というニュースを少年時代に聞いた覚えがあるが,それは1974年頃のことらしい.I Want To Bumpはバンプ・ブームに乗ろうとしたもののようだ.実はYou Got Me Mamaと大体同じ様な音楽だが,一応ギターのリフとか流行のダンス音楽を意識していて(?),その分つまらないと思う.

ヘイズ・ウェアのLP,今入手しようとしてもほぼ不可能だから,買っておけば,と後悔しないでもない.だけど,発売される音楽を何でも買って聞くわけにはいかないのだし,仕方ないことだろう.

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2009年6月 7日 (日)

少しずつ違う

シカゴにフレディ・ヤングというギタリストでシンガー,それで本業か副業か分からないがタクシー運転手もしていた人が居た.この人は1960年代終りに自分でレーベルを作ってレコードを出していた.ボー・ダッドことオスカー・コールマンと似たようなポジションの人だろう.出していたレコードには前回取り上げたJ・L・スミスなんかもあったが,自分のものが多かったようだ.

Freddy Young, Someday Baby b/w Monkey Business, Friendly Five 740.

Friendlyfive740 レーベル・スキャンがいやにカラフルだが,これは前の持ち主か誰かがサインペンで手書きしたアートだ.本当は真っ白いレーベルだと思う.

フレディ・ヤングのレーベルには,一部同名別レーベルなんてのもあってややこしいが,Friendly Five,F-M,Sould Soundなどがあった.The R&B IndiesはF-Mの社主をオスカー・コールマンとしているが,フレディ・ヤングが関係しているのは確かだと思う.ヤングのレーベルが出したもののレーベル名,番号,アーティスト名を書き出すとつぎのようになる.

Friendly Five  740  Freddy Young
Friendly Five  741  J.L. Smith
Friendly Five  742  J.L. Smith
Friendly Five  743  Little Mary And Morris Pejoe's Band
F-M            744  J.L. Smith
F-M            745  Bo Dudley
Kaytown        746  Morris Pejoe
K-Town         747  Freddy Young
F-M            748  J.L. Smith
Sould Sound    749  Freddy Youngblood
Soul Sound     751  Freddy Youngblood
Sould Sound    752  Freddie Young Blood

このシリーズを何枚か入手できたのだけど,ううむ,ぐだぐだ感が漂うぞ.746でKaytownというレーベル名だったのに,747ではK-Townに変わっちゃったり,Sould SoundとかSoul Soundとか少しずつ違うレーベル名になってしまったり,という辺りに意図があるというより名前をちゃんと覚られないんじゃないの,と思わせるテキトー感が漂う.アーティスト名でもFreddy YoungbloodだのFreddie Young Bloodだのちょっとずつ違う名前が記されているけれど,これは両方ともフレディ・ヤングだ.上のリストだと750はどうした,ということになるが,なにか出ているかもしれないが,単純に750を忘れたのじゃないかという気もする.内容もねえ,K-Town 747は,例の400円均一にあったので買ってみたら,Friendly Five  740の再発,のようでそうでない.A面は微妙に違う別テイク,B面は740のインストに誰だか分からないヴォーカルをオーバーダブしたもの.同じレコードではない,と言いたいのだろうか.F-M 748はFriendly Five  741のカラオケに別の歌詞で歌わせたもので,なんか別のレコードを買ったような気がしない.そうかと思うと752ではモーリス・ピジョーの曲をフレディ・ヤングブラッドの名前で出しちゃったりしている.

うさんくさい面のあるヤング氏のレーベルだが,Friendly Five 740は悪くないブルースのレコードだ.特に正統的なシカゴ・ブルースの作りのSomeday Babyが良い.フレデイ・ヤングはA・C・リードを頼りなくしたような歌い方で,どう聞いたって二線級だが,それなりの味があって二流の良さを楽しめる.バンドの方はまとまっている.Someday Babyはヤングの自作曲のようだ.このタイトルでWorried Life Bluesが歌われることがあるが,これはまったく別の曲だ.The Blues Discography 1943-1970は1964年の録音としていて,メンバーは次の通り.

Freddy Young, Voc, gtr;
Lafayette Leak, org;
Eddie Taylor, gtr;
Andrew McMahon, b;
Robert Write.

ヤングのレコードを聞いていて,ひょっとしてギターはエディー・テイラーとヒューバート・サムリンか,と思いかけたときがあったが,半分は当たったかな.ヤングのギターはサムリンっぽく聞こえるときがある.

Monkey Businessはシャフルのインストゥルメンタル曲で,ヤングのギターとラファイエット・リークのオルガンが交替でソロをとる.歌を後からダビングしてThat Ain't RightとしてK-Town 747で再発したのは前述の通りだけど,Soul Sound 751でもフレディー・ヤング・ブラッド名義で出ている.

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2009年5月30日 (土)

シカゴ・ブルースの日常

これもリトル・マック・シモンズ参加のレコード.

J.L. Smith, I Hate To See You Go b/w Do The Mosquito, Friendly Five 741.

Friendlyfive741 コメントで教えて頂いた400円均一セール,結局行ってきて,(本人比では)大人買いをしてしまった.電車賃考えれば,まあいつもの値段,かもしれないけど,「うわブルースのレコードがこんなにある!」という喜び料金も入れりゃ間違いなく得だった.これはそのときの収穫の一つ.

J・L・スミスという人は,1968年から1969年に掛けてシングル盤5枚,10曲を残した歌手で,その後どうなったのかは知らない.CDではStompin'のシリーズで1曲復刻されているようだ.

The Blues Discography 1943-1970によれば,このレコードは1968年シカゴ録音で,メンバーは次のとおり.

James L. Smith, Vo;
Mack Simmons, h;
James Scott, Jr. gtr;
Jerome Arnold?, b;
Huckleberry Hound or Earl Phillips, d.

素晴らしいと思うのはI Hate To See You Goで,引き締まったシカゴ・スタイルのブルースになっている.リリアン・オフィットのWill My Man Be Home Tonightに似たメロディーで,J・L・スミスは,特にオリジナリティがあるのではないが,しっかりとした声と歌い方で曲を進めていく.伴奏陣にも張りがあって,ジェイムズ・スコット・ジュニアという人の弾く硬質な音色のギターが快い.欲を言えば歌も演奏もほんの少し安全運転気味で,ずば抜けたものには欠ける.なお,この曲はリトル・ウォルターのI Hate To See You Goとは関係なく,出だしのところだけはローウェル・フルソンのReconsider Babyの歌詞を使っていて,タイトルはそこから来ている.

裏面のDo The Mosquitoはタイトルからして分かるとおりダンス曲.ワン・コードで押すバンドをバックにスミスが煽る,というものだが,音の響きにはシカゴのブルース・バンドらしさがある.

一流ミュージシャンのレコードではないとしても,1960年代のシカゴのクラブで日常的に聞かれていたであろう音楽の記録として聞く価値はあるだろう.

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2009年5月23日 (土)

奇妙なB面

リトル・マック・シモンズは,自己名義の録音も多いけれど,伴奏者として誰かのバックでハーモニカを吹くことも多かったし,SimmonsとかPMとか自身のレーベルで何人かのアーティストのレコードを出してもいた.これは,シモンズのレーベルで,シモンズがハーモニカを吹いているもの.

Fenton Robinson, Find A-Way b/w Cryin The Blues (Find A-Way, alt. take), PM 106.

Pm106 このレコードに関して,フェントン・ロビンソンがシカゴの小レーベルに録音したものの中では出来が落ちる,というような評価があったと記憶している.確かに彼のUSA,Giant,Palosの録音と並べると見劣るかもしれないけれど,別に悪いレコードということはない.

Find A-Wayはゆったりとしたウォーキング・ベースにのって歌われるスロー・ブルースで,フツーに良い曲だと思う.歌のメロディなんかは独特のもので,余人をもって代え難い個性が十分発揮されている.彼にしてはダウンホームな曲調にしたことで,リトル・マック・シモンズの生ハーモニカにもさほど違和感はない.

さて,裏返してCryin The Bluesを掛けると,あれれ,同じ曲が出てきちゃった.裏返すのを忘れる訳はないんだが,と思ってレーベルを見てもやっぱりCryin The Bluesとなっている.それで,聞いてみると,これが実はFind A-Wayの別テイクになっている.本物のCryin The Bluesは,リトル・マック・シモンズのCD,The PM/Simmons Collection (Electro-Fi 3360)に入っている.もちろん,それはFind A-Wayの別テイクなどではなく,全然別の曲だ.これ,プレス違いで本当のCryin The Bluesが入っているPM 106の盤もあるのかどうか,あるような気がするけれど,分からない.Cryin The BluesはCDで聞けばよいのだから,このシングル盤で別テイクを聞けるのは得をした,と思うことにしている.

その,Cryin The Bluesと記されたFind A-Way(こっちはB面)だけれども,どうも完成途上テイクのようで,Find A-Wayと記されたFind A-Way(A面.ややこしいな)より落ちる.だけど,まあそんなもんでしょ.

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2009年5月17日 (日)

プロバビリティの理論

1960年代頃に録音されたシカゴ・ブルースで,ディスコグラフィ上でギタリストが不明,とされているもので,実はフレディ・ロビンソンが弾いているものが少しはあるだろう.次のレコードでギターを弾いているのは「probably」フレディー・ロビンソンとのこと.

Little Mack, I'm Happy Now b/w Don't Leave Me Now, Checker 991.

Checker991 プロバブリーっていうのは,資料とかの記録はないけど,聞いた感じはそのように思える,くらいの意味だろうか?それとも誰かが「フレディ・ロビンソンが居ました」と証言しているんだろうか?そのプロバビリティ(確率)はどんなもんだろう.

亡くなるまでに多くのレコーディングを残したリトル・マック・シモンズだけれど,I'm Happy Nowはそれらの中でも最上位の作品と思われる.以前,Real Chicago Blues Today - 60' Style (P-Vine/Chess PLP-6083)で復刻されていて,そのLPで初めて聞いた曲だったが,リトル・マックでこんなに良いのがあるかと驚いた.非常にソリッドな,勢いのあるシカゴ・ブルースで,シモンズは元気良く歌っている.これに畳み掛ける分厚いホーン,ギター,リズム隊も良い.リトル・マック・シモンズというと生ハープも売り物だが,このレコードではハープを吹かずに歌に専念している.

さて,ギタリストだが,I'm Happy Nowで聞けるギターは,リー・“ショット”・ウィリアムズのFoxy盤,特にHello Babyのギターと似ているように聞こえる.Hello Babyのギターはフレディー・ロビンソンだから,I'm Happy Nowのギターも彼,というプロバビリティは高いだろう.

そのI'm Happy Nowの作者はE. Williamsと記されていて,これは当然エメリー・ウィリアムズ・ジュニアことデトロイト・ジュニアだ.デトロイト・ジュニアの曲で,このChecker作品の少し前に録音されたSo Unhappyというのがあった.So Unhappyは時おりカバーされる曲だが,デトロイト・ジュニアはI'm Happy Nowをその続編というか後日譚みたいな内容の歌として作ったと思う.そう言えば,I'm Happy Nowで聞けるリトル・マックの歌い方はデトロイト・ジュニアに似ているような気もするが,まさかデトロイト・ジュニアが替え玉で歌っている,なんてプロバビリティは0だろうな.声はシモンズの声のようだし.

Don't Leave Me NowI'll Take Care Of Youみたいなタイプのブルージー・バラッド.なかなか熱く盛り上げている.しかし,ちょっとリトル・マックの柄と楽曲が合っていないかも.

The Blues Discography 1943-1970にしたがって,データを一応書いておく.1960年の録音で,メンバーは次のとおり.

Malcolm Simmons, Vocal;
Detroit Jr., p;
Eddie King Milton, prob. Freddy Robinson, gtrs;
Bob Anderson, b;
Billy Davenport, d;
Lafayette Leake, org.

I'm Happy Nowのリード・ギターが実はエディ・キング,というプロバビリティだって0ではないと思っている.

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2009年5月10日 (日)

歌手もやります

1960年代のChess Records社から出たレコードで,ファンキーな面のあるシカゴ・ブルース,ということでこんなのも.

Freddy Robinson, The Creeper b/w Go-Go Girl, Checker 1143.

Checker1143 最近紹介したレコードではリー・“ショット”・ウィリアムズのFoxy盤,リトル・オスカーのToddlin' Town盤,とフレディ・ロビンソンは伴奏ギタリストとして堅実なバッキングをしていた.リトル・ウォルターのConfessin' The Blues他でも伴奏していたが,自己名義の録音も1958年から色々なレーベルに行っている.アルバムの方もWorld Paciffic JazzでLP1枚,LibertyでもLP1枚,EnterpriseでLP2枚,アブ・タリブと名前を変えてSon PatというレーベルでCD1枚,とそこそこ出ている.

インストゥルメンタル曲の録音が多いような気がする人だが,このChecker盤では両面とも歌っている.歌ってはいるけれど,これがどうもねえ.

The Creeperはファンキーなブルースで,女声コーラスでロビンソンの歌とコール・アンド・レスポンスの関係を作っている.とても傑作とは言えないけれど,ちょっと楽しい.ロビンソンの歌は吹けば飛ぶような頼りなさで,相当に下手な方だけど,変な味があるように思う.これに絡む女声コーラスは,色っぽいようでもあるけれど,脱力感満点なようにも聞こえて,こちらも変なムードだ.自分の耳はおかしくなっているかもしれないが,へなへなした歌,お色気脱力コーラス,ファンキーなアレンジが不思議と調和して,意外と聞きたくなってしまう.

The Blues Discography 1943-1970によれば1966年5月の録音で,メンバーは次のとおり.

Freddy Robinson, Vocal, gtr;
Eddie Bradley, tp;
Jimmy Newman, as;
Ralph Johnson, ts;
Monk Higgins, p;
Richard Lovelace, b;
Hassan Miah, d, tamb;
Barbara Acklin, Mamie Galore, Debbie Lenox, Vocal.

バーバラ・アクリンらの女声コーラスはGo-Go Girlの方には入らない.こちらは,忙しい感じのする,割とフツーのアップ・テンポのブルースになっている.フツーな分,The Creeperの変てこさに比べると魅力に乏しいと思う.

ロビンソンは歌はアレだけれど,両面ともギターは流石に上手いところを聞かせている.Chessのファイルにはこれ以外にも未発表に終った曲が何曲か記されているようだけど,この辺の鑑賞価値はどうだろう.

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2009年5月 3日 (日)

ジェシー・アンダーソン・その3

ジェシー・アンダーソンはCadetで前回のYou're Only A Womanの他もう1枚シングル盤を出している,となればそれが気になってしまう.両面ともブルースとは言い難いレコードだけれど,内容は良いから書いてもいいだろう.

Jesse Anderson, Swing Too High b/w Get Loose When You Get Loose, Cadet 5588.

Cadet5588 Swing Too Highはファンキーなシカゴ・ソウル曲.この手の音楽になると急に何も知らなくなってしまうのだが,これはかなり良いのではないか.何だかやたらに格好良い.アンダーソンの歌に加えてホーン・アレンジが特に素晴らしいと思う.

その裏側のGet Loose When You Get Looseというのもファンキーなソウル曲.ブルース出身者らしさはこっちのがあるかもしれない.こちらも格好良いのだけれど,どうも楽曲の魅力はSwing Too Highよりは一枚落ちるように思う.

ディスコグラフィを見てもあまりデータは分からないけれど,1967年頃の録音ではないか.アレンジャーはジーン・バージ,プロデュースはミルトン・ブランドことモンク・ヒギンスとジーン・バージだから,バージはサックスで参加しているのだろう.Swing Too Highの作者はアンダーソンとレイナード・マイナーの連名になっている.レイナード・マイナーはリトル・ミルトンのWe're Gonna Make It,フォンテラ・バスのRescue Meなどの作があってChessでは重要なソングライターだったようだ.

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2009年4月26日 (日)

ジェシー・アンダーソン・その2

ジェシー・アンダーソンの録音したブルースと言えばこれだろう.

Jessie Anderson, You're Only A Woman b/w True Love Express, Cadet 5554.

Cadet5554 このレコードではジェシーのスペルがJessieとなっているが,Jesseが正しいようだ.レーベルのCadetはもちろんChess Records社のレーベルで,両面ともReal Chicago Blues Today - 60's Style (P-Vine/Chess PLP-6083)で復刻されていたけれど,それも結構昔の話になってしまった.

You're Only A Womanは文句の無い,優れた1960年代のブルース.良くコントロールされたアンダーソンの歌唱も素晴らしいが,イントロから最後まで周到にアレンジされた伴奏がまた良い.アレンジはチャールズ・ステップニー,サニー・トンプソン,ジーン・バージの連名となっている.Michel RuppliのディスコグラフィーThe CHess Labels, (Greenwood Press)によると1966年9月16日の録音で,メンバーは分からない.しかし,アレンジャーの顔ぶれからして,トンプソンがオルガン,バージがサックスというのはあるだろう.ギターも好演.

True Love Expressは非常にファンキーなブルースでこれも良い出来だ.やはりアレンジが格好よい.

ジェシー・アンダーソンはChessで3度のセッションを持っていて,1963年11月に4曲(マトリクス番号12799-12798),1966年9月に5曲(マトリクス番号15195-15199),1967年頃に2曲(マトリクス番号は16343,16344),の計11曲を録音している.レコードになったのはArgoで1枚,Cadetで2枚(もう1枚は次回にでも)の計3枚,6曲だった.このCadet盤の良さからすれば未発表曲などもいつかは聞いてみたい.だけどまあ,リイシューしても商売になりそうもないし,期待薄か.Chessには,資料上ではジェシー・アンダーソンだけでなく,ジョニー・トンプソンとかリトル・ジョー・ブルーとかにも未発表録音があるのだけれど,これらはどんな音楽なのか謎のまま終るのかな.仕方ないと言えば仕方ないが,それで良いのか,という気もする.

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2009年4月19日 (日)

“ショット”とのつながり

シカゴをベースとして,1960年頃にデビューして,どちらかといえばソウル・シンガー,ということで,ジェシー・アンダーソンという人はリー・“ショット”・ウィリアムズと同じような位置づけかと思う.その,アンダーソンの代表作.

Jesse Anderson, I Got A Problem b/w Mighty Mighty, Thomas 805.

Thomas805 ジェシー・アンダーソンはいくつかのレーベルでシングル盤を出しているが,多分アルバムというのは無いだろう.CDでは,Jewelから出た2曲がLoose The Funk! Boodie (P-Vine PCD-23831)に入っており,またFederalレーベル録音の数曲がリー・“ショット”のFederal録音と共にWelcome To The Club (Ace CDCHD 1009)に収録されている.UK AceのCDの解説書にはアンダーソンに関する相当に詳しい情報がある.それによると彼は1940年アーカンソー生まれで,オクラホマで腕を上げ,ウィリー・ライトのバンドにサックス奏者件歌手として加わって,1960年にライトのバンドの一員としてFederalに初録音,サニー・トンプソンやジーン・バージと知り合ってさらにキャリアを積んだ,という人だそうだ.その解説書にはギターを持ったジェシー・アンダーソンの写真もある.

I Got A Problemはファンク・ブルースの傑作.1970年4月にビルボードのR&Bチャートで35位に達するヒットになっている.ジェシー・アンダーソンは伸びやかな美声を生かして力強く熱唱しており,曲を盛り上げている.曲の作者はジーン・バージとアンダーソンの連名となっている.

Mighty Mightyはファンキーなインストゥルメンタル.これ,ジェシー・アンダーソンと何か関係あるとは思えない.アンダーソンが何か楽器でも(まさかフルート?)演奏しているのだろうかね.一応,こちらはカーティス・メイフィールドのプロデュースということになっている.

アンダーソンの曲で唯一R&Bチャート入りしたI Got A Problemだが,1980年代になってからリー・“ショット”・ウィリアムズがカバーしたりしている.ファンク・ソウル風のレパートリーが多そうなアンダーソンだが,ブルース歌手としても優秀だったので,もう少しブルース曲も聞きたいところ.

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2009年4月12日 (日)

イリノイ州パロス・パーク

前回コメント頂いた通り,リー・“ショット”・ウィリアムズのシングル盤作品は海賊盤CDでかなり復刻されている.その海賊盤には,「もうちょっとコンディションの良い原盤を奮発してくれ」と言いたい気分ではある.次の1枚も両面ともそのCDに入っていた.

Lee "Shot" Williams, The Millionaire b/w I'm In Love, Palos 1204.

Palos1204 The Millionaireは速めのテンポのブルース.Hello Babyと近い作りで,なかなか熱い.これもリー・“ショット”がブルース歌手として実力あることを示す曲だろう.1966年にシカゴで録音されたもので,ギター,ピアノ,サックス,ベース,ドラムスの伴奏が付くが,メンバーは分からないようだ.

I'm In Loveは元気の良いジャンプR&B.女声コーラスとのコール・アンド・レスポンスを使っている辺り,ありがちな曲調だとも思うが,悪くない.こちらはエレクトリック・ピアノが大きくフィーチャーされている.

このレコードのレーベルにはイリノイ州パロス・パーク,という会社の所在地が記載されていて,それでPalosというレーベルが地名に由来していることが分かる.イリノイ州パロス・パークを地図で見ると,シカゴの南西方向,直線距離でシカゴから30km位はありそうだ.それでも鉄道なんかもあるようだし,シカゴは通勤圏内か.

パロス・パークの町にあったPalosだが,ごく零細なレーベルだったと思われる.リリースされたシングル盤の数は20枚くらいはあって,ブルースもちらほらある.これらを,シングル盤で買おうにもレア盤が多そうだから,お金があっても(無いけど)容易でない.正規の契約の下で,マスターを使った良い音質で誰かがディジタル・リイシューしてくれれば大変よろしいのだが,それはどうも望み薄なようだ.このレーベルの音楽の権利を持っている人がマスターがきちんと保管しているという気がしない.Palosから出たフェントン・ロビンソンの曲の権利をGiantが持っていたり,サイ・ペリーの曲がStartownから出たり,リトル・オスカーの曲がシル・ジョンソン経由で出たり,という状況からしてPalosという会社は曲の権利を片っ端から売り払ったのじゃないか,と思う.正規のリイシューが困難となると海賊リイシューにでも期待するしかないが,良い原盤,良い装置を使って,ノイズ取りも程好くちゃんとやって復刻して欲しいなあ.

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2009年4月 6日 (月)

思わぬ接点

ルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンの初録音,マジック・スリムの初録音,と続けてきたけれど,シカゴ・ブルースの初録音ものをもう一つ.

Lee (Shot) Williams, I'm Trying b/w Hello Baby, Foxy 005.

Foxy005 リー・“ショット”・ウィリアムズがこのデビュー盤を出してから40年以上も経つが,最近もEckoレーベルからCDを何枚も出していて,そのキャリアも随分長くなった.1938年生まれというから,もう70歳になるけれど,Ecko盤を聞く限り,今でもそれほど衰えはないようだ.しかし,Eckoは伴奏がおもちゃっぽいのが難点だよなあ.

さて,1962年のリー・“ショット”・ウィリアムズ初録音だけど,両面とも優れたシカゴ・ブルースだ.I'm Tryingの方は深遠なスロー・ブルース.リー・“ショット”の声は少しだけ若過ぎるかとも思うが,それでも十分に上手い歌を聞かせる.フレディー・ロビンソンのギターが鋭い音色で曲を引き締めている.

Hello Babyの方はミディアム~アップ・テンポのブルースで,こちらも熱気があって,引き込まれる.聞いているとマジック・サムがアン・アーバーのライヴでやっていたI've Got Papers On You, Babyを思い起こす,っていうか,ひょっとして,同じ曲じゃないか,という気がした.そこでマジック・サムのライヴ盤の歌詞カードを引っ張りだし,それを見ながら,このリー・“ショット”のHello Babyを聞いてみたら,やはり同じ曲だと分かった.マジック・サムのI've Got Papers On You, Babyはリー・“ショット”・ウィリアムズのHello Babyをかなりオリジナルに忠実に演奏したものだったのだ.リー・“ショット”はマジック・サムとも面識があったようだし,このFoxy盤を出した後,アール・フッカーのバンドに加わってHello Babyをよく歌っていたそうだ(Danchin, Earl Hooker - Blues Master)から,マジック・サムがこの新人歌手の曲を聞き覚えていたとしても不思議ではない.それでも意外な接点という感じはする.なお,B・B・キングのI've Got Papers On You, Babyはマジック・サムのものとは違う曲だ.

The Blues Discography 1943-1970によるとメンバーは次の通り.

Lee "Shot" Williams, Vo;
Mack Simmons, h;
Monk Higgins, John Jackson ts;
Detroit Jr. p;
Freddy Robinson, gtr;
Phil Upchurch, b;
Billy Davenport, d.

リー・“ショット”・ウィリアムズはFoxy盤の数年後のI Hurt Myself (Shama)みたいなソウル曲の大傑作もあって,レパートリーを平均すればブルース歌手というよりディープ・ソウル歌手の方だろう.The !!!! Beatの映像でもあまりブルースっぽくはないようだった.それでも,こんな風に意外とシカゴ・ブルースの人という面も持っている人でもある.

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2009年3月29日 (日)

マジックの始まり

前回のルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンはマジック・サムと接触があった人だが,マジック・サムと活動していた経歴を持つ一人にマジック・スリムがいる.マジック・スリムは大量の録音を行っているが,その最初期のレコード.

Magic Slim, Love My Baby b/w Scuffling, Ja-Wes 0105.

Jawes0105 1966年の録音ということで,マジック・スリムは29歳になっている.印象としては,若いな,というところ.The Blues Discography 1943-1970に出ているメンバーは次の通り.

Morris Holt (Magic Slim), gtr;
unknown, Vo;
Paul Brown, ts;
Robert Perkins, b;
Willie Jones or Skin Man Whitehead, d.

へえ,ヴォーカルはマジック・スリムじゃないのか,これ.楽器担当は4人だから少人数の編成だけど,まあ,スカスカ感は否めない.

Love Me Babyは,なかなか重々しいスロー・ブルース.問題は,誰だか分からないが,マジック・スリムではない人のヴォーカルだ.ごく抑えたささやくような調子の歌い方だが,それが弱々しいように聞こえてしまう.そうなると聞き物はマジック・スリムのギター,となるが,頑張っているけれども,特別に凄い才能を感じるということもない.ただ,1960年代の,小レーベルのシカゴ・ブルースならではの,どろっとした雰囲気は十分にある.なお,この曲は昔買ったRed Lightnin'のLP,When Girls Do Itに入っていて,個人的には懐かしい.

Scufflingというのは,何やらラテンぽいリズムでがちゃがちゃと始まって,これに語りが加わって,というダンス・ナンバー.

マジック・スリム,このJa-Wes盤からは,メジャーなブルースマンになるような気配はあまり感じられない.しかし,その後,1975年頃にMean Mistreaterレーベルで出したレコード(自分が聞いたのはRoosterのEPリイシューだったけれど)になると,聞き違えるような,ずっとエネルギーある演奏をしていて,ほぼ独自のスタイルを確立している.大器晩成の人だったようだ.

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2009年3月22日 (日)

目指せ,マディじじい

何の本で知ったのか忘れてしまったが,すんごい昔のこと,歌舞伎の愛好家の中に「団菊じじい」という人種がいて嫌がられたのだそうだ.この人達は,「自分が見た(明治時代の)九代目団十郎,五代目菊五郎に比べれば今どきの役者はなっとらん」みたいなことばかり言っていたらしい.この言葉を知って思いついたのは,自分は来日したマディ・ウォーターズを見ているので,「マディじじい」になるといいんじゃないか,というアイディアだ.年寄りになったら若いブルース・ファンを相手に「ワシは生きているマディ・ウォーターズやジョン・リー・フッカーを見たんじゃ!見てない奴らはガタガタ言うな!」つって威張って嫌われるの.老後の楽しみ方としてはいいんでないの.この素敵な計画にも欠点があって,それは,相手をしてくれる若いブルース・ファンが周りにいないとダメということで,そうなるとせっかくマディを見たのに自慢できないことになる.

という訳で,1980年のマディ・ウォーターズ来日と関係があるアーティストのレコードを.

L. Johnson Jr., I Been Down So Long b/w You Gotta Have Soul, Big Beat 133-1376.

Bigbeat1376 L・ジョンソンJr.の「L」はルーサーのLだ.ルーサー・ジョンソンというシンガー・ギタリストが3人いることは知られているだろう.1人目は1960年代のマディ・ウォーターズ・バンドにいたルーサー・ジョージア・ボーイ(またはスネーク・ボーイ)・ジョンソン,2人目は1970年代にマディ・ウォーターズ・バンドに加わったルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソン,3人目はIchibanでアルバムを出していたルーサー・ハウスロッカー・ジョンソンだが,この3人の区別がつかなくなっても深刻な問題はないんじゃないか.だってねえ,どのルーサー・ジョンソンが誰なのか分からなくても,生活上それほど困ることはなさそうだもの.などと言ったらそれぞれの熱烈ファンに怒られるか.

さて,このシングル盤はルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンの初録音とされているもの.I Been Down So Longはマジック・サムのOut Of Bad Luckだ.ルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンはマジック・サムのバンドにしばらく在籍したということなので,その時期にマジック・サムのスタイルとレパートリーを身に着けたものだろう.その後もマジック・サム風の曲を録音したりしている.出来の方は,当然かもしれないが,マジック・サムのオリジナル版ほどには感動しない.初録音で未熟だから,ということもあるが,どうにも小物,小粒で深いものに欠けると思う.ただ,誠実に歌っていて,元気の良さは感じられる.

You Gotta Have Soulは上手く出来ていれば格好よいシカゴ・ソウルになっていたところだが,上手く出来なかった,という感じ.

The Blues Discograpy 1943-1970は録音年を1968?としている.メンバーは結構有名人が入っていて,次の通り.

Luther Jonson, Vo., gtr;
Johnny "Big Moose" Walker, p;
Jimmy Dawkins, gtr;
Willie Kent, b;
Robert Plunkett, d.

ルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンの歌とギターを初めて聞いたのは,マディ・ウォーターズの来日公演のときだった.バンドのギタリストとしてジョンソンも日本へやって来たのだった.その時点で,輸入レコード店で普通に買える彼のレコードは全然無かったと思う.調べたら来日以前の1976年,ヨーロッパでLPを作っていたようだが,それをレコ屋で見た記憶がない.そんな訳で,今では多過ぎるくらいCDのある人だが,当時はソロ・アーティストとは思えない,ほぼ無名の人だった.現在の彼はおっさん,または年齢から言えばお爺さんというところだが,最初からおっさんだった訳ではなく,マディ・ウォーターズ・バンドの中で彼は随分若く見えた.1939年生まれなので,40歳を過ぎていたことになるのだが,マディ(当時65歳)やパイントップ・パーキンズ(当時67歳)に囲まれれば断然若く見えた.ジョンソンはマディが登場する前,ウォームアップ役として,何の曲だったか,ごくありきたりのスタンダード曲を1曲歌い,ギターを弾いてみせた.その歌とギターは,マディらよりはずっと若い世代のもので,それがなかなか良くて,「期待の若手」みたいな印象を持ったものだ.もっとも,マディが登場した後は,リード・ギターはマディ自身か,そうでなければボブ・マーゴリンが弾いたので,ジョンソンは居るのか居ないのか分からなくなってしまったのだが.それから何年かして,RoosterでアルバムDoin' The Sugar Tooを出した後は,ほぼ期待通りの活躍ぶりだったと思う.

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2009年3月15日 (日)

Changeを歌う

今度の米国大統領の選挙中のキーワードは「チェンジ」で,ちょっとした流行語になって良く聞かされる言葉だった.そう言えば,昔買ったシカゴ・ブルースのレコードで,チェンジ,チェンジと繰り返し歌っているのがあった,と思い出した.

Little Oscar, Gotta Make A Change b/w Two Foot Drag, Toddlin' Town 109.

Toddlintown109 リトル・オスカーは,シカゴのソウル・ブルース歌手で,Palosに録音したSuicide Bluesは特に傑作として有名だ.これは,前に書いたとおりシル・ジョンソンがカバーしている.他にSupreme Bluesレーベルからもブルースの曲を出している.また,シル・ジョンソンのShamaレーベルからはLittle O,Blue Chicagoというレーベルからは本名のOscar Stricklinという名前でレコードが出ている.某サイトで試聴したところLoving Man (Blue Chicago 01)はまあまあのファンク・ブルースのようだ.他に何かあるだろうか?レコードは少ない方ではないかと思う.

さて,「チェンジ」がキーワードのGotta Make A Changeだが,別に社会のチェンジを期待するとか,社会にチェンジを求めるとか,そーゆー歌では全然ない.女房が子供を連れて出ていってしまったのは自分が悪いから,自分がチェンジしよう,という歌.「気が狂いそうで自殺しそう」というSuicide Bluesと言い,なんか自分を責める人なんだろうか?

Suicide Bluesほど張りつめた空気はないけれど,Gotta Make A Changeにはそれなりの聞きごたえがある.タイプとしてはジョニー・テイラーのブルースが割と近い方かなあ.やや高めの美声で,じっくり歌われるスロー・ソウル・ブルースだ.

Two Foot Dragは,少しブルージーなファンキー・ソウル曲で,聞けないことはないけれど,特に凄いということもないと思う.

The Blues Discography 1943-1970は1969年シカゴで録音されたものとしている.歌を好サポートするギターはフレディ・ロビンソンが弾いているそうだが,オルガン,ベース,ドラムの奏者は分からないようだ.また,Two Foot Dragではホーンが入るが,これも奏者は分からない.曲の作者にはリトル・オスカー自身にスコット・ブラザーズのウォルター・スコットやハワード・スコットなどの名前も見えるので,彼らが伴奏に付き合っていても不思議でないが,どうだろう.

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2009年3月 8日 (日)

大声の持ち主のこと

前回は1960年代のシカゴ・ブルースのレコードだったが,その頃のシカゴ・ブルースで,リイシューされないか,リイシューされてもあまり流通しない海賊盤CDどまりで,忘れ去られそうなものはいくらかあるのじゃないか.

Andre Odum, Turn On Your Love Light b/w Fattening Frogs For Snakes, Nation 13.

レーベのアーティスト名を書いてある通り読むとアンドレ・オーダムと読みそうだが,もちろんこれはアンドルー・"B・B"・オーダム,つまり"ビッグ・ヴォイス"・オーダムのことだ.

Nation13 アンドルー・オーダムの歌は,随分昔のことだけれど,ジミー・ドウキンズのLP,All For Businessで初めて聞いたと思う.このLPの何曲かで,なかなか骨太な歌を聞かせていた.ずっと後になって,アール・フッカーが伴奏に入ったBlueswayのLPも聞いたが,やはり良かったと思う.ただ,オーダムは馬力があって悪くない歌手だけれど,歌い方はB・B・キングっぽくて独創性があるとは言えないし,大味と言うか変化に乏しい面もあるので,どうしても聞きたいという人でもない.オーダムはWASP,MCMなどでもLPを出したけれど,雑誌とかでそう誉められてはいなかったように思うし,この辺は聞いていない.なお,MCMのものはStoryvilleやFlying FishでCD化されたようだ.

さて,シカゴの小レーベルから出たこのレコードは,オーダムとしては多分最初のレコードになるもの.

Fattening Frogs For Snakesはサニー・ボーイ・ウィリアムソンNo.2に同名の曲があるけれど,まったく別の曲.ずっしりとした,緊迫感のある,聞きごたえのあるスロー・ブルースだ.1960年代のモダン・シカゴ・ブルースの良作の一つだと思う.

Turn On Your Love Lightはもちろんボビー・ブランドの有名曲.ジェイムズ・コットンとかもカバーしていた.このオーダムのバージョンは,大体原曲に忠実で,悪くないけれど,独自の解釈も欲しかった.

The Blues Discographyによると1967年の録音で,ホーン,ピアノ,ギター,ベース,ドラム,ボンゴを含むバンドのメンバーは分からないようだ.

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2009年3月 1日 (日)

名手の真価

ウェイン・ベネットはギターの名人だ.マイティ・サム・マクレインやボビー・ブランドの伴奏者として日本国にも来て,素晴らしい奏者であるところを見せていた.レコードの方では,大抵ボビー・ブランドとか,専ら誰かの伴奏者としての録音だから,少々地味な印象はある.

Wayne Bennett, Rocking (Funky Broadway) b/w Casanova (Your Playing Days Are Over), Giant 703.

Giant703 これは珍しくベネットの自己名義の録音だが,名手の真価を十分発揮しているかというと,どうもなあ.

Rockingは,題名から想像されるように調子の良いインストゥルメンタル曲で,ベネットのギターがクールに絡む,というもの.途中1コーラス弱くらい,割と格好よいソロが入るが,全体的には流し気味のように思う.

さて,このRockingに,フェントン・ロビンソンが歌をオーバーダビングしてLet Me Rock You To Sleepという曲にした,ということで知られている(?).Let Me Rock You To SleepはP-VineのLP/CD,The Mellow Blues Geniusに入っているので聞き比べてみると,伴奏は同じようだが,ギターは違う.Rockingの伴奏トラックだけをそのまま使い,ベネットのリード・ギターは使わず,フェントン・ロビンソン自身のギターに入れ換え,で,ロビンソンに歌わせてLet Me Rock You To Sleepが出来たもののようだ.

裏側のCasanovaもインストゥルメンタルだが,ポピュラー・ソングのような曲で,何だこりゃ,と思う.ギターは随分弾いているけれど.

というわけで,悪くもないけれど,名人の自己名義録音としては物足りなさを感じる,というところ.

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2009年2月22日 (日)

流用事件その3

リトル・ウィリー・ポラードという人に関しては,"67" Blues (ARC 7462)というレコードのことを前に書いたことがある.あれは良いレコードだったが,これは,ちょっと困ったもんだねえ.

Little Willie Pollard, Reap What You Sow b/w Blues On My Mind, W.B.P. 001.

Wbp001 Reap What You Sowというのに針を降ろすと,始まるイントロは"67" Bluesのそれとよく似ている.いつもこーゆースタイルなのね,この人は,などと思っているうちに,歌い出して,間奏があって,ん?これ,伴奏は"67" Bluesと同じじゃん.同じカラオケを同じ歌手が再利用したのかい.歌のメロディーを"67" Bluesとは微妙に変えているが,それが「これは前のレコードとは別の曲なんだからな」と無理矢理主張しているようにも思えて来る.

裏返して,Blues On My Mindというのを聞いてみると,イントロが始まって,あれ,裏返したよな,もしや間違えて同じ面を,と一瞬思うが,そうではないのは歌が始まると分かる.これも"67" Bluesの伴奏を使った別の曲なのだ.メロディーもReap What You Sow"67" Bluesとは微妙に変えている.それにしても,同じ伴奏で3曲目だよ.1人の歌手が同じカラオケで,3曲の違う曲を録音するなんてことがあるだろうか.しかも,律義に少しずつメロディーを変えて.伴奏トラックの流用に関しては横綱じゃないか,この人.

両面とも作曲者はWillie B. Pollardとなっていて,これがポラードのフルネームだろうから,レーベルのW.B.P.というのはポラードの頭文字をとった彼自身のレーベルだろうと思う.相当に無茶な音の録り方をしているとみえて,音質は極端に悪い.

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2009年2月14日 (土)

流用事件その2

他のレコードの伴奏トラックをそのまま使った,という訳ではないけれど.

Little Joe Blue, Everything Good To You (Ain't Always Good For You) - Part 1 b/w Everything Good To You - Part 2, Elco 4404.

Elco4404 リトル・ジョー・ブルーは,1980年前後くらいに小さいレーベルからいくつかシングル盤を出していて,これもその一つ.注文して,届いてみるとレーベルに表示されたプロデューサー/アレンジャーはマイルス・グレイソン.やれ嬉しや,と聞いてみると,やはり良い.いつもほど緻密ではないかもしれないけれど,引き締まったリズムや,ホーンのアレンジなどはいかにもグレイソンの音だ.リトル・ジョー・ブルーの歌は,前回のGive Me An Hour In Your Gardenの方が気合いが入っているかな.それでも,このEverything Good To Youでも十分に良い歌が聞ける.

さて,裏返して,Part 2を聞いていると,後半になって女声コーラスが入って,ジョー・ブルーの歌とコール・アンド・レスポンスの関係を作る.それが,♪They don't know, about my good thing,って歌うのだが,その文句とメロディーはブレンダ・ジョージのEverybody Don't Know About My Good Thingで使われるものと同じだ.あれ,グレイソンさん,またブレンダ・ジョージ用の伴奏を再利用したの.でも,Everybody Don't Know About My Good Thingってこんな感じだったかな,というのでレコードを引っ張りだし,聞き比べてみた.

違う.特にベースなんかまったく違う.それでも雰囲気は似ていて,女声コーラス以外でも,ワウワウを深くかけた,むずむずするようなギターを使っていることなどは共通している.多分,Everybody Don't Know About My Good Thingの伴奏トラックと同じときに録音したものだろう.

アレンジャーが凝った編曲をするとき,伴奏が一発で完成,というのも難しそうだ.マイルス・グレイソンが,レコードに使う最終的な伴奏トラックができるまで,少しずつアイディアを加えながら何度か試作品を作っていたとしても不思議ではない.Everything Good To Youの伴奏トラックは,ブレンダ・ジョージのEverybody Don't Know About My Good Thingの伴奏を作っているときに,完成途上のものとして録音したのだろう.アレンジの完成度はEverybody Don't Know About My Good Thingで使ったものが上だけど,この試作品も何かで使わないともったいない,という感じは確かにする.

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2009年2月 7日 (土)

流用事件その1

リトル・ジョー・ブルーのKrisレーベルのLPと,CollectablesレーベルのCDでリイシューされている曲で,こんなのもあった.

Little Joe Blue, Give Me An Hour In Your Garden (And I'll Show You How To Plant A Rose) Part 1 b/w Give Me An Hour In Your Garden Part 2, Bel-Ad 1009.

Belad1009 KrisのLPでもCollectablesのCDでも,コンディションのごく悪いシングル盤からのダビングなので,音質の点で聞く気がしないのは残念だ.音楽の出来は良いので惜しい.KrisのLPに収録されたのは,Krisのメル・アレクサンダーが権利を買ったから,だと思うのだが,もしかすると適当にシングル盤からダビングして勝手に入れちゃったのかもしれない.

このレコードはジム・ギャンブルのIt's Hard To Explainと同じ頃に(だから30年近く前),これもディスク・ユニオンで買った.内容がとても良いので当時は繰り返し聞いたものだった.プロデュースとアレンジはマイルス・グレイソン.さすがに彼らしく歌手に合わせて周到なアレンジを,と言いたいところだったが.

このレコードを入手して2,3年後のこと,ブレンダ・ジョージのI'm Not Trying To Make You Payを聞いてみて驚いた.伴奏がこのリトル・ジョー・ブルーのGive Me An Hour In Your Gardenと同じだったのだ.ブレンダ・ジョージのレコードは1971年頃,Z・Z・ヒルのDon't Make Me Pay For His Mistakesがヒットした直後の録音だろうが,リトル・ジョー・ブルーの方は1978年の表示がある.という訳で,マイルス・グレイソンはブレンダ・ジョージのために作った伴奏トラックをそのまま使ってリトル・ジョー・ブルーに歌わせ,お手軽にレコードを1枚作った,ということのようだ.そのことが分かったとき,手抜きと言えば手抜きだから,何だか少しがっかりしたものだ.もっとも,伴奏を複数のレコードで使いまわすのは珍しくないかもしれないし,Give Me An Hour In Your Gardenがリトル・ジョー・ブルーの曲でも上位の出来であることは変わりない.良くできたアレンジだし,歌も良いし,伴奏が使いまわしでも別にいいんじゃないの.

なお,同じレコードはMiles Ahead 1101という番号でも出ていて,そちらがオリジナルだと思う.歌の文句に関しては,Give me an hour in your garden, and I'll show you how to plant a roseというキー・フレーズなど,ジョー・ターナーのOne Hour In Your Garden (Kent)をヒントにしているようだ.

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2009年2月 1日 (日)

メル・アレクサンダーと歌手・その7

メル・アレクサンダーのSpaceとKrisで比較的多くの録音を残したのはリトル・ジョー・ブルーだった.

Little Joe Blue, We All Have The Blues Pt.1 b/w We All Have The Blues Pt.2, Kris 8111.

Kris8111 このレコード,リトル・ジョー・ブルーのSpace/Kris録音の中では,まずまず出来の良いほうだと思う.ちょっと伴奏が元気ありすぎて,うるさいような気がしないでもないし,反対にリトル・ジョー・ブルーのミキシング・レベルが低いようでもあって,100%満足ではないけれど,それでも力強いブルースだ.

歌っていることに耳を傾けると,♪スーパー行って,パンを買おうと思ったら,あんまり高いんで,代わりにメリケン粉買って我慢した(いや小麦製品はみな高いよ),って何だか所帯じみてはいるが,生活苦を歌った曲だ.暮らしがきびしいと思う人ならば誰にもブルースはある,という内容のよう.

このWe All Have The Bluesという曲,LPとCDでリイシューされてはいるが,このLPとCDというのが少々難ありで,あまり聞きたくない.LPはBest Of The Bluesという題名,Kris 8119という番号だが,このLP,多くの曲で回転数がおかしい.速度が速くなって,ジョー・ブルーの声が高くなってしまっている.これ,誰もおかしいと思わなかったのだろうか.CDではCollectablesで出ている(Collectables COL-5744)のだが,KrisのLPから音を取っているようで,やはり何曲かは変だ.幸いWe All Have The Bluesは正しい回転数のようだが,他の曲が変だと聞く気がしなくなってしまう.それに,LPとCDに入っているのはPart 1だけで,Part 2の方はシングル盤でしか聞くことができない.

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2009年1月24日 (土)

メル・アレクサンダーと歌手・その6

前回,前々回のジム・ギャンブルのレコードは二十ン年も前に買ったのだけれど,今度はつい最近買ったレコード.メル・アレクサンダーのレーベルのことを書きはじめたから,なるべく安くすぐ買えそうなのを追加しようと思ったのだけど,こりゃ駄盤だったな.

Chick Willis and the Kenyattas, Love Doctor b/w Stoop Down "76", Kris 8101.

Kris8101 チック・ウィリスはアルバムもシングル盤も色々あって,今は新大統領をネタにした曲Obamaを含むアルバム,The Don Of The Bluesが絶賛(?)発売中とか聞く.なんか,いつからドンに,とツッコミたくなるアルバム・タイトルなんだけど.

さて,メル・アレクサンダーのプロデュースによるLove Doctorという曲だけれど,ジャンルとしては,エロ・ファンク・ノベルティ.針を降ろすと一応ファンキーな音楽が始まるが,それに,女の喘ぎ声がかぶさってくる.いいのか,こんなのレコードにして.それを聞いていると,突然でかい声で「ぬっはっはっはっ」という卑猥笑いが入る.何だ,こりゃ.その後低い声でラヴ・ドクター先生の診察風景が,という構成.我慢して聞いているともう何回か「ぬっはっはっはっ」を聞ける.いや,聞けても,嬉しいことはないけれど.allmusicでチック・ウィリスのバイオを見ると,歌詞が猥褻でエアプレイできないStoop Down Babyのオリジナル盤をジュークボックス専用に大量に売った,とか書いてあるから,このレコードもその線を狙ったものだろう.政治家のことを歌うよりは人柄に合った作品のような気もするが,音楽性よりエロ面を狙い過ぎじゃないの.この作品が音楽としては役に立つとは思えないが,可笑しい人だね.

裏返して,Stoop Down "76"の方はプロデュースはチック・ウィリス自身になっている.これは,聞き比べてはいないが,ウィリス自身のレーベルStoop Downから出たものと同じかもしれない.こっちは音楽的にはかなり良い.La Valに録音したオリジナル盤よりも速くして,熱気のあるアップテンポのブルースとしている.ギターなんかは上手いと思わないけれど,そんなことより(聞き取りは間違っているかもしれないが),

Jack and Gill,
Went up on the hill
Gill comes down with $20 Bills
Stoop down, stoop down on the hill

などと小気味よく語呂合わせっぽい韻を踏む,話芸に近いものがこの人の良さなのだろう.

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2009年1月17日 (土)

メル・アレクサンダーと歌手・その5

ジム・ギャンブルがメル・アレクサンダーのKrisで出した3枚目のシングル盤はこれ.

Jim Gamble, It's Hard To Explain Part I b/w It's Hard To Explain Part II, Kris 8106.

Kris8106 It's Hard To Explainの作者はAgee-Harris-Alexanderとなっていて,レイ・エイジーが録音したものがオリジナルだろう.速めのテンポの,マイナー・キーのソウル・ブルース・バラッドになっている.控えめにストリングスも使っているのはB・B・キングのThe Thrill Is Gone以降の流行かも.少々甘口の曲だけれど,ギャンブルの力強い歌いっぷりのお蔭でびしっとした,聞きごたえのある曲になっている.

このレコードは,多分1980年前後にディスク・ユニオンで買ったと思う.買った当時は気に入って何度も繰り返し聞いたものだ.それから30年近く経ったが,よくこの道楽が続いたものだ(長いわりにコレクション少ないけどね).飽きもせず,と言いたいところだが,本当はいい加減飽きてきていて,これからは何を手に入れても,このレコードを買った頃のようにはわくわくすることはないだろうな.

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2009年1月10日 (土)

メル・アレクサンダーと歌手・その4

メル・アレクサンダーがプロデューサーとして制作したブルースの中で注目作は,シンガー/ドラマーのジム・ギャンブルが録音した数曲だろう.

Jim Gamble, Going Down The Road (Prt 1) b/w Going Down The Road (Prt 2), Kris 8091.

Kris8091 KrisでLPを1枚(Gamble & Friends, Kris 8108,持ってないけれど)とシングル盤3枚を残していて,これは1枚目のシングル盤.1970年代半ば位に出たものかと思う.レコードの両面,2パートに及ぶGoing Down The Roadだが,非常に良い出来で,この時代のウェスト・コースト・ブルースとしては最上位の作と言えそう.やや地味かもしれない(いや,でしゃばらない,という方がよい)が,極めてタイトなバンドの伴奏を得て,じっくりとスロー・ブルースを歌っている.ギャンブルは張りのある良い声をしていて,ブルース歌手として実力があるようだ.

ジム・ギャンブルはKris以外では,同じウェストコーストのレーベルHighlandでレコードを出している.そのHighland盤は(When You Move You Lose, Highland 1201)はまったくファンク,というレコードだった.ファンク方面が本職なのかどうか,よく分からないが,KrisでLPを出せたのはGoing Down The Roadのようなブルース曲がそれなりに売れたからではないか,と理解している.Kris録音の後,ジム・ギャンブルが録音で特に優れた成果をおさめたという話を聞かない.

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2009年1月 3日 (土)

メル・アレクサンダーと歌手・その3

メル・アレクサンダーのKrisレーベルだが,UK Kentが同レーベルで出たソウルを集めたコンピレーションを出していた.だけど,ブルース屋も結構多くて,ジミー・エリス,リトル・ジョー・ブルー,ジム・ギャンブルなどはアルバムも出している.その他にもアルバムが出るほどでなかった人が何人かいて,ハーモニカ・ファッツなどもレコードを出している(もっとも,その楽曲がブルースと言えるかどうかはビミョー).テキサス州フェアフィールド出身のこんなブルースマンのレコードもある.

Willie Willis, Black Nights b/w I've Been A Fool, Kris 8116.

Kris8116 ウィリー・ウィリスといっても,あまり名前を聞いたことがない人だ.しかし,このシンガー/ギタリストは何枚かLPやCDを出していて,現役ブルースマンとして今はテキサス州ダラス周辺で活動している.インタヴューを含む記事が,

http://www.geocities.com/bluesdfw/willie.htm

にあるので見て欲しい.へえ,マーシー・ベイビーなんかとやってたんだね,などと思ったりした.The Blues Discography 1943-1970を見ると,1960年代にファッツ・ワシントンのRideレーベルでシングル盤を出したのが最初のレコードのようだ.上のインタヴューで1956年と言っているが,これは記憶違いだろう.

このKris盤の正確な録音時期を知らないのだが,1980年前後のものではないか.Rideに録音した盤の片面はGood Black Nightというタイトルだったそうだが,これはローウェル・フルソンのBlack Nightsに対するアンサー・ソングだったそうだ.それから十何年か経って録音したのは,今度はアンサー・ソングではなく,Black Nightsそのものだった.

そのBlack Nightsだが,ローウェル・フルソンのものを5倍くらいに希釈した感じ.曲は型どおりのギター・ソロで始まるけれど,どうも押しの弱いギターで印象が薄い.歌はちょっと渋目の声はしているが,あまり上手いとは思えない.どうにも平凡なアーティストという印象だが,それでも,結構豪華なホーンを含む伴奏のサポートがよく,中盤以降はなかなか盛り上がって悪くはない.

Ride盤の片面はI Was A Foolという題名だそうだが,このKris盤のB面はI've Been A Foolという題名.同じ歌なのか,関係している歌なのか,Ride盤を聞いたことがないので分からない.I've Been A Foolはファンキーなリズムを使ったブルースで,アルバート・キングあたりがやりそうな曲.歌,ギターともフツー過ぎるが,ちゃんと誠実にブルースを演じてはいる.

このKris盤からは,さほどオリジナリティの感じられない平凡なアーティストと言わなければならないウィリー・ウィリスだが,なにか捨て難いC級の味はあると思う.

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2008年12月29日 (月)

メル・アレクサンダーと歌手・その2

ジミー・“プリーチャー”・エリスはメル・アレクサンダー関係のレーベルではSpaceの他,Movin',Krisなどでレコードを出していて,KrisではCD/カセットまで出しているらしい(Red Hot And Blue, Kris 8147).そのCDに両面とも入っているようだけれど,Krisから出たレコードの一つがこれ.

Jimmy (Preacher) Ellis, Everyday's A Holiday With The Blues b/w Hard Times, Kris 8146.

Kris8146 録音年とかは良く知らないけれど1980年前後ではないかな.どういう訳かThe R&B Indiesに載っていないが,別に珍しい盤ではないと思う.

Everyday's A Holiday With The Bluesはマイナー・キーの非常にブルージーなバラッド.ボビー・ブランドのI'll Take Care Of Youを乱暴にしたような感じ,と言えば近いか.シンセサイザーを安易に使ったアレンジは嫌だが,重量感あるエリスの声には魅力を感じる.

Hard Timesはリラックスしたテンポのブルース曲.こちらもアレンジが感心しないなあ.生活の苦しさを訴えるブルースなのだけれど,暢気な音色で響く単調なシンセサイザーのリフのせいで何だかちっとも真実味がないぞ.ちょうどブルース&ソウル・レコーズ誌の最新号(No.85)はギターを持った次期大統領オバマさんが表紙で,特集記事の中で社会派のブルースやソウルの曲がいろいろ紹介されている.このHard Timesもメル・アレクサンダーがもっと上手く制作していればその中にも入っていたかもしれない.エリスの,ごわごわした声を使った歌いっぷりは悪くないのだから.

ジミー・“プリーチャー”・エリスが今どうしているのかよく知らない.テキサス州ダラスのブルースのサイトに写真があるので,テキサスのどこかにいるのか,それとも今もウェスト・コーストにいるのか.今後,突然アルバムを出す可能性も残っていると思う.昔のシングル盤作品のコンピレーションにも期待したい.

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2008年12月21日 (日)

メル・アレクサンダーと歌手・その1

ジミー・“プリーチャー”・エリスという人は,P-Vineから出たCD,The Jewel Deep Soul Story(P-Vine PCD-5624/5/6)で初めて聞いた.そこに収められた彼の曲I'm Gonna Do It By Myselfはブルース形式に基づいた,ファンク・ブルースといって良い曲だった.この曲の歌いっぷりが,もう,ノリの良さといい,声域といい,声のコントロールといい,素晴らしくてすっかり気に入ってしまった.ジミー・“プリーチャー”・エリス名義のCDも(複数?)出ていたようだが,今となってはちょっと入手しにくくて,持っていない.

Jimmie (Preacher) Ellis, Don't Tax Me In b/w Trouble All Over The Land, Space 306.

Space306 Trouble All Over The Landは重々しいスロー・ブルース.出だしのところはローウェル・フルソンやB・B・キングのTroubles, Troubles, Troubles (Trouble Blues)か?と思わせるが,途中で独自の歌詞になっていく.野太い声に迫力があって,満足できる出来だ.

Don't Tax Me Inはファンキーなブルース.同じレーベルでリトル・ジョー・ブルーも録音しているのは割と知られているだろう.なかなか社会的な内容のようだ.残念ながら,歌い方に迫力が欠け,ヴォーカルの録音レベルも低くてぱっとしない.同じファンキーなブルースでもI'm Gonna Do It By Myselfの良さには全然及ばない.

両面とも1968年,ロサンゼルス録音,とされている.ジミー・“プリーチャー”・エリスはギターも弾き,他の歌手のセッションでも弾いていたりする.このレコードではハーモニカも入るが,ギターだけでなくこのハーモニカもエリス自身の演奏だそうだ.

Spaceというレーベルだが,ロケットやら空飛ぶ円盤(UFOと呼ぶには旧式過ぎる感じだ)やら宇宙人女(そうなのか?)をあしらったレーベルのデザインが,なんとなく微笑ましい.メル・アレクサンダー(アレグザンダー,って濁るのが本当かも)とジェイムズ・ジャクソンという人達のレーベルで,プロデュースも彼らが担当している.

メル・アレクサンダーはレーベル・オウナー,プロデューサーとして1970年前後のウェスト・コースト産レコードで名前を見掛ける.もう隠居してるのかと思うが,21世紀に入っても,アーニー・ジョンソンのCD,Squeeze It(Phat Sound 4112)にSong Coordination, Consultant and Promotions,なんていって名前が出ていたりする.実は,プロデューサーとして彼がすごく優秀だとは思っていないのだが,彼のプロデュースで注目すべき作はいくらかある.

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2008年12月13日 (土)

Ferriday, Louisiana・その4

ルイジアナ州フェリデイのレーベルでもう一つLluviaというのがあって,枚数は少ないようだがレコードが出ている.レーベルにManufacturing by Myrl Records,と記してあるので,Myrlと同じ会社の別レーベルかとも思う.その1枚がなかなかの聞き物だ.

"Happy Jack" Davis with Piano Slim & The Stereo Tones, Ten Cents Stew b/w Steady Roll, Lluvia 5052.

Lluvia5052_2 “ハッピー・ジャック”・デイヴィスというのが誰なのか,分からない.この名前で他に出ているレコードは無いようだ.このレコードが録音されたのは1961年9月だが,その時点かなりキャリアを積んでいたジャンプ・ブルース・シャウター,という感じがする.つやつやとした声質だが,若い人という声ではなく,少し貫禄のついた声で,歌い方もやや古い世代のように聞こえる.

Ten Cents Stewは鋭い音色のテキサス・ギターで始まる8小節のスロー・ブルース.デイヴィスのずっしりと重い歌いっぷり,ギターを始めとするバンドのサポートとも良い.途中でしつこい曲展開になるのが音楽の流れを止めてしまうようなところがあるが,これもマイナー・アーティストの愛嬌なのではないか.1960年代のテキサス・アーバン・ブルースの良作として高く評価したい.

Steady Rollはノリの良いジャンプ・ナンバーで,こちらも良い出来だ.威勢の良いサックス・ソロなども入る.

The Blues Discography 1943-1970は録音地をFerriday, La?としているが,テキサス州ヒューストンの録音だろう.マトリックス番号はACA 4391/ACA 4392となっている.ピアノ・スリムことウィラード・バートンの名前が記されているから,彼がピアノを弾いているのは大体確かだろうが,他のメンバーは分からない.Ten Cents Stewで頑張っているギタリストはビッグ・ウォルターのMyrl盤で弾いている人と同一人物のようにも聞こえる.

両面とも曲の作者はM. Dodge - L. Harperとなっている.この「ドッジ」という人名を見て,フロイド・ディクソンがレコードを出したDodgeというレーベルの名前は,人の名前からとったのでないかと思い当たる.これでM. DodgeのMがMyrlだったりしたら謎解きは簡単なのだが,そうでもないだろうな.

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2008年12月 6日 (土)

Ferriday, Louisiana・その3

ピアノ・スリムことウィラード・バートンという人が1950年代から1960年代にかけてテキサスのいくつかのレーベルからシングル盤を出していた.そこそこ枚数を出しているから,それなりに需要があったアーティストだったのかと思う.それらの録音を集めて(だろうか?)CollectablesでリイシューCDが出ていた.そのCDの,ごく個人的な感想は,安っぽいロックンロールまがいばかりで面白くもなんともない,というものだった.以前のBlues Records 1943-1970にはこの人の項があったが,新しいThe Blues Discography 1943-1970にこの人は載っていない.というのも,あまりof blues interestとは言えないアーティストだからだろう.

それでもルイジアナ州フェリデイのMyrlから出た次のレコードは,CollectablesのCDに入っていたのよりはof blues interestだと思う.

Piano Slim, Swinging With Jane b/w Heartbeat Of Love, Myrl 405.

Myrl405 両面ともインストゥルメンタルなのだが,Swinging With Janeはまずまずの出来だと思う.特に凄いとは言えないけれど,賑やかなブルース形式の曲で,ギターの弾くリズムがシャキシャキしていて,気楽に聞いていれば心地が良いとは言える.サックスとギターがソロを取る.ウィラード・バートン以外のメンバーは分からないが,ギタリストは前回のビッグ・ウォルターのレコードで弾いていた人と同じなのかも知れない.

Heartbeat Of LoveはR&Bバラッドのインストゥルメンタルという感じ.ピアノとサックスが,さも「良い曲だろう」といわんばかりのソロを弾くが,それほどのもんじゃない.

このレコードの2曲もACAと付くマトリックス番号が付いていて,ACA-4323/ACA-4324となっている.番号からすれば1961年頃にヒューストンで録音されたもののようだ.

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2008年12月 1日 (月)

Ferriday, Louisiana・その2

つい最近のDialtone/P-VineのCDで,90歳を過ぎたビッグ・ウォルター・プライスが参加していたのがあったと思う.90過ぎというブルース屋が録音することはときどきあるけれど,ビッグ・ウォルターも随分息の長い音楽活動をしているものだ.

Big Walter and His Thunderbirds, It's How You Treat Me b/w Feelin' A Little Worried, Myrl 406.

Myrl406 これは,今から40年以上も前,1961年8月頃にテキサス州ヒューストンで録音されたもの.伴奏のメンバーは分からない

ビッグ・ウォルター・プライス,凄いときは凄いからなあ.アルバート・コリンズのギターがついたMy Tears.あれは,コリンズのギターもギターだが,ビッグ・ウォルターの重量感ある歌が本当に強烈だった.同じ歌をNobody Loves Meという題名で再録音しているが,そちらも良かった.もっとも,彼のレコードはいつでも凄いという訳ではないけれど.

さて,このレコードは両面ともブルースを演じていて,My Tearsほどではないとしても,なかなかの佳作になっている.It's How You Treat Meは中くらいのテンポの曲,Feelin' A Little Worriedはもう少しテンポ速く軽快に仕上げている.やや不満なのはビッグ・ウォルターがオルガンを弾いていること.オルガンは別に嫌いではないし,当時は流行っていたのかもしれないけれど,ビッグ・ウォルターはピアノが結構良いからピアノを弾いて欲しかった.その代わり,いかにもテキサスでござい,というような歯切れの良いギターが頑張っていて,特にIt's How You Treat Meでは好演が目立っている.このギタリストは誰なのだろう.

Myrlというレーベル,鮮やかな配色のレーベル・デザインが目を引くが,前回のDodgeレーベルと同じくルイジアナ州フェリデイの住所が記されている.前回のフロイド・ディクソンのレコードをACAスタジオでの録音だと思ったのは,マトリックス番号の頭にACAというのが付いていたからだが,このビッグ・ウォルターのMyrl盤にもACAで始まるマトリックス番号が付いている.フロイド・ディクソンの盤はACA-4438/ACA-4439,このビッグ・ウォルターのACA-4379/ACA-4380となっていて,大体同じような時期に録音されたものと分かる.ビッグ・ウォルターはMyrlレーベルでもう1枚,Watusie Freeze Part 1&2というのを出しているが,これはノベルティというか,しょーもないインストゥルメンタルだった.

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2008年11月22日 (土)

Ferriday, Louisiana・その1

レーベルにルイジアナ州フェリデイという住所が記載されているレコードを何枚か買った.フェリデイというのは人口3,700人というから,小さな町だ.住人の3/4がアフリカン・アメリカン,町出身の有名人はジェリー・リー・ルイス,町内にデルタ・ミュージック・ミュージアムなんてのもあるそうだ.ルイジアナ州の東側でミシシッピ州との境界に近く,多少知られた都市だとミシシッピ州ナチェズが割と近郊になる.だけど入手したレコードはいずれもミシシッピ州ではなくテキサス州との結び付きが強く,ヒューストンのACAスタジオで録音されたようだ.

Floyd Dixon, Opportunity Blues b/w Daisy, Dodge 807.

Dodge807 フロイド・ディクソンのOpportunity Blues,あったねえ.フロイド・ディクソンをまとめて聞けるようになったのは,Route 66レーベルが彼の大量の録音を数枚のLPで復刻してからだと思うけれど,その1枚にこの曲をタイトル曲としたものがあった.LPのタイトル曲に選ばれただけあって,深遠なスロー・ブルースで,力作になっている.チャールズ・ブラウンが好きだったことを本人もインタヴュー(Living Blues, No.23)で語っている通り,スロー・ブルースになるとチャールズ・ブラウンみたいなクラブ・ブルース調になるディクソンだが,この曲は真似でもなく,個性が感じられる.

このOpportunity Bluesという曲,ルイ・ジョーダンがTangerineレーベルにMy Friendsという題名で録音しているそうだ(聞いたことないな).フロイド・ディクソンのこのレコードの録音は1961年11月,ルイ・ジョーダンのMy Friendsは1962年7月の録音とされている.だから,ディクソンがジョーダンの曲をカバーしたのではなく,ジョーダンがディクソンのレコードを聞いて録音したのじゃないかと思われる.

Daisyの方は甘口の,ちょっとニューオーリンズっぽさもあるようなR&Bバラッド.レコードの片面がスロー・ブルースなら,反対の面にはこんな曲を配するのがちょうどバランスが良い.

Call Operator 210とかOoh-Eee! Ooo-Eee!とかAlarm Clock BluesとかHey Bartenderとか印象に残る曲がいくつもあるフロイド・ディクソン,CDリイシューも随分ある.お正月休みにでも復習してみるかねえ.

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2008年11月15日 (土)

1980年代のシカゴ・ブルース,その6

オーストリアのWolfレーベルが出しているChicago Blues Sessionのシリーズ,全部で何枚出ているのだろう.凄い枚数だと思う.このシリーズでL・V・バンクスという人のCDが2枚出ている.そのうち1枚目(Let Me Be Your Teddy Bear, Wolf 120.887CD)を持っているのだが,それがVol.41となっている.そのCDの録音の前,1989年にバンクスはシンシナティのレーベルから次のシングル盤を出している.

L.V. Banks and the Soul Swingers, Teddy Bear b/w That's The Way Our Love Goes, Clicke 900.

Clicke600 WolfレーベルのCDを聞くかぎり,L・V・バンクスという人はただフツーにシカゴ・スタイルのブルースを型どおり演ずる,凡人としか思えない.下手ということもないけれど,歌もギターも楽曲も一部を除いて特別どこが良いということもないからなあ.

さて,このシングル盤の2曲,WolfのCDでも再演している.同じ人物が同じモノを演じているのだから,大体同じなのだが,CDのものよりはビミョーに好感が持てる.

Teddy Bearは結構早いテンポのブルース曲.ベース,ドラム,オルガン,ギターという比較的スカスカした編成ではあるが,オルガンを上手く使ってクールにまとまっている.ギターは物足りないが,歌は,すごい小粒だけど,それなりに味があるのでないか.WolfのCDに入ってる方はスライド・ギターなんか使って,やたらに賑やかな割に伝わってくるものがないが,それに比べれば張りつめた雰囲気もあって,聞く価値はこのシングル盤の方がありそう.

同じ様なことが,That's The Way Our Love Goesにも言える.Wolf盤に比べればシンプルなバンド編成だけれど,真剣にスロー・ブルースを演じていて,それなりに盛り上がる.一方,Wolf盤の方はゴージャスだが曲の魅力をそれほど感じない.

L・V・バンクスという人,優秀なアーティストとは思わないが,地元のクラブでライヴでも見りゃ印象変わるかね?

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2008年11月 8日 (土)

1980年代のシカゴ・ブルース,その5

1980年前後,ウィリー・バックというブルースマンがBar-Bare,Arrowなどのレーベルでシングル盤を出していた.Bar-BareからはLPも出した(番号はBare-Bare TRD-10304),というけれど,見たような記憶がない.そのLP,どこかに売っていれば結構レア盤なのかもしれない.

Willie Buck, I Say b/w My Baby Talking, Arrow 440.

Arrow440 このレコードのレヴューがLiving Blues誌のWinter 1982/83号(No.55)に出ているので,出たのは1980年代始めだろう.内容はその時代に作られたにしては随分古いスタイルで,1950年代のシカゴ・ブルースみたいな感じだ.

I Sayというのはリトル・ウォルターのEverything's Gonna Be Alrightで,歌詞は変えているようだ.アンプリファイされたハーモニカがシカゴ・ブルースらしさを盛り上げる.ウィリー・バックの歌も,渋い声をしていて,悪くない.ただ,もう少し個性や味わいが欲しいところ.

My Baby Talkingは良くカバーされるリトル・ジュニア・パーカーのFeelin' Goodのパタンの曲で,歌詞だけは独自のものに取り換えられている.この手の曲にしてはエネルギーが少々不足気味のようだが,手堅くまとめれれて,悪くはない.

このレコード,Living Blues誌によれば,ルイス・マイヤーズ,ビッグ・ムース・ウォーカーらが参加しているそうだ.

ウィリー・バックという人,1980年代のシングル盤で期待されるようなスタイルとは言い難くて,新鮮さに欠ける.逆に,その時代としては伝統をよく伝える貴重な存在だったとも思う.今,それほど話題にならないが,ググって見ると,プロフィール・ページがすぐに見つかった.

http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=71288175

最近も元気に歌っていて,CDを出しているようだ.このページで試聴できる曲やビデオを見てもシングル盤とほとんどスタイルは変わらない.CDが広く配給されれば古めのシカゴ・ブルース好き(自分がそうだが)には評判になるのかもしれない.

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2008年10月26日 (日)

1980年代のシカゴ・ブルース,その3

1982年にシル・ジョンソンがヒットさせたMs. Fine Brown Frameはとてもカッコ良かった.ブルースに根ざした音楽であることははっきり分かるのに,1980年代の流行音楽らしい新しさも十分併せ持っていて,快作だった.そのレコードをプロデュースしたのはジェネラル・クルックで,ハーモニカにジェイムズ・コットン,ギターにマイケル・コールマンというメンバーだったが,同じ頃,この組み合わせでジェイムズ・コットンもレコードを作っていた.

James Cotton, Part Time Love b/w Here I Am (Knocking At Your Door), Backroom 86454.

Backroom86454 このレコードでもジェネラル・クルックの音作りは冴えている.Part Time Loveは,あの,リトル・ジョニー・テイラーのPart Time Loveだが,まったく新しいファンク・ブルースに仕立て直されている.イントロで「んぱっんぱっんぱっんぱっ」てな感じのノリの良いリズムで引き込んでおいて,ハーモニカ・ソロ,歌,コーラスの応答,展開するのがとても上手く出来ている.ハーモニカのソロも聞き物だし,全体に格好よく仕上げられていて,この時代のシカゴ・ブルースとしては傑作だと思う.難点は,コットンのヴォーカルで,元気はあるが,ちょっと荒っぽくて味わいに欠ける.もっとも,そういうことを気にするような種類の音楽ではないような気もする.

Here I Amの方もアップテンポのブルース曲.Part Time Loveに比べればオーソドックスというか,若干ありきたりで,やや落ちる.それでもアレンジには新鮮な部分もあるし,悪いということもない.

Buddahの録音がファンク・ブルースとして評価されているジェイムズ・コットンだから,ファンキーな曲を演ずるのは意外なことではない.それでも,このPart Time Love,その路線の中でも出来の良い作として記憶しておきたい.

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2008年10月18日 (土)

1980年代のシカゴ・ブルース,その2

AlligatorとかRounderとかは非黒人ファン向けにブルースのアルバムを売っている会社だが,45回転のシングル盤も出していた.その売れ行きがどうだったのか,知らない.同じ様な性格のレーベルで,Living Blues誌のジム・オニールが主宰していたRooster Bluesもシングル盤を出していた.これらは大体LPからのカットが多かったようだが,1983年に出たらしい次のレコード,何かのアルバムに入っていただろうか?

Abb Locke with Otis Rush, Blues Party b/w Cleo's Back, Rooster Blues 49.

Rooster49 サックス奏者のアブ・ロックは色々なセッションで名前を見るから有名だろうけど,いつも大体脇役で地味な存在だから,ギターのオーティス・ラッシュの方につい注目してしまう.オーティス・ラッシュ参加のRooster Bluesのセッションというと,エディ・クリアウォーターのものなどがあったが,そのセッションと別の録音かなあ,と思う.クリアウォーターのレコードはもう少し後の1986年に出ているからだ.

Blues Partyは歌の入るウォーキング・テンポのブルースになっている.ヴォーカルはアブとロックス,となっていて男女混声のコーラスで歌われるのだが,どの声がロックの声だかよく分からない.どの声であったとしても鼻唄みたいなもんで,たいしたことはない.という訳で,歌に関してはまるっきりへなちょこなレコードなのだが,それとは不釣合な,やたらに立派なギター演奏が終始聞ける.間奏のソロも含めて,オーティス・ラッシュはさすが,ということ.ロックのヴォーカルが弱いので,コーラス形式にしたのだろうけど,そういう工夫はしなくていいから,誰か歌える人を調達してくれれば良かったのだが.このウィーク・ポイント,ギターを弾いてる人に歌わせれば簡単に解決したのだろうけれど.

Cleo's Backというのはアブ・ロックのテナー・サックスを中心としたちょいファンキーなインストゥルメンタル.オーティス・ラッシュも2コーラス位のソロを弾く.これはブルース・ファン向けBGMとゆー感じ.

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2008年10月11日 (土)

1980年代のシカゴ・ブルース,その1

コンパクト・ディスクが市場に提供されたのは1982年で,その後急激に普及して1980年代終りにはほぼアナログ・レコードに取って代わったようだ.7インチ45回転のシングル盤レコードの歴史も大体1981年~1990年あたりが最後の10年間,ではないだろうか.その時期にシカゴ・スタイルのブルースもいくらか出ていて,1989年のこれもその一つ.

Johnny Christian, All Of Your Love b/w Somebody Call My Baby, Big Boy 52088.

Bigboy52088 ジョニー・クリスチャンについては,

http://hem.fyristorg.com/bukka/bdn3.html

に詳しい.

All Of Your Loveはマジック・サムの,アレだ.これがなかなか良い.意外と迫力あるゴワゴワした声で,バンドの方も荒っぽいが勢いがある.バンドはギター2本,ベース,ドラム,オルガン,サックスというような編成.ナイス・カバーの部類ではないか.

Somebody Call My Babyはリラックスした感じのスロー・ブルース.こちらは歌いっぷりが抑え過ぎのようで,まあまあ.歌の文句はスタンダード曲のGoing Down Slowから借りている部分があるようだ.

レーベルのBig Boyはシカゴのディスク・ジョッキー,ビッグ・ビル・コリンズのレーベルだ.コリンズのことはザ・ブルース誌,No.25 (1977年11月)で中河伸俊さんが書いているのだが,そんな古雑誌(30年前だもんなあ)を持っている人もあまりいないだろう.というより,そんなことを執念深く今でも覚えている自分というのも実にどうもロクなものでない.

Bigboylp1935 この2曲,LPでも出ている.Little Johnny Christian, Somebody Call My Baby (Big Boy LP1935)というのがそれだ.厳密にはシングル盤とLPに入っているのは同じではなく,LPに入っているのはシングル盤のものよりずっと長い.聞き比べた感じでは同じ録音のようで,シングル盤はあちこち切って短くしたものと思われる.このLPの収録曲,毎度お馴染みのTurning Point,オーティス・クレイが歌っていたAll Because Of Your Love,マッキンリー・ミッチェルのEnd Of The Rainbow,それにマジック・サム,と選曲にもシカゴの二線級ミュージシャンらしさが表れている.何だが普段ライヴでやっていることをスタジオで繰り返したような感じで,ラフ過ぎるかもしれないが熱気と生気はあって,好感が持てる面もある.

この録音を1989年に行った後,もう1枚Big BoyからLPを出したそうだが,それは持っていない.その後の彼のレコーディング・キャリアがどうだったのか,よく知らない(すぐ亡くなったそうだ)が,現時点でジョニー・クリスチャンを聞けるCDは簡単には見付からないと思うし,彼の名前がそう話題になることもなかったような気がする.このBig Boy録音や,彼が1980年代に残した数枚のシングル盤がディジタル形式で復刻される可能性は少ないのかも知れない.

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2008年10月 4日 (土)

意外とモダン・その3

Love For SaleがMercuryから再発された後,ロイ・ブラウンはもう1枚シングル盤をMercuryから発表している.これもモダン・ブルース風の作りではある.

Roy Brown, Mail Man Blues b/w Hunky Funky Woman, Mercury 73219.

Mercury73219 1971年頃に出たレコードで,Love For Saleのときとはプロデューサー,アレンジャーが代わってしまっていて,少々がっかりする.プロデュースがボブ・トッド,アレンジがドン・マクギニスという人だが,誰だか知らない.

ブラウン自作のMail Man Bluesというのは軽快なブルース曲.曲調は,もっと似ている曲があるかもしれないが,リッキー・アレンのCut You A-Looseなんかが割と近いような気がする.楽曲としてはブラウンにそれなりに合っている.伴奏の方はギター,ピアノ,ベース,ドラムというあっさりしたもので,何だかブルース・ロックみたいでもある.伴奏の方は平凡かつ単調だと思うが,ブラウン自身は力を保っている.

Hunky Funky Womanの方はサックスなんかも入る.これは,タイトルからも想像がつくように,ファンキー・ソウルとゆー感じ.

Mail Man Bluesの売れ行きはどんなものだったのか.良く売れていればMercuryでアルバムを作っていただろうから,大したことはなかっただろう.出来栄えはLove For Saleには及ばないし,ロックっぽい気もするから,特にお薦めはしない.それでもロイ・ブラウンを追いかけている人なら聞いてもよいのじゃないか.

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2008年9月27日 (土)

意外とモダン・その2

ロイ・ブラウンは1970年代に入ってすぐ,Friendshipというレーベルからシングル盤を出していて,これについてJeff HannuschのI Hear You Knockin' (Swallow)のロイ・ブラウンの章はこう書いている.

(引用始め)(Friendshipレーベルに吹き込んだ)タイトルの1つ,Love For Saleは全国版のヒットチャートには入り損ねたものの,かなり評判になってMercuryレーベルにリースされた.その曲は,Let The Four Winds Blow以降の彼のレコードとしては一番良く売れた.(引用終り)

Let The Four Winds Blowというのはロイ・ブラウンがImperialに録音した曲で,1957年にビルボードのR&Bチャートで最高位5位までいったヒット曲だ.Love For Saleが出たのは1971年頃だから14年ぶりの浮上ということか.

Roy Brown, It's My Fault Darling b/w Love For Sale, Friendship 701.

Friendship701 Love For Saleが,十分とは言えずとも,良く売れたのは,ブラウンが1970年のモンタレー・ジャズ・フェスティバルに出演したことと関係あるかもしれない.だけど,それよりなにより,組んだプロデューサー/アレンジャーが良かったことが成功の最大の理由だ.レコードのレーベルに記載されている通り(小さい字で左のレーベルのスキャンでは読みにくいけれど),「Arr. & Prod. M. Grayson」だからなあ.当時絶好調の奇才マイルス・グレイソン,ヒットから遠ざかったベテランの再生もお手のものだっただろう.

そのLove For Sale,活きの良いリズムに乗って,よく歌うスクイーズ・ギターが1コーラスのソロを弾き,それをイントロとしてブラウンは歌い出す.最初聞いたとき,序盤の部分で歌い方が少し軽いか,と思い掛けたが,よく聞けばそんなこともなく,強弱高低,自在に声をコントロールして聞き手を引き付けていき,決めの文句の「Good Rockin' Brown is back in town」で声のピークに持っていく.その呼吸の良さといったら,流石だ.伴奏陣では,揺るぎないリズムで曲を駆動するベース,ドラム,リズム・ギターがとても心地よい,ということもあるが,ブラウンの歌にきめ細かく反応するリード・ギターの好サポートが光る.一方,ホーン・アレンジ名人のマイルス・グレイソンには珍しく,ホーンは聞けないが,その代わりにオルガンが重厚な響きを曲に加えている.この曲には,確かに繰り返し聞きたくなる魅力があって,1970年前後のウェスト・コースト・モダン・ブルースの逸品の一つとしてよいだろう.

マイルス・グレイソンはIt's My Fault Darlingではずっと凝ったアレンジをしていて,自信があったのか,こちらをA面にしている.ただ,これが成功作かというと,そうでもない.曲の方はグレイソンとラーモン・ホートンの作で,グレイソンは同じ曲をリトル・ジョニー・テイラーにも録音させている.そのリトル・ジョニー・テイラーのものと,このロイ・ブラウンのもので,どちらが先に録音されたのかは分からないが,「仕事から早く帰ったら,女房が変な男を」みたいな内容からすればLJTのために作ったのだろう.

さて,このロイ・ブラウンのバージョンだが,LJTのものとはかなりアレンジを変えている.ワウワウを掛けたギターがぴょんぴょん飛び跳ねるようなリズムを弾いているのを始め,ずっとファンキーに仕上げているのだ.グレイソンはLJTやテッド・テイラーにも結構ファンキーなのを録音させているし,「その方が売れる!」という確信があったかもしれない.しかし,変則的なリズムのせいでロイ・ブラウンは歌いにくそうに聞こえ,その実力が十分発揮されたとは思えない.イントロが印象に残るとか,最後の方のスクリーム具合は凄いとか,プラス面はあるけれど,聞きたくなるのは断然Love For Saleの方ということになる.

最初に書いたようにこのレコードはMercuryからMercury 73166という番号で再発されている.Mercuryは色々リイシューが出たから,この2曲も何かのCDで聞けるのかも知れない.

ロイ・ブラウンとマイルス・グレイソンの間のフレンドシップがどんなものだったのか,分からない.もし,このレコードの後,Mercuryでマイルス・グレイソンのプロデュースとアレンジの下,ロイ・ブラウンがもう2,3枚シングル盤を作るとか,LPの1枚も作るとかすれば素晴らしかった,などと思ってしまうのだが,それは実現することがなかった.

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2008年9月20日 (土)

意外とモダン・その1

ロイ・ブラウンは1948年にはGood Rockin' Tonightをヒットさせ,代表作は1950年代半ば位までに集中し,ロックンロール時代には入ると,ちょっと落ち目になった,という人だから,例えばB・B・キングなんかより古い世代のように思ってしまう.ジャンル分けされるときはジャンプ・ブルースにいつも分類されるから,モダン・ブルースと呼ばれるものより古いスタイルのようなイメージもある.その一方で,他のジャンプ・ブルース・シャウターより年齢は若かったのも知られていると思う.ブラウンは1925年9月10日生まれということで,例えばワイノニー・ハリスよりも10歳も若い.B・B・キングは1925年9月16日生まれというから,ブラウンより年下は年下だが,1週間も違わない.アルバート・キングなんかはロイ・ブラウンより年上だ.

ロイ・ブラウンはレコードをヒットさせた時期は早かったけれど,年齢的には案外若い世代だったということで,他のジャンプ・ブルース・シャウターより新しい音への対応力はあったと思われる.1960年代以降の彼の録音を聞くと,モダン・ブルースマン,という感じのものがある.

Roy Brown, Good Sweet Loving b/w Separation Blues, True-Love 448.

Truelove448 Separation Bluesはエネルギッシュなアップテンポのブルース.伴奏はリズム・セクション,ホーン,ピアノ,ギターと付くが,完全にウェストコーストのモダン・ブルースのスタイルで演奏される.かなり活きの良いリード・ギターが頑張っている,と思ったら弾いているのはシュギー・オーティスだった.良く聞けば,間奏に入るところでブラウンも「Hey, Shuggie!」という気合い声を発している.1968年の録音ということでロイ・ブラウンは40代前半,全盛期でもおかしくない.実際,持ち前の美声は冴えまくっていて盛り上がる.楽曲は,若干ありきたりのようにも思うけれど,十分良い出来だろう.間奏のところでブラウンがラップ(と言うのか?)をかますのも格好よい.

Good Sweet Lovingの方は,ブラウン自身が作った曲となっているが,これは,そ,ソウルだ.この曲が素晴らしいとは思わないが,1960年代終りの音に対応しようとする姿勢は見える.

Jeff HannuschのI Hear You Knockin' (Swallow)のロイ・ブラウンの章によれば,彼は1961年ごろにカリフォルニアにやってきたけれど,音楽よりも所帯道具や百科辞典のセールスマンをやろうとしていたらしい.1960年代には小レーベルの吹き込みがちらほらあったが,このTrue Love盤も含め売れなかったようだ.しかし,1970年代に入って,ロイ・ブラウンはついにモダン・ブルース・スタイルのヒット作を手にすることに,という話はまた次回に.

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2008年9月14日 (日)

オールド・タイマーの奮闘・その3

Kentレーベルからシングル盤で出たブルースで,めぼしいものは大体P-VineがCDリイシューした,と考えて良さそうだ.めぼしくない(?)のはぱらぱらと残っていて,これもその一枚か.

Charles Brown, Merry Christmas Baby b/w 3 O'Clock Blues, Kent 501.

Kent501 チャールズ・ブラウンは,1944年から1990年代に至るまで,長い間録音を続けて来た.デビュー当時,特にジョニー・ムーアのスリー・ブレイザーズ名義で録音していたときは,ベース,ギター,ブラウンのピアノと歌,というトリオ形式と決まっていたが,いつまでもそのスタイルを続けるというのも無理な話だ.時代と共に,チャールズ・ブラウンの残した録音の伴奏やアレンジが変わっていったのは当然のことだ.1950年代後半以後,変なのもあるが,デビュー当時とバンドのスタイルが変わっても,それなりの良さを発揮した録音はある.1960年代の彼の録音でいうと,ストリングスを大々的に使ったMainstream録音は,日本盤CDも出ていたが,ちょっと嫌だ.しかし,King録音などはかなり良い曲もあって彼の魅力は出ているし,Galaxy録音なども悪くないと思っている.この辺は1960年代のR&Bとして無理がなく,しかもチャールズ・ブラウンらしさも味わえる.しかし,同じ1960年代の録音でも,このKent盤はダメな方だろうなあ.

3 O'Clock Bluesは,もちろんローウェル・フルソンがThree O'Clock In The Morningで,B・B・キングもThree O'Clock Bluesとしてヒットさせ,出世作になった,あの歌.チャールズ・ブラウンにこのネタがあったか,と意外な選曲だと思い,興味を持って買ってみたわけだ.歌の節回しはまったくいつものチャールズ・ブラウンのブルースだが,歌の文句はフルソンやB・Bのものと同一曲で間違いない.不思議なのは伴奏で,1960年代始めくらいのローウェル・フルソンやB・B・キングのKent録音で聞く,あの伴奏そのままなのだ.どうも,Kentのスタジオにいた連中が,あまりブラウンのためのアレンジも考えず,フルソンかB・Bのバックで演じていたパタンの演奏を惰性でそのまま繰り返したように聞こえる.そのバンドの方はピアノ,ドラム,ベースというもので,ブラウン自身はオルガンを弾いている.ピアノはマックスウェル・デイヴィスとか,Kentのいつものメンバーではないかと思う.

Merry Christmas Babyは,もちろん,いつものアレ.こちらも伴奏はいつもの「Kent調」でブラウンがオルガンを弾く,ということで異色といえば異色の再演.

という訳で,このKent盤,チャールズ・ブラウンの新しい面を引き出した,というよりは,スタジオのバンドと安直に組み合わせただけ,という感じで,お薦めできるものではない.それでも意外と聞けてしまうのは,さすがに大物の実力か.

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2008年9月 6日 (土)

オールド・タイマーの奮闘・その2

ロイ・ミルトンのWarwick盤をもう1枚.

Roy Milton, Early In The Morning b/w Bless Your Heart, Warwick 549.

Warwick549 前回のWarwick 591と同じセッションの録音で,メンバーも無論同じだ.

Early In The Morningはミディアム・テンポのジャンプ・ブルース曲.演奏も快調,スムースで力みのない歌にも味がある.同名曲が色々あるが,ルイ・ジョーダンのものともサニー・ボーイ・ウィリアムソンNo.1のものとも全然別の歌で,ロイ・ミルトン自身の作だ.この録音の前にSpecialtyでも吹き込んでいる.

Bless Your Heartは女声コーラスを大々的に入れた甘い甘いR&Bバラッド,というかポップ・バラッドというような曲.もう少しブルージーなところがないとキツイが,まあ1曲なら我慢できる.

ロイ・ミルトンの録音は,初期のものはClassicsで出ているし,SpecialtyやDootoのものもそれぞれリイシューが進んでよく知られていると思う.Dooto録音以降も,CencoとかMovin'とかSpaceとか結構色々な録音があるようだ.有名人だし,Warwick録音も含め,いずれはリイシューされるような気もする.だけど,CD時代になって30年近くなって,その間出たような形跡がないのだから,出ずじまいで終る可能性も同じくらいある.

ロイ・ミルトンは映像もあって,複数のDVDで発売されているから,ご覧になった方も多いだろう(YouTubeとかに誰か上げているかも).巨体の女性歌手ジューン・リッチモンドの伴奏をしているもので,1944年にSoundies(映像付きジュークボックス,らしい)用に撮影されたものだ.1944年というと,レコード・デビュー前で,ミルトンは1907年生まれだから30代なのだが,そうだろうか.どうでもよいが,その映像でも頭は既にぴかぴかしてるなあ.ジューン・リッチモンドのSoundies映像をいくつか見れたが,ロイ・ミルトンが写っているのはHey Lawdy Mamaくらいのようだ.

以前,Galen Gartという人の編集によるFirst Pressings - The History of Rhythm & Blues (Big Nickel)という本が出版されていた.昔のR&Bに関する業界紙(?)とかの記事を丹念に集めたものだが,そのSpecial 1950 Volumeが手元にある.ここで紹介したWarwickセッションに参加しているミルトン,ジャック・マクヴィーらの記事ももちろんあるが,バイオリン奏者のジョニー・クリーチに関する記事もいくつかある.記事に出るくらいだから1950年前後にはなかなか活発なパフォーマーであったようだ.1970年代以降にパパ・ジョン・クリーチと名乗って,ロック畑で活動し,有名とは言えずとも,かなりの録音をした人だが,ミルトンやマクヴィーと同じくらい古い人だったと分かる.1950年代にはクリーチ自身のレコードもDootoneから出ていて,Dootoneレーベルのブルースを集めたCD,Blues For Dootsie (Ace CDCHD1115)に,クリーチの録音は入ってはいないけれど,解説書にその宣伝チラシが載っている.そこではヴァイオリンを持ってにっこりしている写真が使われている.パパ・ジョン・クリーチと言っていたときにはかなり年配になっていたけれど,そのチラシ写真を見ると,へえ,最初からおじいさんだった訳じゃないんだね,と思ったりする.

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2008年8月31日 (日)

オールド・タイマーの奮闘・その1

歌手兼ドラマーのロイ・ミルトンは,1945年以降,1970年代まで色々なレーベルにかなりの量の録音を残しているが,R&Bチャートに入るようなヒット曲は1940年代の後半から1950年代の前半に集中している.1960年にWarwickというレーベルに録音した頃は,オールド・タイマーは言い過ぎかもしれないが,1907年生まれと言うから歳も50過ぎだし,音楽のスタイルから言っても,当時最新の流行歌手とはとても言えなかっただろう.ところが,そのWarwickレーベルに録音したRed LightというのがR&Bチャートの27位に入るヒットになって,1960年代に入ってもなかなか根強い人気を保っていたように見える.そのRed Lightのレコードは持っていないけれど,同じセッションのものがこのレコード.

Roy Milton, R.M. Blues b/w Best Wishes, Warwick 591.

Warwick591 どちらの面も再録音で,R.M. BluesはJuke Box,Best WishesはSpecialtyに録音したものがオリジナルということになる.2曲とも十八番だったようで,R.M. Bluesはもちろん,Best Wishesの方もKentとかで,何度も録音している.

R.M. Bluesは,オリジナル録音と基本的にあまり違わない.ミルトンの声が渋みを増していて,少しテンポは早めかもしれない,というところ.リラックスした雰囲気の西海岸のジャンプ・ブルースだ.少し変わっているのは,イントロ等ところどころで,のどかな感じのバイオリンが入ること.西海岸のブルース・バイオリンでもシュガーケイン・ハリスのような格好良いものではなく,昔のシティ・ブルースでたまに聞くような感じのバイオリンで,これが割と違和感なく曲に溶けこんでいる.

Best Wishesは感傷的なブルース・バラッド.この録音では女声コーラスが終始「う~~~」とやっていて,かなり甘口な仕上げになっている.そうは言っても,ブルースの味わいは十分に保っていて,特にピアノやギターがブルージーな雰囲気を盛り上げている.これはかなりの聞き物だと思っている.

The Blues Discography 1943-1970によれば1960年7月16日にロサンゼルスで録音された,とのことで,同書に出ているメンバーを書き写しておくと次のとおり.

  Roy Milton, V;
  Jake Porter, tp;
  John Ewing, tb;
  Jackie Kelso, as;
  Jack McVea, ts;
  Robin Webb, org/p;
  Billy Hadnott, b;
  Oscar Lee Bradley, d;
  Johnny Creach, vl;
  The Tiaras, v-grp.

ジェイク・ポーターとかジャック・マクヴィーとか,西海岸のジャンプ・ブルース人脈から結構良いメンバーを選んでいるようだ.バイオリンを弾いているのは,1970年代にロック・グループと共演していた人だろう.

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2008年8月24日 (日)

十代の演奏,四十代の演奏・続き

リトル・ウィリー・リトルフィールドはBlues Connoisseurレーベルで2枚レコードを出していて,これは2枚目.

Little Willie Littlefield, Willie's Blues b/w I'll Tell The World I Do, Blues Connoisseur 1011.

Bluesconnoisseur1011 Willie's Bluesというのはスロー・ブルース.昔のEddie'sやModernに録音していたときは,リトルフィールドのスロー・ブルースというと,軽い声質でスムースにクラブ・ブルース風に歌っていた.それらの録音から20何年か経ったこの曲は,ずっしりと重みのある親父声で聞かせる.出だしのところでファッツ・ドミノのEvery Night About This Timeを思い出したが,独自のメロディーを持っていて,なかなか真情を感じさせる.難点は伴奏で,間奏に入る前の部分とかでタイミングが揃わずバタバタするのはお粗末だ.フツーならビシッとできるまで練習して,録音し直しだろ,これ.

I'll Tell The World I Doの方はチャールズ・ブラウンのSeven Long Daysみたいな感じのマイナー・キーのブルース・バラッド.まあ悪くないと思うが,サックスの間奏でフェードアウトになってしまい,短くて物足りない.

おそらく前回のMac's Old House b/w San Jose Expressと同一セッションのと思うけれど,こちらはスティール・ギターは入っておらず,普通のギターを使っている.これもサニー・ローズが弾いているのではないかと思う.

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2008年8月15日 (金)

十代の演奏,四十代の演奏

リトル・ウィリー・リトルフィールドは,1931年9月生まれなので,もうすぐ77歳になる.まだ現役なようで,今年もヨーロッパのあっちこっちのフェスティバルにブッキングされている.これは,今から30年前,1977年ごろ,彼が四十代半ばのときに作ったレコード.

Little Willie Littlefield, Mac's Old House b/w San Jose Express, Blues Connoisseur 1008.

Bluesconnoisseur1008 リトル・ウィリー・リトルフィールドは1948年のEddie's録音に始まり,1950年前後のModern録音,1950年代のFederalやRhythm録音,1980年以降の大量の録音,と色々聞くものがある.彼の録音を全部聞いたわけではないのだけれど,彼のベストは断然1948年のEddie's録音,Little Willie's Boogieだと思う.これはEddie'sレーベルのCDで聞いているが,素晴らしいブギウギ・ピアノの演奏で,こんな凄いのはめったにない.この録音のとき17歳だったことになるが,これを聞いていると,17歳にしては凄い,というよりも17歳の勢い,エネルギーだからできることのように思える.十代の若さがなければできない音楽というのもあるのではないか.

さて,Eddie's録音から30年後,ブルース鑑定士レーベルの録音だが,到底Eddie's録音には及ばない.そうは言っても,四十代になったリトルフィールドは,それなりの円熟味はある.リトルフィールドの歌,ピアノにベース,ドラム,サックス,ハワイアン・スティール・ギターという編成のバンドが伴奏をしている.率直に言って,そう上等なバンドとは思えない.誰が何を弾いている,とも分からないが,スティール・ギターはレーベル・メイトのサニー・ローズだろう.

Mac's Old Houseはミディアム・テンポのシャッフルのリズムを持った曲.昔のModern録音なんかでは軽い声質でスムースに歌っていたが,この曲ではずいぶんラフな親父声で歌っている.この辺が歳月の流れの表れている部分だろうか.平凡なシャッフルのブルース曲だけれど,それがよい.間奏ではサックス,自身のピアノがソロをとる.

San Jose Expressは同じようなテンポのインストゥルメンタルで,ゆったりとしたブギウギ曲.サックスやスティール・ギターにもソロを取らせる.気楽なインスト,というところだが,リトルフィールドは安定した左手と,よく転がる右手を聞かせ,ブギウギ・ピアニストらしいところを見せる.サニー・ローズと思われる(分からないけれど)スティール・ギターは,そうねえ,フレディ・ルーレットほどファンキーではなく,L・C・ロビンソンやホップ・ウィルソンほどブルーでもなく,朴訥な感じ.

このレコードの難点の一つはミキシングで,ステレオ録音だが,ヴォーカルがセンターではなく左側から出てくるのも問題だが,バランスも変だ.リトルフィールドはなかなか良いピアノを弾いているのだが,その録音レベルが低くって十分に楽しめない.

というわけで,少々難ありのレコードだけれど,リトル・ウィリー・リトルフィールドのファンならば当然聞く価値がある.

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2008年8月 9日 (土)

ブルース鑑定人

サニー・ローズ,Galaxyとの契約が終った後,1977にAdventにLPを録音して,多分それと同じ頃にこんなシングル盤を出している.

Sonny Rhodes, Won't Rain In California b/w Look Out For Sonny Rhodes, Blues Connoisseur 1015.

Bluesconnoisseur1015 レーベルのBlues ConnoisseurのConnoisseurって辞書を見ると「鑑定人」,みたいなことらしい.1970年代にカリフォルニアでブルースのレコードを出していたレーベルで,わりとダウンホームなものが多いようだ.

Won't Rain In Californiaはスロー・ブルース.Galaxy録音にくらべると,緊張感に欠けてて,ぬるいんじゃないかな.音の録り方なんかも含めてマイナー・レーベルらしい作り,とゆー感じ.それでも,彼らしい迫力ある声で歌っていて,ローズ本人比で中の上か,上の下くらいにはいくかもしれない.びよ~んという音色のハワイアン・スティール・ギターを全編で弾いていて,これはなかなかロウ・ダウンな雰囲気を出している.

Look Out For Sonny Rhodesの方は元気の良いシャッフルで,こちらも悪くない.歌の文句にJ・J・マローンの名前が出てくるので,彼がギターかピアノに入っていると思う.

サニー・ローズのCDで,Won't Rain In Californiaという,このシングル盤と同名のものがある.以前,「おお,Blues Connoisseur盤のリイシューか?」と思ってオーダーしたが,これとは全然違う録音だった.このシングル盤は1977年ごろのもので,1978年のLiving Blues誌にレヴューが出ている.録音が多い人だから,特にディジタル・リイシューが必須とは思わないけれど,この録音,このままリイシューは出ずに終るのかね?

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2008年8月 3日 (日)

レイ・シャンクリンの仕事・その7

サニー・ローズことクラレンス・スミスはすっかりメジャー・ブルースマンになって,CDなんか一杯あって,どれを買えばよいのかわからない.彼はアルバムを出すようになる前,1960年代の終りにGalaxyレーベルから3枚のシングル盤を出している.そのアレンジャーはもちろんレイ・シャンクリンだ.

Clarence Smith, All Night Long They Play The Blues b/w I Don't Love You No More, Galaxy 746.

Galaxy746 サニー・ローズのGalaxy録音はSpecialtyやUK KentでほとんどCD化されていて,優れた歌と演奏を良い音質で,安価に入手できてありがたい.ただシングル盤で出た6曲のうちただ1曲,I Don't Love You No Moreだけは正規にはCD化されていないと思う(間違っているかもしれないが).

そのI Don't Love You No Moreだが,シンプルなR&B曲で,いかにもブルース歌手のやるR&B,というところ.声はさすがに迫力があるので悪いとは言えないけれど,それほど無理して聞きたい,という曲でもない.

All Night Long They Play The Bluesの方はLPでもCDでもコンピレーション・アルバムのタイトルになっているから有名だろう.これは文句のない1960年代ウェスト・コースト・ブルースの逸品だ.張りつめた雰囲気の中で,ローズは重量感のある声で歌い進めて行く.「ジューク・ジョイントの向かいに住んでいて,一晩中ブルースをやっていて...」という文句は,ある程度はテキサス辺りでの自身の体験に基づいているのかもしれない.

The Blues Discography 1943-1970は1966年の録音としている.クラレンス・スミスという名前での録音はこれが最後のようで,以後はサニー・ローズと名乗るようになる.1970年代以降の録音ではスティール・ギターを弾くことが多くなって,それも売り物になっているようだが,Galaxy録音では普通のギターを弾いている.

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2008年7月26日 (土)

レイ・シャンクリンの仕事・その6

ブルースとは言い兼ねるレコードなのだけれど.

Good Time Charlie, Thrifty-Mart b/w My Beautiful Baby, Galaxy 730.

Galaxy730 グッド・タイム・チャーリーという人は以前に書いたIf You Can't Help Me Babyのようなブルースの良作があるので,ちょっと気になっていた.その後,もう少しレコードを入手できたけれど,まるっきりジミー・リードを真似したものなんかもあって,何だか個性はよく分からない.UK AceのコンピレーションDiggin' Goldに入っているWatch That Stuffは威勢のよいジャンプR&Bだったが,何でも歌うローカルR&B歌手,という人のようだ.特に得意のスタイルはなくても,一貫してパンチのある歌いっぷりをしているのは一応好感がもてる.

My Beautiful Babyというはごく平凡なR&B.グッド・タイム・チャーリーは力強くシャウトしようとするけれど,メロディーがポップすぎて歌いにくそう.これは,楽曲がつまらなくて,いただけない作だろう.

作曲者は同じ(Johnson-Johnson)だけれど,Thrifty-Martの方は聞くに耐えるR&Bだと思う.何かの曲と似ているような気もするけれど,思い出せない.小気味の良い歌い方とアレンジが良く合っている.

The Blues Discography 1943-1970は1963年の録音としている.Thrifty-Martではオルガンの間奏が入ったりするが,その奏者も含め伴奏メンバは分からない.クリフ・ゴールドスミスのプロデュースにレイ・シャンクリンのアレンジという,Galaxyレーベルのいつものコンビにより制作されている.

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2008年7月19日 (土)

レイ・シャンクリンの仕事・その5

よく見たら,レーベルにはレイ・シャンクリンの名前はないのに気づいたけれど,おそらく彼が関与しているんだろう,ということで.

Little Johnny Taylor, Miracle Maker b/w Please Come For Christmas, Galaxy 743.

Galaxy743 リトル・ジョニー・テイラーのギャラクシー時代の録音は,UK AceのLittle Johnny Taylor, The Galaxy Years (Ace CDCHD967)とV.A, Diggin' Gold(Ace CDCHD1017)で大体CD化された.それでも,シングル盤で出て,これらのCDに入らなかった曲もある.このレコードのMiracle MakerというのはCDでは出ていないと思う.LPでのリイシューもなかったんじゃないか.

そのMiracle Makerという曲だけれど,どんな曲かというと,R&Bバラッド.リトル・ウィリー・ジョンあたりが歌ったらもっと上手そう,というような曲だ.この曲はリトル・ジョニー・テイラー自身の作だが,そう言えば,彼はリトル・ウィリー・ジョンに影響を受けたそうだから,そういう面が表れたか.Part Time Loveみたいな純ブルースのときに比べるとどうも安定感や柔軟性に欠けているようで,LJTの魅力を100%発揮しているとはいえない.とはいうものの,似たスタイルのブルース曲の合間にこんなのがあるのは,変化があって悪くはない.リイシューする価値で順番を付ければ下の方になって,CDで出ないのは仕方がないとは思うが.

その裏のPlease Come For Christmasはもう少しブルージーで,これはAceのCD,The Galaxy Yearsに入っていた.もちろん,チャールズ・ブラウンの,クリスマスものが多過ぎたKing時代のヒット曲をカバーしたものだ.このLJTバージョンは,ちょっと力が入り過ぎだけど,まあ,そういう個性の人だし,よいのではないか.

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2008年7月12日 (土)

レイ・シャンクリンの仕事・その4

ジョニー・モリセットという人は,サム・クック伝(Mr. Soulサム・クック,ブルースインターアクションズ)でも名前が出てくるし,モリセット自身のインタヴュー(Living Blues, No.49)で分かる通り,サム・クックのお友達だった.録音した曲にはブルースが多い.ウチにモリセットが1982年にだしたLP(Hell All The Way, Chronicle CH5009)があるが,それにもブルースの曲が入っていた.アレンジがレイ・シャンクリン,プロデュースがクリフ・ゴールドスミスという次のレコードも両面ともナイス・ブルース.

Johnnie Morrisette (sic), Chains Of Love b/w Brick, Convoy 517.

Convoy517 名前の綴りはMorrisetteとなっているがMorisetteが正しいはず.

Chains Of Loveはもちろんジョー・ターナーが1951年にヒットさせたバラッドっぽいブルースで,ボビー・ブランドとかカバーした人は他にもあり,有名な曲だろう.このモリセットのものは,じっくりと歌われていて優れたカバー・バージョンだと思う.ギターやホーンも過不足無い伴奏をしている.

Brickの方は印象的なイントロで始まるアップテンポのブルース.シャンクリンのホーン・アレンジがいつもながら秀逸で,カッコ良くまとまっている.この曲はCD化されている(West Coast Guitar Killers Vol.1, El Segundo).また,Alligatorでアルバート・コリンズがカバーしていたと思うし,意外と人気のある曲なのかもしれない.

1963年,ロサンゼルスで録音されたレコードらしいが,伴奏者は分からない.

インタヴューによればモリセットは1935年南太平洋のモントゥ島で生まれて,アラバマ州モービルで育ち,少年時代にゴスペルを始めたが,チャールズ・ブラウンやロイ・ブラウンが好きでブルースの道へ,という人のようだ.一流歌手とは言えないけれど,録音はかなりあるし,荒っぽい歌い方にそれなりの魅力があると思う.

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2008年7月 5日 (土)

レイ・シャンクリンの仕事・その3

歌手でギター奏者のJ・J・マローンは何枚かLP/CDを出していて,ウェストコーストのブルース屋としてはまあまあ有名な方だろう.すごく人気があるとは思わないけれどね.レイ・シャンクリンとの関連で言うと,サニー・ローズのGalaxyセッションでもサイドマンとして参加していて,これは無論シャンクリンが関与している録音だろう.さらに,1970年代には,シャンクリンがアレンジを担当したマローンの自己名義作品がGalaxyから出ている.

J.J. Malone, I'm So Glad b/w Whatever It Is, Galaxy 789.

Galaxy789 マローンのGalaxy盤は3枚出ていて,これは3枚目.2枚目のDanger Zone b/w It's A Shame(Galaxy 784)もウチにあるけど,Danger ZoneAll Night Long They Play The Blues (Specialty SPCD7029)で,It's A ShameBad Bad Whiskey (Specialty SPCD7057)でそれぞれCD化されている.

Galaxy録音で聞くJ・J・マローンの歌は,スムースで,メロウな歌い方だが,正直いって歌手としては弱い方のようだ.だけどI'm So Gladというのは,彼の個性に合っていて,かなり良い出来だと思う.ファンキーなブルースでなかなかカッコ良く作られている.ホーン,コーラス,ハーモニカを動員して,レイ・シャンクリンとしては苦心のアレンジではないか.

Whatever It Isもファンキーなブルースだが,ホーンを使わず,リズム部隊と控えめなリード・ギターくらいの伴奏であっさりとメロウに仕上げられている.

1973年ごろに出たレコードのようで,Galaxyとしては最後のシングル盤らしい.その後のJ・J・マローンはアルバム・アーティストとして活躍したが,2004年に亡くなってしまったそうだ.

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2008年6月28日 (土)

レイ・シャンクリンの仕事・その2

ビッグ・ママ・ソーントンって有名だけれど,実はそれほど積極的には聞いていない.別に嫌いってわけではないんだけれどね.ヒット曲のあったPeacock録音はあまり聞かないけれど,ArhoolieのBall And Chainとか,Galaxy録音なんかは結構好きな方だ.Galaxy録音はレイ・シャンクリンのアレンジだろうけれど,別のレーベルでもレイ・シャンクリンがアレンジャーを勤めているものがある.

Willie Mae (Big Mama) Thornton, Mercy b/w Yes I Cried, Carolyn 006.

Carolyn006 Mercyは力の入ったスロー・ブルース.分厚いホーンの使い方などはレイ・シャンクリンらしいと思う.ギターもがんばって絡んできて,良い出来だと思う.この曲はDon't Freeze On Me - Independent Womens Blues (El Cerrito)でCD化されていた.

Yes I Criedは元気の良いジャンプR&B.ちょっと曲が変化に乏しく聞こえるのがマイナス面で,まあまあ,というところ.

レーベルのCarolynはナット・マッコイが経営していたレーベルで,他にはジョージ・アレンことジョージ・ハーモニカ・スミスのレコードを出している.The Blues Discography 1943-1970は1963年ロサンゼルス録音,としているが,伴奏者のメンバーなどは分からない.

1960年代のビッグ・ママ・ソーントンはArhoolieやMercuryに大量の録音をしている他,あちこちの小さいレーベルにいくらか録音している.よくチェックすればまだ良いのがあるのかもしれない.

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2008年6月20日 (金)

レイ・シャンクリンの仕事・その1

大昔の田舎のブルースだったらアレンジなんて関係なかっただろうが,1960年代以降の,特にホーンが何本か入るようなバンド・ブルースだと,アレンジャーの役割が大きくなる.ヒット作をいくつも作れた有力アレンジャーとなると数は絞られて来る.

Clay Hammond, Shotgun Wedding b/w Dance Little Girl, Duo Disc 109.

Duodisc109 このレコードでアレンジを担当しているのはレイ・シャンクリン.彼はGalaxyレーベルでの仕事で有名だろう.ブルースばかりやっていた訳でもないだろうが,リトル・ジョニー・テイラーのPart Time Loveを始め,Galaxyレーベルではいくつも傑作を作っていた.

Part Time Loveの作者であるクレイ・ハモンドは,そのGalaxyでもレコードを作っていたけれど,まあソウル歌手の方だろう.それでもGalaxyで録音した曲にはブルージーなThere's Gonna Be Some Changesや,シングル盤としては未発表だった素晴らしいブルース曲It's All Over Nowなどがあった.

さてDuo Discレーベルから出たShotgun Weddingだが,クレイ・ハモンドがアナログ盤として出したレコードの中では一番ブルースらしいブルースなのではないか.熱いスロー・ブルースで,もちろんレイ・シャンクリンのアレンジもよく,良作だろう.ただ,熱いことは熱いが,ちょっと頑張り過ぎというか,過剰な感じ.声質からいってももう少し肩の力を抜いた方が良かったかも.Shotgun Weddingってのは,女の父親にショットガンを突き付けられて仕方なくする望まない結婚のこと,だと思った.

Dance Little Girlの方はサム・クックの影が感じられるミディアム・テンポのR&B曲.ソウルというには古いようだが,この手の曲もよく合っている.

1965年頃のレコードで,メンバーとかは良く分からない.アーサー・ライトとか入っているのかも.Shotgun Weddingはハモンド自身の作だが,Dance Little Girlの作者は弟のウォルター・ハモンドら3名の連名になっている.

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2008年6月12日 (木)

これは,同じ?

CDのリイシューで最初聞いたとき,シングル盤とミキシングが違うかな?と思ったけれど,聞き比べたら分からなくなってしまった.

The Newman Family, Kidney Stew b/w Two Ton Mama, Kent 4563.

Kent4563 1972年ごろ出たレコードらしく,CDでは,Funky Blues 1960's - 1970's, P-Vine PCD-3061で復刻されている.両面ともちょいとファンキーで快活なブルースで,なかなかよろしい.CDで聞いたとき,シングル盤と違うような気がしたのはCDの方が音質がいくらかクリアーなせいじゃないか,と今は思っている.

Kidney Stewと言えばエディ・ヴィンソンの代表作だ.このニューマン・ファミリーのKidney Stewは,イントロ部分でエディ・ヴィンソンの使っていたサックスのメロディーをハーモニカで演奏して,さて,聞き馴染んだ歌詞が出てくるはず,と思うと男のヴォーカルがエディ・ヴィンソンのものには無い歌詞で歌い出す.ありゃ,別の曲か,と思っていると,今度は女のヴォーカルがエディ・ヴィンソンの曲の歌詞を(女の立場で歌うので,厳密には歌詞を変えて)歌い出す.つまりエディ・ヴィンソンのものを大幅に換骨奪胎して,自前の歌詞をかなり投入して焼き直した曲ということになる.

Two Ton Mamaの方も男の歌手と女の歌手が交互に歌っている.こっちはまったくのオリジナル,かと思ったら,いやに懐かしい文句も出てくる."Everytime I shake, a skinny woman done lose her home"だってさ.このヴァースの歌詞はトミー・ジョンソンのBig Fat Mama(1928年録音)とほとんど変わらない.ブラントリー&ウィリアムズとかいうカルテットのBig Fat Mammaというの(1927年録音)の第1ヴァースも大体同じような文句だ(よく聞き取れない部分もあるけれど).探せば似たような歌詞がまだ見つかりそうだ.ブルース詩の決まり文句にやたらと長命なものがある,という例だろう.トミー・ジョンソンとニューマン・ファミリーでは,演奏スタイルの方は同一ジャンルというのが無理なほど違っているけれど,歌の文句を見れば共通の祖先から進化したものと分かる.

ニューマン・ファミリーがどんな人達だったのか,手がかりはない.レコードは多分この1枚しかない.男声歌手の方がハーモニカ奏者なのでないかと思う.誰が弾いているのか知らないがワウワウで処理したギターが意外といい感じだ.

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2008年6月 4日 (水)

ディジタル・リイシューとミキシング,その2

CDですぐに聞ける曲だけれど,好きなアーティストと好きなアレンジャー,マイルス・グレイソンの組合せだし,ってことで買ってみたのが次のレコード.

Little Johnny Taylor, It's My Fault Darling b/w There Is Something On Your Mind, Ronn 59.

Ronn59 両面ともLPでもCDでもさんざん聞いた曲だから,わざわざシングル盤で聞かなくてもよいのだけれど,まあ買ったからには,ってことでIt's My Fault Darlingに針を降ろしたのだが...あらら,なんか感じが違う.

LPやCDに入っているIt's My Fault Darlingと,シングル盤に入っているものと,同一の録音だが,ミキシングが明らかに違う.シングル盤の方はボトルネック・ギターの録音レベルがずっと高いのだ.この曲の長く尾を引くボトルネック・ギターは,LPやCDではイントロのところで低い音量で聞こえるが,歌が始まった後はよく聞こえなくなってしまう.ところが,シングル盤の方はこれが終始ねばっこく,くっきりと歌に絡みついてくる.ホーンやキーボードの使い方はいかにもマイルス・グレイソンならではの洗練されたアレンジだが,それに妙にボトルネック・ギターが溶け合っていて,これはシングル盤のミキシングの方が良いように聞こえる.CDには「オリジナル45rpmバージョン」としてこっちも収録してくれたら良かったような気がする.

ビルボードのR&Bチャートで41位に入ったブルース曲It's My Fault Darlingだが,ジョン・リー・フッカーやB・B・キングのIt's My Own Faultと題名は似ているけれど,一応別の曲.こちらは,「昨夜,早くうちに帰ったのは失敗だった.男が居て,一戦交えることになったんだ.奴は俺の倍くらいでかくて,ジョー・ルイスみたいなパンチを...」恐ろしい歌だが,まあ,命があって良かったね.

Ljtpcd23984There Is Something On Your Mindはサニー・ワーナーが歌って,ビッグ・ジェイ・マクニーリー名義でヒットした曲.サニー・ワーナーのオリジナル版はゆったりとしたテンポで歌われていたが,このリトル・ジョニー・テイラーのものはやたらにファンキーなアレンジになっている.テイラーは後にIchibanで同じ曲を再演しているけれど,それはオリジナルに近かった.根拠はないけれど,テイラーは普段はオリジナルに近い感じで歌っていて,得意の持ち歌にしてたのじゃないかなあ,と想像している.このRonn録音で大胆なアレンジにしたのはマイルス・グレイソンのアイディアだと思う.この曲でもシングル盤ではギターの録音レベルが高いようだが,こちらはあまりギターが活躍する曲ではない.

このレコード,CDではP-VineやWestsideでリイシューを簡単に入手できるけれど,こんな発見があるとは意外だった.

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2008年5月29日 (木)

ディジタル・リイシューとミキシング,その1

昔の録音がCDリイシューされるとして,リイシューされたときの音がどうあるべきか,っていうのは自分にはよく分からない.ミックスダウン前の古いテープが出てきて,一番良い音源がソレだ,となったとき,リイシューのためにミキシングし直すのだろうが,そのときはどういう音にするのがよいのか.どうせ昔のレコードより良い音になってしまう(ん?一概には言えないか)のだし,雰囲気がヘンでない限りは,まったく同一のミキシングを再現しなくても良さそうに思う.場合によっては昔モノラルで出たものがステレオになっても構わないのでないか.

Stacy Johnson, Consider Yourself b/w Don't Believe Him, Modern 1001.

Modern1001 凄絶,などと言ってしまいたくなる傑作,Consider Yourself.入手したときは狂喜したものだ.1964年ごろに出たこのシングル盤,もちろんモノラルだ.1999年になって,めでたくWest Coast Mosern Blues 1960's, P-Vine PCD-3060でCD復刻されたが,そっちはステレオ.ステレオつっても左から伴奏,右から歌というもので,どうにも聞きづらい.ステレオというより2トラック・モノラルで,このような場合は左右混ぜてリイシューするのがよいのではないかと思う.

それでも,P-Vineによるマスター・テープ音源からのCDリイシューは,アナログ盤のノイズがないし,盤の痛みを気にしなくてよいし,大変結構なことだ.それにシングル盤は2分40秒しか入っていないのに,CDの方は3分40秒も入っている.シングル盤で「ふぅ,終わった」と思う辺りからCDではさらにもう一回盛り上がるという訳で,この点では絶対CDの方がよい.それより何より,ステイシー・ジョンソンの歌のあまりの迫力が,ミキシングがどうの,なんてことを些細なことのように吹き飛ばしてしまう.

Pcd3060 Don't Beleive Himは熱気のあるR&Bで,こちらも歌の力は大したものだ.

ステイシー・ジョンソンという人だが,この人,息継ぎがフツーの人より長いように聞こえる.思いっきりシャウトしたまま声を長く引っ張って,それで余裕で声をコントロールしているものだから異様な迫力がある.彼の作品で聞けたのはWest Coast Mosern Blues 1960'sに入っている3曲に,アイク・アンド・ティナ・ターナー・レヴューのライヴ盤に入っている1曲,それにピアニストのジョニー・ジョンソンのアルバムで聞けるもの位しかない.これらの録音のどれをどう聞いても歌手としての力が優れていたことは明らかだ.不当に録音が少なかった不運の人,と言わなければならないだろう.

次のWebページはセント・ルイスのブルース・シーンを紹介するサイトのもので,何年か前(10年くらい前かな?)の彼のインタヴューと写真がある.木曜日と土曜日にどこそこで歌ってる,などという話をしているのだが.

Stacy Johnson Interview, http://www.stlblues.net/johnson.html

もう,いいトシだろうし,今後新しい録音で浮上する可能性は少なくなったのだろうか.

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2008年5月23日 (金)

人違いだった

ロサンゼルス録音をもう一つ.

Sherwood Fleming, Peace, Love & Understanding b/w Big City Packer,Kent 4528.

Kent4528 シャーウッド・フレミングのレコードは以前にHighland盤と,C&Fというとこの盤について書いたことがあった.このKent盤は彼の3枚目のシングル.

Peace, Love & Understandingは,ガシャガシャガシャ...という軽快なリズムに乗ったロッキン・ブルースかロックン・ロールか,という曲.声は魅力的だし,かなり良いギター・ソロも聞ける.Highland盤ほど強烈なブルースではないけれど,十分楽しめるナイスなレコードだ.

Big City Packerの方も大体同じような曲調だが,こちらはブルース形式ではなく,なんとなくProud Maryを思い出すようなメロディー.こうなるとロックの方に籍が近いR&Bってところか.

Blues Records 1943-1970は1970年ロサンゼルス録音としている.御本人の歌とギター以外のメンバーは分からない.このセッションの未発表曲とか出てこないかなあ.

このレコード,買ったとき写真付きの袋が付いて来た.こんなカラー写真の袋に入って売っていたとは思わなかった.ご覧の通り,ゴミ回収業のお兄さんの写真が使われている.まさか,これがシャーウッド・フレミングではないと思うんだけど.

Kent4528sleeve結局,シャーウッド・フレミングの我々が聞くことができる録音は,C&F,Highland,Kentという3つの異なるレーベルに1枚ずつ残したシングル盤の裏表,計6曲だけ,ということになるようだ.歌もギターもなかなか格好良いので,あ,ここからが珍談になるんだが,もう少し聞きたい,と思ってネットで検索してみた.そしたら,おおなんと,シャーウッド・フレミングのCD,というものにヒットした.なんだ,CD出てるじゃん,とさっそく取り寄せてみた.で,品物が届いて,そのカバーのアートなイラストを見て,やばい,と思った.こりゃ違うだろって感じ.あの強烈なブルース・シンガーのCDのカバーだったら,やはりゴミ回収業のお兄さんの写真とか,そうゆうのでないといけない.聞いてみたら案の定,そのCDのシャーウッド・フレミングはカナダあたりの女性ポップ歌手だった.いくら聞いてもブルースのブの字もなし.やれやれ同名異人だったか.しかし,名前をいくら見比べても両方ともSherwood Flemingなのに.かたや男のブルース歌手,こなた女のポップ歌手って違い過ぎるだろ.とほほ.


Betsujin28go

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2008年5月16日 (金)

LAブルース・その5

以前コメントで,エリオット・シェイヴァーズの昔の録音を集めたCDが出ている,と教わったことがあったけれど,そのCD,まだ入手できていない.多分,そのCD,このレコードの曲なんかも入っているのだろうね.

Elliott Shavers, Fool, Fool, Fool b/w A Swingin' Party, Magnum 718.

Magnum718 Fool, Fool, Foolはスムースで,リラックスした雰囲気で歌われるミディアム・テンポのウェスト・コースト・ブルース.特別どこが凄いということもなく,形通りの平凡なブルースだ.まあ,ギターの合の手なんかは小気味よくて,ぼーっと聞いているとほっとするとは言える.サックス奏者のシェイヴァーズだが,この曲では歌だけのようだ.

近年,シェイバーズは自分のレーベルからCDやらDVDやらを乱発しているが,このFool, Fool, Foolを再演していたりする(Rock This Mother, Hi Desert 1050).本人比では代表作ということか.

彼のサックスはA Swingin' Partyの方で聞ける.Fool, Fool, Foolと同じ様なテンポのインストゥルメンタル・ブルース.ハンド・クラッピングとパーティー・ノイズっつうのか男女の大騒ぎ声が入る.後者はウルサイから要らないんだけど.一応,陽気でそこそこノリがよい音楽.

このMagnum盤,1964年7月頃,ロサンゼルスで録音されたものだそうだ.メンバーは残念ながら不明.Magnumではもう1枚Magnum 738というのがあったが,いくらかファンキーなリズムのR&Bで,あまりぱっとしないと思っている.

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2008年5月 7日 (水)

LAブルース・その4

UK AceのコンピレーションCD,Diggin' Gold - A Galaxy of West Coast Blues, Ace CDCHD 1017で初めて聞いた歌手だったが,すげえ,と思った.デル・カニンガムという人のことだ.そのCDに入っている2曲,Just WonderingLay Up In Bed And Readの2曲とも,ごわごわした重量感たっぷりの声に大変な魅力があって,何度も聞き返した.1960年代のウェストコースト・ブルースの傑作だ.

こんなのをもっと聞きたい,と思っていて,なんとか入手したのが次のレコード.だけれど,これはちょっと期待外れだった.

Dale Cunningham, Too Young b/w Trust Me, Cash 1067.

Cash1067 The Blues Discography 1943-1970はデイル(Dale)・カニンガムとデル(Del)・カニンガムを区別しているが,声柄からしても同一人物だ.Diggin' Goldのライナーも同一人物としている.

Trust Meは結構甘口のR&Bバラッド.歌い出しのところで何か思い出すようなメロディーのような気がしたが,Georgia On My Mindとか,そんな風に聞こえる.声はGalaxy録音で聞けるあの声で,歌も下手ではないので虚心に聞けば悪くはないのかもしれない.だけどGalaxy録音みたいなブルース曲を聞きたいよなあ.

もう少しブルースっぽいのはToo Youngの方.こちらは,リトル・ウィリー・ジョンの曲で,よくカバーされるFeverをうんとテンポを速く,軽快にしたような曲だ.まあ,声を張り上げると迫力モノだし,こちらも悪いとも言えないが,もっと良い曲を聞きたかった.

実はThe Blues Discography 1943-1970に,このレコードCash 1067は記載されていない.Cashレーベルのもう1枚,Cash 1066の方は載っていて,Too YoungはCash 1066と1067の両方で出ている.同書はCash 1066で出た2曲を1956年ロサンゼルス録音としている.レーベルには両面ともアレンジャーはアーサー・ライトと明記されている.1970年代にZ・Z・ヒルのレコードなどでアレンジをしていたアーサー・ライトだが,意外と古くからアレンジャー業をやっていたことになる.ギターもアーサー・ライト自身と思われ,Too Youngでは彼らしいギター・ソロが聞ける.あまり「アーサー・ライトがギター」とはっきりしているセッションは多くないから,ギタリストとしてのアーサー・ライトの人気は高くないかもしれない.それでも,曲に巧みに表情を付けるライトのギタリストとしての才能はすごかったのじゃないかと思っている.

デル・カニンガム,実力はあったのに,ほんの数枚のレア盤を残しただけで消えてしまったのは残念だ.Galaxyから出たレコードがもう少し売れていたら,と思う.Just WonderingLay Up In Bed And Read,どちらかにもう少し覚えやすいところでもあれば事態は変わっていただろうけれど.

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2008年5月 1日 (木)

LAブルース・その3

ロサンゼルスで1969年に録音されたらしいナイス・ブルース.

Willie Hooks, My Heart Is Mending b/w A Little More Time, Soul World 105.

Soulworld105 ウィリー・フックスというのは歌手兼ギタリスト.1969年に上のレコードを含めSoul Worldレーベルから4枚シングル盤を出して,多分同じ頃だと思うけれどベン・ロバーツという人の伴奏などもしている.それっきり録音が途絶えた,と思っていたら2000年になってCD,Friday The 13th, Julet 32920を出している.Soul Worldのシングル盤からJuletのCDが出るまでの30年間,ずっとウェストコーストで活動していたようだが,あまり名前を見たような記憶がない.

My Heart Is Mendingはボビー・ブランドを思い起こさせる重厚なソウル・ブルース.曲調もブランドの曲にありそうな感じだが,ウィリー・フックスの声質もいくらかブランド似.無論ボビー・ブランドほどの迫力や節回しのスムースさはないけれど,武骨なところにそれなりの魅力がある.伴奏の熱気もあり,十分良い出来だと思う.男声コーラスがコール・アンド・レスポンス関係を作るのも悪くない.本人のギター・ソロもあるが,これは特にどうということもない.

A Little More Timeはちょっとけだるい感じのあるファンキーなブルース.こちらはアルバート・キングにありそうな曲調か.悪くはないけれど,My Heart Is Mendingの方がフックスの声にあっているかな.

前述のFriday The 13thというCD,未入手なのだけれど,そのCDで,このシングル盤の両面,2曲とも再演している.本人としても思い入れのある自信作だったのでないか.

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2008年4月23日 (水)

LAブルース・その2

Comboというレーベルの録音はUK Aceで結構リイシューされていたが,これなんかはどうだっただろう.

T.L. Clemons and Combo, My Big Mistake b/w Let's Jerk, Combo 177.

Combo177 The Blues Discography 1943-1970にT・L・クレモンズのレコードは3枚,6曲が記載されている.録音は1961年,1962年,1966年に行っている.歌手兼ピアニストだそうだ.Aceのヴォーカル・グループもののCDでリイシューされている曲なんかもある.

上のレコードは1966年にロサンゼルスで録音されたものだそうだが,その時代のウェスト・コースト・ブルースとしては,異色作.盤に針を降ろし,My Big Mistakeの音が出てきたとき,驚いて,思わずにやついた.どんな音楽かというと,ごくいなたいギターとそれにからむ生ハープのイントロで始まる,1950年代前半の南部あたりの録音か,と思うようなダウンホーム・ブルースなのだ.T・L・クレモンズもいい感じで歌っている.欲を言えば,クレモンズの歌はそれなりに味わいはあるけれど,ちょっと線が細くて,上手いとも言えないとか,ギターやハーモニカにもっと頑張って欲しかったとか,望みたいことはある.結局,二流ブルースマンによる二流の作品には違いないのだけれど,こんな二流のブルースをとろとろと聞いているのも乙なものだ.

Let's Jerkという曲名の「ジャーク」は,当時の踊りから来ているのかと思われる.だけど,全然1960年代半ばのダンス音楽とは思えない.こちらも南部臭のあるダウンホームなブルースで,My Big Mistakeに比べりゃテンポが速い,という曲.

The Blues Discograpy 1943-1970にはメンバーも書いてあって,クレモンズの歌とピアノ,ハーモニカは不明(addedというから後でオーバーダブしたものか),Shelton Glennって人がギター,Ben Littleって人がドラムだという.別に名前を知っている人が居る訳でもなく,どこでどう生け捕って来た人達なんだか訳が分からない.

こんなのを過大評価してはいけないだろうけれど,ちょっと嬉しいレコードだと思っている.

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2008年4月17日 (木)

LAブルース・その1

女のブルース歌手も無名人が色々いるもんだ,と,このところメアリー・アン・マイルス,アル・アンド・ネッティー,エラ・トーマスなんかのことを書きながら思っている.

Faye Ross, Don't Just Stand There Part 1 b/w Don't Just Stand There Part 2, Trevor 102.

Trevor102 フェイ・ロスって誰だか分からない.The Blues Discography 1943-1970を見ても,The R&B Indiesを見てもレコードはTrevorレーベルのこの1枚ともう1枚Roundというレーベルのものしか出ていない.この人,なんでこんなにレコード少ないの?素晴らしい出来だと思うのだけれど.

このフェイ・ロスという人だけれど,似たタイプというと,そうだなあ,ブレンダ・ジョージあたりが似てるか.と言ってもブレンダ・ジョージだって録音少ないし,CDで聞ける曲はさらに少ないからなあ.ブレンダ・ジョージに似てるといってもピンとくる人は少ないだろう.非常におおざっぱに言えば女のリトル・ジョニー・テイラーみたいなもの.ゴスペルっ気の強いブルース・シャウターだ.

2パートに渡るスロー・ゴスペル・ブルースのDon't Just Stand Thereだが,重量感のあるフェイ・ロスの歌に引き込まれる.Part 1の中盤の畳み掛けてくる歌いっぷりなんかは「いやでも盛り上がる」というところ.バンドの伴奏も良く,特に落ち着きと厚みのあるホーン・アレンジが秀逸だと思う.

前に書いたクライ・ベイビー・カーティスのレコードと同じレーベル,同じタイトルで勿論同じ曲なのだけれど,アレンジがまるで違うので,ちょっと聞くと別の曲のようにも聞こえる.The Blues Discography 1943-1970によれば1964年,ロサンゼルスで録音されたもので,伴奏者のメンバーは分からない.レーベルを見るとプロデューサーはKent HarrisとJesse Jamesとなっていて,後者はあのディープ・ソウル歌手なのかな.

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2008年4月10日 (木)

アンサー・ソング,でもなかった

タイトルにPart Time Loveと入っているので,あの曲のアンサー・ソングかと思って聞いてみたら,そうでもないようで.

Bennie McCain, I Don't Want No Part Time Love b/w You're On My Mind, Lu Pine 126.

Lupine126 ベニー・マッケインという人は,The Blues Discography 1943-1970に載っているのだけれど,聞いた感じではブルース歌手というよりは,最初期のソウル歌手,またはプリ・ソウル歌手とゆー感じだ.Lu Pineレーベルの他の曲も聞けたけれど,やはり同じ様な印象だった.上手くことが運んでいればレーベルメイトだったファルコンズのウィルソン・ピケットみたいになれた人じゃないか.

Part Time Loveのアンサー・ソングだったら,Part Time Loveのメロディーや曲の展開をなぞるのだろうが,I Don't Want No Part Time Loveは別にそーゆー曲ではない.歌詞も別段Part Time Loveと関係ないようだが,それでもPart Time Loveのヒットをヒントにしたか,意識したのだとは思う.ブルースのAAB形式ではなく,マイナー・キーのスロー・R&Bバラッドで,もう少しでブルージー・ソウル,という曲.かなり派手にブルース・ギターが合の手を入れているので,雰囲気的にはブルースと言っても,まあ大体オッケーだろう.ベニー・マッケインの歌いっぷりはなかなか熱いし,十分聞けるんでないの.

You're On My Mindはミディアム・テンポのR&B.ソウル・ミュージックというには古いかもしれないが,もう一歩か二歩でソウル,というところ.

1964年ごろに出たレコードのようだ.メンバーは分からないらしいが,I Don't Want No Part Time Loveで聞ける,びやびやしたギターはロバート・ワードの可能性もありそうだ.

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2008年4月 3日 (木)

アンサー・ソングズ,その5

Don't Freeze On Me - Independent Womens BluesというCDに入っているアンサー・ソングをもう1つ.

Ella Thomas, I'm Your Part Time Love b/w Ain't That The Truth, Flag 101/102.

Flag101 I'm Your Part Time Loveはもちろんリトル・ジョニー・テイラーのPart Time Loveに対するアンサー・ソング.何回か前に書いたミティ・コリアーのものと同じ曲だ.ホーン・アレンジなどはオリジナルのPart Time Loveに大体倣ったものになっている.エラ・トーマスはウェストコーストで何枚かレコードを出している女性ブルース歌手だけれど,そこそこパンチはあるものの,それが軽いパンチで,なんかスケールが小さいような気がする.

レーベルのFlagはアル・キングが持っていたレーベルで,アル・キング自身もレコードを出している.I'm Your Part Time Loveの作者はA・スミスとクレイ・ハモンドとなっていて,A・スミスはレーベル・オウナーのアル・キングことアルヴィン・スミスだと思う.だから,ミティ・コリアーのChess盤の方はこのFlag盤のカバーだろう.Chessはときどきこんなことがあったのじゃないか.

タイニー・パウエルがウェスト・コーストの小レーベルからMy Time After Whileをローカル・ヒットさせたとき,Chessはその権利のリースを求めたが,オウナーのボブ・ゲディンズは断った,ということがあったらしい.そしたら,Chessはタイニー・パウエルのMy Time After Whileを再発するのをあきらめる代わりに,自レーベルのバディ・ガイにその曲をパウエルそっくりに録音させてレコードにしてしまった(Djedje & Meadows, California Soul, University California Pressに出てた話).これと同じように,Chessはエラ・トーマスのI'm Your Part Time Loveも出そうとして失敗したのじゃないか.それで仕方なく自レーベルのミティ・コリアーに同じ歌を録音させ,運良くヒットしたのではないかと思う.証拠のない推量だけれど.

Ain't That The TruthHoochie Coochie Manをうんと高速化したような,割と速いテンポのブルース曲で,こちらもまずまず.

ギターは評論家筋の評価が高かったギタリスト,ジョニー・ハーツマンが弾いている.昔,日本にも来たし,Alligatorからアルバムも出していたから,エラ・トーマスなんかよりずっと有名だろう.だけど,ハーツマンが大好きかと言われると,そうでもないなあ.ボブ・ゲディンズとかによく起用されたし,以前はよく絶賛されていたから優秀なのだろう.しかし,率直に言って,I'm Your Part Time Loveで聞けるハーツマンのギターが悪いということはないけれど,Part Time Loveで聞けるアーサー・ライトのギターの方がずっと好きと言うか,意味のあるギターを聞かせているように思う.それでも,このエラ・トーマスのレコード,ハーツマンの癖のあるギターがかなり聞けるから彼の支持者には満足できる盤だろう.

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2008年3月25日 (火)

アンサー・ソングズ,その4

前回,メアリー・アン・マイルスの曲が入っているということで,Don't Freeze On Me - Independent Womens Blues, El Cerrito ECR01005というCDの話を出した.副題のとおり,女性ブルース歌手のCDで,1960年代に小レーベルからシングル盤で出たものを集めている.地域的な統一性はなく,割とウェストコーストのものが多い一方で,イーストコーストの人と思われるベティ・ジェイムズなども入っている.誰かが適当に手持ちのドーナツ盤で女が歌っているのを集めて1枚のCDにした,というところか.

このCDにアンサー・ソングらしい曲がいくつか入っていて,これもその一つ.

Al & Nettie and Nat Hendrix Band, Now You Know Part 1 b/w Now You Know Part 2, Art-Tone 829.

Arttone829 アルとネッティーというコンビの,アルはアルヴィン・スミスことアル・キングだそうだ.ネッティーというのは誰なのか分からない.アルとネッティーとは言うけれど,アル・キングの声はあまり聞こえず,終始ネッティーのの方が主役になっている.

Now You Knowというのはジミー・マクラクリンの名作Just Got To Knowのアンサー・ソング.Just Got To Knowのメロディーとリフで,オリジナルが「I want to know, I want to know, I just got to know」というところを,「You want to know, you want to kno, now you know」と歌う替え歌になっている.ネッティーは特に強力な歌手というわけではないが,ハスキーな声はいい感じ.元歌が良いし,ナイス.

2パートに分かれているNow You Knowだが,パート1はギターがきめ細かく歌に応答し,パート2はよりホーンが盛り上げる,というように微妙にアレンジを変えている.El CerritoのCDに入っているのはパート1の方だけで,パート2は入っていない.パート1の方はGeddison's 6159という番号でも出ていて,CDはGeddison's盤から音をとっているかもしれない.

The Blues Discography 1943-1970によれば1962年オークランドで録音されたもので,メンバーは次のとおり.

  Alvin Smith and "Nettie", Vo.;
  unknowns, saxes;
  Bob Geddins Jr., org.;
  Jimmy McCracklin, p;
  Johnny Heartsman, gtr.;
  unknown, b.;
  unknown, d.

ギターのジョニー・ハーツマンを始めジミー・マクラクリンの元歌と大体同じようなメンバーなのではないか.Art-Toneはウェストコーストの大プロデューサー,ボブ・ゲディンズがジミー・マクラクリンと共同で持っていたレーベルで,Just Got To Knowもこのレーベルから出ていた.

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2008年3月18日 (火)

アンサー・ソングズ,その3

メアリー・アン・マイルス,なんていっても知名度はほとんど絶無か.ウェストコーストの女性ブルース歌手で1960年代にわずかなレコードを残している.その,ほんの少しの成果の中に,1960年代ウェストコースト・ブルースの逸品があった.

Mary Ann Miles and Zeke Strong Band, I'll Be Gone (Answer To Don't Answer To The Door) Part I b/w I'll Be Gone (Answer To Don't Answer To The Door) Part II, Celeste 201.

Celeste201 副題にある通り,これはDon't Answer The Doorに対するアンサー・ソングだ.Don't Answer The Doorは,まずジミー・ジョンソンのグループが録音し,ビルボードR&Bチャートで1965年2月に16位に達するヒットになった.その後,B・B・キングがカバーして,こちらはビルボードR&Bチャートで1966年10月に2位まで上り詰める大ヒットになっている.

という訳で,Don't Answer The Doorにはジミー・ジョンソンのオリジナル版と,B・B・キングのカバー版と,2つの人気バージョンがあったことになる.メアリー・アン・マイルスのI'll Be Goneが,どちらのDon't Answer The Doorに対してアンサーを返しているかというと,ジミー・ジョンソンのオリジナル版の方.ギターのイントロをはじめ,アレンジ全体がジミー・ジョンソンのものに基づいていることでそれが分かる.ジミー・ジョンソンのバージョンで使われている男声コーラスを女性コーラスに置き換えるところなどは徹底したアンサーぶりだ.Don't Answer The Doorが「お前の妹はすごくおしゃべりだから来て欲しくない」と言えば,I'll Be Goneの方は「私の妹,めったにウチには来ない」と答える,そんな内容だ.

メアリー・アン・マイルスは,けだるい伴奏にのって,このアンサー・ソングを澄んだ,深い声で力強く歌い進めていく.素晴らしい歌唱で,音楽に引き込まれてしまう.ハンク・アレクサンダーが歌ったジミー・ジョンソンのオリジナル版をしのぐか,というような出来だ.

The Blues Discographyは1966年,ロサンゼルス録音としている.アレンジャーはCelesteレーベルのオウナーでもあるジーク・ストロングで,ジミー・ジョンソンのパクリとはいえ,手堅い伴奏を提供している.彼がアレンジしたものでは以前クライ・ベイビー・カーティスのレコードのことを書いたことがあった.ジーク・ストロングは,自己名義のレコードもあるようだが,ウェストコースト・ブルースのアレンジャーとして優秀な人のようだ.

メアリー・アン・マイルスのレコードは同じCelesteレーベルでR&Bバラッド曲が1曲に,レイ・エイジーとのデュエットがやはりCelesteレーベルに1枚あるだけ,のようだ.レイ・エイジーとのデュエットはDon't Freeze On Me - Independent Womens Blues, El Cerrito ECR01005というCDで聞ける.

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2008年3月11日 (火)

アンサー・ソングズ,その2

DVD化された1960年代のTV番組The !!!! Beatの最終回で,オーティス・レディングに"The greatest blues singer!"と紹介されて出てくるミティ・コリアーだけれど,あまりブルース歌手というイメージはない.それでも,このレコードでは両面ともブルースを歌っている.

Mitty Collier, I'm Your Part Time Love b/w Don't You Forget It, Chess 1871.

Chess1871 I'm Your Part Time Loveはもちろんリトル・ジョニー・テイラーのPart Time Loveに対するアンサー・ソング.Part Time Loveのメロディーで,リトル・ジョニー・テイラーが「パート・タイム・ラヴを見付けなきゃ」と歌うのに対し,こちらは「あなたはパート・タイム・ラヴなんて探さなくてよいの」と返す.リトル・ジョニー・テイラーのオリジナル曲ほどの異様な爆発力はないけれど,さすがに力のある歌手で,熱っぽく盛り上げている.伴奏の方は,ホーンのリフなんかは完全にリトル・ジョニー・テイラーのものをパクっているけれど,1960年代のチェスらしい充実した音になっている.1963年10月にビルボードのR&Bチャートで最高位で20位に達していて,ミティ・コリアーとしては最初の大ヒットになった作品だ.

この曲,西海岸の女性歌手エラ・トーマスも録音していて,そっちがオリジナルじゃないかと思う.まあ,どちらかがアンサー・ソングのカバー・バージョンだ.トーマスのバージョンについてはまたいずれ書くかもしれない.作者はA. SmithとC. Hammondと記されていて,スミスの方はアルヴィン・スミスことアル・キングじゃないかと思う.

Don't You Forget Itはミディアム・テンポの8小節ブルース.作者はポール・ゲイトゥンとのことで,そう言えばニューオーリンズっぽくも聞こえる.こちらもナイス.

録音時期は1963年だろう.ビリー・デイヴィスのプロデュースしたものだそうで,バンドのメンバーは完全には分からないが,ジェラルド・シムズのギター,ルイス・サターフィールドのベースなどが入っているそうだ.ドラムはモーリス・ホワイトか.

こんなブルース曲が最初のヒットになったのだから,オーティス・レディングは「ブルース・シンガー!」と呼ぶのもそれなりの訳があった,というお話で.

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2008年3月 3日 (月)

アンサー・ソングズ,その1

リトル・フランキー・リーのFull Time Loverのことを書くのは2回目.以前書いたときはPeacockレーベルの盤だった.今度のはレーベルが違う.

Little Frankie Lee & The Saxtons, Full Time Lover b/w Don't Make Me Cry, Great Scott 0009.

The Blues Discography 1943-1970には,フランキー・リーのFull Time LoverはGreat Scott 0009とPeacock 1929という2つのレーベル/番号で出たように書かれている.それで,かっこ付きの但し書きとして「Peacock 1929はGreat Scottの曲を再録音したものかもしれない」なんて書いてある.「かもしれない(may be a re-recording)」とは頼りない書き方だ.誰かが聞き比べれば結論ははっきりするんじゃないの,という訳で,Great Scott盤,(自分にしちゃ異例のお値段だったけど)買ってみた.

Gscot1009 針を降ろしてみたら,すぐに分かった.Great Scott盤はPeacock盤とは全然別録音だ.間違いなくPeacock盤はGreat Scott盤と同じ曲を再録音したものだろう.

2つの録音の違うところはいくつもある.まず,Peacock盤のFull Time Loverは威勢の良いサックスのイントロで始まるのに,このGreat Scott盤はどろどろとしたオルガンのイントロで始まるから,最初のところですぐに「違う」と分かる.Peacock盤は分厚いホーンが強烈だが,Great Scott盤ではホーン陣はやや抑え気味でアレンジもかなり異なる.Great Scott盤で大きくフィーチャーされるオルガンは,Peacock盤では入っているような気もする,という程度で目立たない.もっとも,どちらのバージョンが出来が良い,ということはあまりなくて,どっちもどっち,という感じではある.ということで,ディスコグラフィーは次のように書き換えなければいけない.

                                  Houston, 1962
GS-5     Full Time Lover          Great Scott 1009
GS-6     Don't Make Me Cry        Great Scott 1009

                                  Houston, c.1963
UV-1124  Full Time Lover          Peacock 1929
UV-1125  Don't Make Me Cry        Peacock 1929

上に書いたGreat Scott盤の録音年を「1962年」としたのは,フランキー・リー来日時のインタヴュー記事(Black Music Review誌No.87)で彼自身が言っていることに従ったものだ.それが正しいとすると(正しいかどうか知らないけれど),1963年に録音されたリトル・ジョニー・テイラーの大作Part Time Loveと,このFull Time Loverのどちらがアンサー・ソングなのか,ちょっと分からなくなる.メロディーや歌詞内容からして,一方が他方の替え歌なのは明白だ.ただ,Full Time Loverの方では,「彼女は以前パート・タイム・ラヴだったけれど,いまはフル・タイム・ラヴァーだ」と歌っているところを見ると,やはりPart Time Loveが先にあって,その続編みたいなアンサー・ソングがFull Time Loverなのだと思う.フランキー・リーの言っている録音時期は妙だけれど,リトル・ジョニー・テイラーや作者のクレイ・ハモンドがPart Time Loveを1963年以前にステージで歌っていて,それをフランキー・リーやその関係者がどこかで聞いて,本家より先にアンサー・ソングを録音しちゃった,なんてこともあり得なくはない,でしょ?

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2008年2月26日 (火)

T for Texas, T for Tennessee Part 2

ラティモア・ブラウンのDuchess盤でギターを弾いている,とされているアーサー・アダムズは,今はもっぱらブルース・ギタリスト,という感じなのかもしれないが,一頃はまるっきりソウル歌手だったと思う.1960年代のシングル盤作品の全貌はよく分からないのだけれど,リイシューされたものと入手できたものを総合すると,ときどき好ブルースがあるR&B/ソウル・シンガー,というくらいの位置付けの人か.

ラティモア・ブラウンと同じようにアーサー・アダムズもダラスのDuchessから3枚シングル盤を出しているそうだが,どうにか入手できたのは次の1枚.

Mighty Men, You Too Much b/w No Way Out, Duchess 1006.

Duchess1006 アーサー・アダムズの非常に詳しい経歴はBlind Pigレーベルのサイトで読めるけれど.これを読むと彼もテネシー州とテキサス州の両方に縁があった人だと分かる.テネシー生まれで1959年まではテネシー州ナッシュヴィルで活動していたが,その後テキサス州ダラスへ移って何年間かそこに居たようだ.前回のラティモア・ブラウンのレコードは1961年か62年の録音だそうだけれど,だとするとアダムズはダラスにいたことになる.あれがナッシュヴィル録音だとすればはるばるテキサスからテネシーへギター弾きに行ったのか.それともラティモア・ブラウンの方がテキサスまで来たのか.ダラスのテレビ番組The !!!! Beatにブラウンも出てたから,ブラウンはレコーディングで金になれば遠くてもテキサスあたりまで来たかもしれない.もちろんアダムズがギターを弾いたといのうが与太で,ギターは別人という可能性だってあるだろう.

さて,Mighty "Men"って複数形だからバンドの名前かもしれないけれど,これがアーサー・K・アダムズことアーサー・アダムズのレコード.両面ともインストゥルメンタルのブルースになっている.You Too MuchGood Morning Schoolgirlっぽいメロディーを持った速めのテンポの曲.ベースのイントロから意表を突くように歯切れ良くアダムズのギターが切り込んで来たりして,割と作りは凝っている.凝ってはいるけれど,もうちょっと盛り上がりが欲しいかも.後半はなかなか達者な生ハーモニカがソロをとるが,ジェイムズ・ステュワートという人が吹いている.

No Way Outはそのステュワートのハーモニカが中心となる曲.ダウンホームで和む,というところ.アダムズは伴奏に徹している.

このレコード,アーサー・アダムズのギターの上手いところは聞けて,悪くはないけれど,彼は歌の力も相当に持っているから歌無しというのはちょっと物足りない.The Blues Discography 1943-1970は1962年,ナッシュヴィルまたはダラスの録音,としている.

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2008年2月18日 (月)

T for Texas, T for Tennessee Part 1

前回はテキサス出身者がナッシュヴィルのレーベルから出したレコードだったが,今度はナッシュヴィルの歌手がテキサスのレーベルから出したレコード.

Lattimore Brown, What Have I Done Wrong b/w Only I Can Tell The Story, Duchess 1007.

Duchess1007 ラティモア・ブラウンはどう見たってブルース歌手というよりもソウル歌手の方だろうとは思うけれど,初期の作品はThe Blues Discography 1943-1970に載っている.レーベルのDuchessはテキサス州ダラスにあったようだ.テキサス州ダラスとラティモア・ブラウンが拠点としたテネシー州ナッシュヴィルでは距離的に相当遠いが,わざわざラティモア・ブラウンがテキサスまで出向いて録音したものかどうか.と,思っていたらラティモア・ブラウンがDuchessから出したシングル3枚の6曲,The Rich Records Story(SPV 49742 CD)というCDでリイシューされた.どうもナッシュヴィルのRichレーベルの録音としてリイシューされたようだ.そのCDを入手していないので,本当にDuchess盤と同じなのかどうか知らないのだけれど,Richレーベルのナッシュヴィル録音をテキサスのDuchessが買ったのかもしれない.

さて,ラティモア・ブラウンのDuchess盤,一応ひと通り聞いたけれど,What Have I Done Wrongなんかは一番ブルースらしいブルースではないかな.軽快なアップテンポのブルースで,まあ凄いということはないが,割といい感じじゃないの.結構骨太なブルース・ギターが絡む.

Only I Can Tell The StorySt. James Infirmaryのメロディーを持ったバラッド曲.ボビー・ブランドのSt. James Infirmaryみたいで,結構ブルージー.

The Blues Discography 1943-1970は1961年または1962年ナッシュヴィル録音で,ギターはアーサー・アダムズだとしている.両面とも,ソウル歌手が,ソウル・ミュージックの形式が確立する以前でちょうど良い楽曲がないものだから,ブルースっぽいのを歌った,というようでもある.

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2008年2月12日 (火)

ナッシュヴィル・ブルースその6

歌手でハーピストのユージン・“テクサス”・レイという人は,名前の通りテキサス州で生まれて,1993年にテキサス州で亡くなっている.という訳でテキサス出身ではあるけれど,1960年頃にはニューヨークでLaurie(Altonでジーン・フランクリン名義で出たものの再発),Kaydeeといったレーベルでシングル盤を出していた.この人は1981年にはテネシー州ナッシュヴィルのレーベルからレコードを出している.

Eugine "Texas" Ray, Hey Mr. Landload b/w Grits, Nashville Sound Records 1000.

Nashville1000 ユージン・“テクサス”・レイに,この1980年代のシングル盤と1960年ごろの録音以外に何かレコードがあるのかどうか,よく知らない.ひょっとするとLPとかもあるのかもしれない.

このレコードを手に入れたのは,今から25年前,1983年のことだ.そのとき,会社の研修の関係で大阪にいた.上方に来たのだから,こっちの名所旧跡を見て歩かなければ,ということで堺市のサム'ズレコードショップへ出かけて,で,買ったレコードの一つがコレだった.1981年に出たというのはThe R&B Indiesに出ていた情報なのだが,入手した当時としてはほぼ最新のブルースだったことになる.

音楽の内容の方は,1980年代の新録ブルースとは思えないようなダウンホームなブルースだ.Hey Mr. Landlordは,そこそこ重みのあるウォーキング・ベースにのって,ユージン・レイが歌い,ハーモニカを吹くブルース曲.おおざっぱに言えば1950年代くらいのように聞こえるスタイルだ.伴奏はギター,ピアノ,ベース,ドラムという編成で,特にファズを使ったギターなんかはいかにも1980年代のブルースという音だから,ちょっとレイの持ち味よりは新しすぎて重みに欠ける.それでも,ユージン・レイ御本人は昔ながらのスタイルで歌い,ハーモニカを吹いていて,なかなか良い味を出していると思う.

Gritsというのはレイのハーモニカをフィーチャーしたインストゥルメンタル曲.リトル・ウォルターのインストゥルメンタルをゆるくして,南部っぽくしたような感じか.

レーベルはその名前のとおり,住所がナッシュヴィルになっている.この1枚位しかレコードのないローカル・レーベルのようだ.

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2008年2月 4日 (月)

ナッシュヴィル・ブルースその5

リリアン・オフィットのMiss You Soはヒット曲だから,色々リイシューはあるだろう.そのシングル盤はこれ.

Lillian Offitt, Miss You So b/w If You Only Knew, Excello 2104.

Excello2104 ビルボードのR&Bチャートで8位までいったMiss You Soだが,どうしてそんなに売れたのだろうか?軽快なブルース曲で,佳作ではある.ここで使われたリフなんかは1957年のブルースとしては新鮮で,カッコ良く聞こえただろうと思うし,みずみずしいオフィットの歌が受けたということもあるだろう.でもブルース史上に輝く大傑作ということもないんじゃないか.

If You Only Knewはオフィット自身の作ったバラッド曲だけれど,楽曲,歌ともに弱いというか,やたらにポップでR&Bとしての魅力に欠けるように思う.

Miss You Soの作者も前回,前々回のレコード同様モーガン・バブとなっている.ナッシュヴィルのバンドリーダー,テッド・ジャレットの本(Ted Jarrett, Ruth White, You Can Make It If You Try, Hillsboro Press)が出ているというので,オーダーして,それが先日届いたのだけれど(いつ読めるかな),その本の中にもモーガン・バブの名前は出てくる.バブが率いていたゴスペル・グループ,レイディオ・フォーのロード・マネージャーをジャレットがしていた,とかそんな話だ.バブは地元ラジオ局にチーフ・アナウンサーとしても雇われていて,しまいには自分でラジオ局まで持ったというし,ナッシュヴィルの芸能界では実力者だったようだ.

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2008年1月27日 (日)

ナッシュヴィル・ブルースその4

Excelloで3枚のレコードを出したリリアン・オフィットだけれど,Excelloでの3枚目がこれ.

Lillian Offitt, Can't Go On b/w Darlin' Please Don't Change, Excello 2139.

Excello2139 Can't Go Onはけだるい感じのスロー・ブルース.特に凄いというわけではないけれど,こーゆーとろとろとしたブルースをのんびり聞くのも乙なものだ.終始男声コーラスが「う~~~わ~~~」とコーラスをつけていて,ちょっとヴォーカル・グループの歌うブルースみたいな感じでもあり,これに甘くギターが絡む,という作りになっている.ナイス.

Darlin' Please Don't Changeはかなーりポップな,カントリー味もあるかもしれないようなバラッド.同じ様に男声コーラスがつく.あまりブルース的な興味はないが,たまにはこんなのもいいでしょ.

前回のレコードと同じく,曲の作者は両面ともモーガン・バブのようだ.The Blues Discography 1943-1970によれば1枚目,2枚目のシングル盤とは別のセッションで,1958年ナッシュヴィル録音とされている.

そんなわけで,リリアン・オフィット,Excello録音はヒットしたMiss You So以外の2枚も結構良いので一聴の価値はある.

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2008年1月20日 (日)

ナッシュヴィル・ブルースその3

Excelloレーベルは,ルイジアナ州のジェイ・ミラーが録音したルイジアナの歌手のレコードを多く出していて,それで有名なのはもちろんだ.でも,所在地はテネシー州ナッシュヴィルで,地元のアーティストの録音も多くて,アーサー・ガンターとか,ロスコー・シェルトンとか,ナッシュビルの歌手でもExcello音源のリイシュー・アルバムが作られた人がある.アルバムを作れるほどの曲数はないが,リリアン・オフィットなんてのもExcelloでヒットを飛ばしたナッシュヴィルの歌手だった.

Lillian Offitt, Just Lonsome! That's All b/w Darlin' I'll Forgive You, Excello 2124.

Excello2124 リリアン・オフィットは1938年11月4日テネシー州ナッシュヴィル生まれ,と公式にはされているが,アール・フッカーの伝記本を見ると,「1958年シカゴに来たとき25歳」とか書いてあって何だか歳が合わない.サバをよんでいて1933年生まれというのが本当かもしれない.Excelloからは3枚のシングル盤を出しているが,最初の1枚,Miss You Soが大ヒット,1957年7月にはビルボードのR&Bチャートで8位にまでなっている.その後シカゴへ移り,アール・フッカーのギターをバックに何枚かレコードを出したのはよく知られているだろう.シカゴ録音ではWill My Man Be Home Tonightがローカル・ヒットしたそうだ.

リリアン・オフィットは,女性ブルース歌手の中ではさほど声量があるタイプでなくて,物理的な迫力には欠けるけれど,節回しは巧みでなかなか味がある.今回紹介するレコードはMiss You Soに次ぐExcelloでの2枚目.

Just Lonsome! That's Allはのんびりとした感じの,ゆっくり目のミディアム・テンポのブルース曲.このほんわかした雰囲気はかなーりいいんじゃないの.良く分からないが,成分分析したらカントリー・ミュージックが何%か出てきそうな感じもする.

Darlin' I'll Forgive YouMiss You Soと大体同じ様なブルース曲.軽快なリフに乗って歌われていて快調.

どちらの曲もMiss You Soと同じセッション,1957年ナッシュヴィル録音とされている.曲の作者は両面ともM. Babbとなっているが,これはモーガン・バブというナッシュヴィルのゴスペル界の人のようだ.

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2008年1月13日 (日)

ナッシュヴィル・ブルースその2

サム・ベイカーはAthensレーベルでもう1枚レコードを出している.

Sam Baker, Best Of Luck To You b/w The Bump, Athens 213.

Athens213 これが両面とも非常に良い出来だ.Best Of Luck To Youはブルージーなソウル・バラッド.ベイカーは巧みな節回しで,張りつめた糸が一瞬も緩まないような歌唱を聞かせている.彼にもっとも合うタイプの曲なのではないか.

The Bumpは曲名からしてダンス・ナンバーで,実際その通りなのだが,ほぼブルース形式,というかアップテンポのブルースと言ってもよさそうな曲.バンドも含めたノリの良さもあるが,歌の力はやはり非常に優れているように思う.

前回,テレビ番組The !!!! Beatに出ていたスキッピー・ブルックスがセッションに参加している,という話を書いたが,The !!!! Beatに出ていた人でもう1人,大事な人がこのレコードに関与していた.というのはAthensレーベルのオウナーはホス・アレン,ボブ・ジェニングズ,ブルース・ハーパー,となっていて,AthensはThe !!!! Beatの司会者(ホス・アレン)のレーベルだったということになる.だったらサム・ベイカーもThe !!!! Beatに出してもらえばよかったのに.他のナッシュヴィル勢は結構出てんだから.

ホス・アレンが持っていたもう1つのレーベルはHermitageだった.かなり以前にNight TrainレーベルがHermitage/Athensレーベルの作品をBest Of HermitageというタイトルでCD化していて,前回紹介したSweet Little AngelTossin' And Turnin'はそのCDに入っていたようだ.今回のBest Of Luck To YouThe Bumpは,そのCDには入っていない.まあ,何か別のCDで出ているかもしれないのだけれど.

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2008年1月 7日 (月)

ナッシュヴィル・ブルース・その1

テネシー州ナッシュヴィルのブルースやらR&Bやらは随分色々CDが出たような気がする.これはCDで出ていたっけ?

Sam Baker, Sweet Little Angel b/w Tossin' and Turnin', Athens 212.

Athens212 サム・ベイカーはSound Stage 7で沢山レコードを出している,どちらかと言えばサザン・ソウル・シンガーか.ブルースの曲もあって,HermitageのStormin' And Rainin' BluesがP-VineでCD化されたりしていた.そう言えばブルース・アンド・ソウル・レコーズ誌の最新号(No.79)を見ると,この人がCopaレーベルに録音したブルース曲がついにCD化!なんて話題もある.

Sweet Little Angelはもちろん昔からあるアレ.サム・ベイカー,高い声で粘っこくスロー・ブルースを歌っている.いかにもゴスペルが下地にあるブルース歌手という感じ.特に終盤なかなか盛り上げている.

Tossin' And Turnin'は対称的に元気いっぱいの陽気なジャンプR&B.ブルース曲のSweet Little Angelが悪い訳ではないけれど,ちょっと手垢のついた楽曲なので,このTossin' And Turnin'の方が聞き物かも.

録音は1965年,ナッシュヴィルで行われた,とされている.このセッションのパースネルがThe Blues Discography 1943-1970に載っているので,書き写しておこう.

    Sam Baker, Vocal;
    Mal McMillon, ts;
    Johnny Green, ts/bs;
    Skippy Brooks, p;
    Jimi Hendrix, gtr;
    George Yates, gtr;
    James Watkins, b;
    Freeman Brown, d.

ピアノのスキッピー・ブルックスはExcelloレーベルのナッシュヴィル録音(アーサー・ガンターとか)で割と名前を見る.DVD化されたテレビ番組The !!!! Beatでもいつもピアノの前に座っていた.

不思議にもギター燃やしちゃう人なぞも参加している.このセッションが行われたとき,ヘンドリックスは出世前だったかもしれないが,随分ローカルなセッションに顔を出したものだ.違うかもしれないが,Sweet Little Angelで聞ける少しファズの掛かったギターを弾いているのが彼だろうか?だとすれば,案外フツーのブルース・ギターを弾いている.Tossin' And Turnin'もギター・ソロが入るけれど,これはもう一人の人かな.

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2007年12月29日 (土)

このあたりでチェス・その13

古今東西,誰の何の曲が一番好きか,なんて誰かに聞かれたら,そんときの気分,相手の顔色,等々でその都度違う返事になる.サン・ハウスのPreachin' The Bluesと答えるかもしれないし,リトル・ジョニー・テイラーのPart Time Loveと答えるかもしれないし,B・B・キングのYou Shouldn't Have Leftか何かかもしれないし, Elmore JamesのSomething Inside Me,ルディ・フォスターのBlack Gal Makes Thunder,ロバート・ジョンソンのTraveling Riverside Blues,...うーむ,答えの候補は色々有り過ぎだな.でも,選ぶ確率が一番高いのはサニー・ボーイ・ウィリアムソン・No.2のImaginationだ.

Sonny Boy Williamson, Imagination b/w Let Me Explain, Checker 834.

Checker834 両面ともサニー・ボーイがCheckerに録音するようになって2回目のセッションで録音されたもので,そのセッションは1956年1月24日に行われている.サニー・ボーイのチェッカー録音はどのセッションも極めて質が高く,凡作を見付けるのは困難だ.しかし,それにしても,この1956年1月24日のセッションで録音された5曲の良さといったら...どうにも言いようがない.Checkerからシングル盤で発売されたのは上記の1枚,2曲だけなのだが,お蔵入りした残りの3曲だってちょっとすごい.スローのDon't Lose Your Eyeとか,ミディアム・テンポのI Wonder Whyとか,能の無い言い方だが,素晴らしいとしか言葉が見付からない.後者は途中でテープが無くなって切れてしまうのだが,もし最後まで録音されていて,それを聞かされていたら,音楽のあまりの魅力に失神してしまうかもしれない.

シングル盤で発売された2曲も本当に傑作だ.ウチにある盤は,レーベル・スキャンを御覧になれば分かる通り,オリジナル・プレスではなく,青いレーベルの再発盤だ.1956年のオリジナル盤だと栗色のレーベルだろう.でも,そんなの関係ねえ!と盤に記録されている情報の量と質からすれば言ってしまう.

もう,さんざん聴いた曲だから,Imaginationを今更聞き返すことは少なくなったけれど,盤に針を降ろせば,歌の力とハーモニカ演奏の奥深さが一体となった音楽に,やはり特別なものを感じずにはいられない.第2ヴァースの,

  ♪あまり愛しているものだから,

と歌って,ほんの少しだけ,絶妙の間をおいて,

  夜も眠れない

と一気に歌ったかと思うと,爆発するような勢いでハーモニカで合の手を入れ,今度は間をおかずに,

  あまり愛しているものだから,夜も眠れない

と繰り返すとこなんかは,本当に堪らない.もっとも,こう文章に書いても間抜けなだけで,その良さは伝わらないが.

伴奏者の方も,いまさら何をか言わんや.この人たちも他のセッション以上に気合いが入っているように聞こえる.どのパートがどう,とも言えないほどバンド全体が整っているが,とくにフレッド・ビロウのドラムとロバート・ロックウッドのギターは快演だろう.

両面とも,もちろん色々なLP,CDでリイシューされている.

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2007年12月23日 (日)

このあたりでチェス・その12

特別好きというのでもないが,なんだかバスター・ブラウンのレコードを何度か取り上げている.飽きもせず,もう1枚.

Buster Brown, Crawling King Snake b/w In The Presence Of You, Checker 1099.

Checker1099 I'm a crawlin' king snake, I rule my denというキー・フレーズを持つブルースを録音している人を挙げると,ジョン・リー・フッカー,マディ・ウォーターズ,ハニー・ボーイ・エドワーズ,ハウリン・ウルフ,といやにごついメンバーになってしまう.ジョン・リー・フッカーのバージョンは1949年にビルボードのR&Bチャートで最高位6位を記録するヒットになっている.先日テレビのCS放送でバディ・ガイがやってるのを見たが,それはフッカーのものを真似しているようだった.古いところではビッグ・ジョー・ウィリアムズが1941年3月にBluebirdへ,トニー・ホリンズが1941年6月にOkehへ録音している.

トニー・ホリンズがCrawlin' King Snakeを録音したのは,ジョー・ウィリアムズより2ヵ月ちょっと遅れたが,この歌が拡がるに当たっては,ホリンズの方がキー・パーソンだったのではないか.ジョン・リー・フッカーはLiving Blues誌のインタビュー(Jim O'Neal and Amy Van Singel, The Voice of the Blues, Routledgeに収録)でCrawlin' King Snakeはホリンズからとったと認めている.なんでもフッカーの姉がホリンズと交際していて,ホリンズはフッカーの家にしょっちゅう来ていたのだそうだ.フッカーはホリンズの演奏が相当好きだったようだ.ホリンズの曲ではTease Me OverTraveling Bluesもフッカーの歌で聞いた曲だった.

一方,アラン・ロマックスがマディ・ウォーターズを録音したとき,ウォーターズが持っていたレコードには,アーサー・クルーダップ,ピーティー・ウィートストローなどに混じってトニー・ホリンズのCrawlin' King Snakeがあった,なんて話がある(これはAlan Lomax, The land where the blues began, Deltaに出ている).してみると,マディもこの歌をホリンズのバージョンで覚えたのではないか,と思える.

さて,ミシシッピとつながりの深いCrawlin' King Snakeを,ジョージア出身のブラウンが演じたのがCrawling King Snake,と言っていいのかどうか.このバージョン,ヒットしたジョン・リー・フッカーのものにヒントを得たものか.歌の文句は,トニー・ホリンズのものともいくらか共通な部分があるんだが.でも,メロディーがまるっきりFannie Maeだからなあ.得意のスタイルとも言えるけれど,「また,これか」という感じでもある.

In The Presence Of Youはジミー・リードをR&Bっぽくしたような感じで,個人的にはこっちの方が好き.

Crawling King Snakeは1964年の10月に,In The Presence Of Youは同年11月に,どちらもシカゴで録音されている.メンバーは分からない.両面とも日本盤CD,Blowin' The Blues, Chess(J) MVCM-22101でCD化されている.

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2007年12月15日 (土)

このあたりでチェス・その11

これもレコード・コレクターズ誌の記事を見てから買ったレコード.

Bobby Tuggle, $64,000 Question b/w Too Late Old Man, Checker 823.

Checker823 1955年にCheckerから突然このレコードを出したボビー・タグルという人物だが,そのすぐ後にピアノ・レッドのバンドにドラマーとして参加し,レコーディングしている.独Bear Familyからピアノ・レッドのCD4枚組の箱入セットが出ているが,その解説書にこの人の消息がいくらか書かれている.Checkerからレコードを出していた頃,アトランタのラジオ局で番組を持っていたらしい.1958年から1964年までピアノ・レッドのバンドに在籍した,とのこと.

さて,$64,000 Questionだが,ドゥ・ワップ風味コーラス入りの,ノベルティっぽい,軽快なジャンプR&B/ロックンロール.ボビー・タグルはブルース歌手といっても,苦悩を嘆くとか呻くとかいう性質の人ではなく,陽気にわっと大騒ぎしてしまうシャウター,というタイプのようだ.

裏側のToo Late Old Manは,ウィリー・メイボンのI Don't Knowなんかに作りの似た曲.こっちはコーラスが入らず,よりストレートなブルースになっている.なんだか途中ドラムのリズムが乱れるように聞こえるのは,初録音の緊張のせいか,そういうアレンジなのか,演奏面でおおざっぱな人だったのか,よく分からない.

Bobby_tuggle ボビー・タグルという人,歌手としてそんなに高く評価する必要はないとは思う.二流シャウターなりの味があると言えば否定できない,というところか.でも,このレコード,誰が弾いているのかしらないが,いなたい音色のギターが入っていて,それは結構魅力があったりする.

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2007年12月 8日 (土)

このあたりでチェス・その10

ここを見に来る皆様が最初に聴いたChess/Checkerの音楽は何だっただろうか?ワタクシの場合,それはチャック・ベリーでもなければマディ・ウォーターズでもなく,間違いなくオルガン奏者デイヴ・“ベイビー”・コーテツの曲だった.そのことに気が付いたのはごく最近のことだったけれど.

Baby Cortez, Rinky Dink b/w Gettin Right, Chess 1829.

Chess1829 デイヴ・“ベイビー”・コーテツなんて関心はなかったが,レコード・コレクターズ誌Vol.26, No.10のチェス・レコーズ特集で,鈴木啓志さんの記事を見て,聴いてみるか,と思った.ギターがジミー・スプルーイルとかいう話もあるし.それでシングル盤で入手して聴いてみて,ああ,そうか,これだったか,というのが感想.

小学生くらいの頃だったと思うが,ニッポン放送が毎週日曜日の朝放送していたラジオ番組「ポップス・ベストテン」を聞くのが習慣になっていた.番組名通り流行りの洋楽ポップスが10曲流れる,というもので,洋楽と自分の最初の接点だったと思う.番組の進行役は,ライヴドアによるニッポン放送買収騒ぎのとき,社長としてよくTVに出てきた亀渕昭信氏ではなかったかな.番組でどんな流行音楽が流れたかなんて覚えてないが,そのエンディング・テーマとして使われたオルガンの曲はよく覚えている.それも当然で,番組の中で聞く曲は毎週入れ替わるけど,エンディング・テーマは毎週同じなので,どうしたって擦り込まれてしまう.

さて,子供の頃に擦り込まれた,あのカッコいい,オルガンの曲は何だったのだろう,と気になっていた.ブルースなんか聞くようになって,あれは,何かR&B系のオルガン・インストゥルメンタルだろうな,と思うようになったのだが,誰の何の曲なのかなかなか分からなかった.片っ端からしらみつぶし法で聞いていけば,まあ分かるんだろうけど,そりゃ労力掛かり過ぎだし.

そのエンディング・テーマ曲,初めて聞いてからん十年たって,ようやく分かった.ベイビー・コーテツのRinky Dinkだったんだ.へえ,Chessだったんだ,あれ.歯切れの良いリズムをもった,キャッチーなインストゥルメンタル曲で,コーテツのオルガンを中心に,ちょい渋いギターとサックスが絡む,というもの.なつかしいな.1962年8月にビルボードのR&Bチャートで9位,ポップチャートで10位になったというから相当のヒットだ.

Rinky Dinkだけだとブルースとそれほど関係なさそうだが,その裏側のGettin Rightというのがインストゥルメンタルのスロー・ブルース曲となっている.これを聞くとベイビー・コーテツという人はブルース・アーティストではなくても,ブルースをルーツの1つとしていたことは分かる.ちょっと,いかにもブルースという感じを煽り過ぎのような気もするが,格好よいギター・ソロなどもあって,決して悪くない.

ベイビー・コーテツの昔の録音を集めたリイシューCDは何枚か出ているようで,オリジナル録音かどうか知らないが,Rinky DinkもCD化されていたようだ.Chess以前の録音は英Aceで出ている.

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2007年11月29日 (木)

このあたりでチェス・その9

イリノイ州シカゴのチェス・レコーズだったが,知っての通り,米国内のあちこちから,売れそうなものを捜し出してきてはレコードにしていた.テキサス州で録音された傑作も当然ある.古くはChessが出来る前,Aristcratから1948年にテキサス州ダラスで録音されたチャーリー・ブラディクスのレコードが出ている.1954年にはやはりテキサス州ダラスで録音されたローウェル・フルソンのReconsider Babyがヒット.そして1963年,今度もテキサス州ダラスで録音されたこんなのがCheckerレーベルから出ている.

Big Bo And The Arrows featuring Fred Lowery, I Done Got Over It b/w Thausand Miles Away, Checker 1068.

Checker1068 以前R・L・グリフィンのことを書いたとき,ビッグ・ボーことウィリー・トーマス・ジュニアと,彼のバンド,ジ・アロウズのことは出てきた.ビッグ・ボーはダラスのローカルなバンドのリーダーであったと思われる.ビッグ・ボー・アンド・ジ・アロウズ名義のレコードはDuchessとかGay-Shelとか,ダラスの小レーベルから出ている.そのうちDuchessから出たものをいくらか聴くことができたが,しょうもないローカルR&Bバンド,という感じだった.

このChecker盤でフィーチャーされている歌手はフレッド・ロウリーだが,ロウリーとビッグ・ボーの組合せでは,Gay-Shelレーベルから出たのがあって,それはAtcoから再発されている.そのGay-Shel/Atco盤は,ボビー・ブランド風ブルースともブルージーなソウル・バラッドとも言えるような曲だった.

I Done Got Over Itはテンポの速いブルース.ギター・スリムの曲だけれど,かなり速くして,モダンなアレンジになっているから,あまり原曲のイメージはない.フレッド・ロウリーはリトル・ジョニー・テイラーとか,そういうゴスペル・ブルースの範疇の人のようだ.高い張りのある美声で盛り上げて,ナイス.

Thausand Miles Awayはちょっと甘口のR&Bバラッド.こっちの方がA面なのかもしれない.

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2007年11月23日 (金)

このあたりでチェス・その8

リトル・ジョー・ブルーがチェッカーから出した3枚のシングル盤のうち,3枚目だけはMovin'で出たものの再発ではなく,シカゴのチェス・スタジオで,チェスのプロデューサー,アレンジャー,ミュージシャンの手によって作られたものだった.

Little Joe Blue, My Heart Beats Like A Drum b/w Me And My Woman, Checker 1173.

Checker1173 My Heart Beats Like A Drumは重厚でダイナミックなアレンジがなされたスロー・ブルース.リトル・ジョー・ブルーの歌いっぷりも本人比でベスト.Checkerから発売された6曲の中ではこれが一番の出来だろう.リトル・ジョー・ブルーの自作曲で,B・B・キングのWhen My Heart Beats Like A Hammerは題名は似ているけれど,かなり違う別の曲.そうは言ってもB・Bの曲がヒントになっているとは思う.この曲,後にJewelにも再吹き込みしている.

Me And My Womanの方はプロデューサー/アレンジャー/サックス奏者のジーン・バージの作.ちょっとファンキーというか,リズムが良く弾むミディアム・テンポのブルース.しかし,My Heart Beats Like A Drumに比べればこなれていないように思う.この曲は1980年代になってEvejimで再演したりしている.

両面ともLPではThe Real Chicago Blues Today - 60's Style, Chess/P-Vine PLP-6083でリイシューされていた(これは明瞭に覚えている).しかし,CDでは出ていないのではないかな,多分.My Heart Beats Like A Drumは良い出来なので,CDリイシューの価値はある.また同じセッションでもう2曲録音されている他,チェスではもう1回セッションが行われていて3曲録音されており,計5曲の未発表曲があるのもちょっと気になる.

The Blues Discography 1943-1970によれば,このレコードは1967年3月,シカゴで録音されており,メンバーは次のとおりだそうだ.

Little Joe Blue, V;
Gene Barge, sax;
unknowns, tpt, saxes, p;
Bryce Robinson, gtr;
Willie Dixon, b;
Maurice White, d.

う~ん,聞いた感じではディクソンのベースというのは違うだろ,という感じ.プロデュースはBarge & Dixonと明記されていて,これはジーン・バージとウィリー・ディクソンで間違いないだろう.また,アレンジはStepney & Bargeとなっていて,Bargeは無論ジーン・バージだろうが,Stepneyはチェスでザ・デルズの大作O-O I Love Youなんかを手がけていたチャールズ・ステップニーだろう.

先日,テレビでCS放送をなんとなく見ていたら,アース,ウィンド&ファイアーのドキュメンタリーみたいなのをやっていた.このリトル・ジョー・ブルーのレコードでドラムを叩いているモーリス・ホワイトはアース,ウィンド&ファイアーの親分格だから当然出てきたが,彼らに曲作りの点で貢献したチャールズ・ステップニーの名前も出てきた.ホワイトとステップニー,こんなブルースも含むチェスのセッションを通じてつながりを深めていったのか.

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2007年11月15日 (木)

このあたりでチェス・その7

前々回はリトル・ジョー・ブルーだったけれど,彼はシングル盤を3枚Checkerから出している.1枚目がヒットしたDirty Work Going Onで,2枚目はこれ.

Little Joe Blue, Once A Fool b/w My Tomorrow, Checker 1150.

Checker1150 Dirty Work Going Onと同様にこのレコードも両面共Movin'レーベルの再発,のようだ.Movin'で出ていたものと聞き比べた訳ではないので,本当に同じ録音かどうかは知らない.

Once A Foolは手堅く作られたウェスト・コースト・ブルース.上手くアレンジされたギター,サックス,キーボードの伴奏をバックに,リトル・ジョー・ブルーは誠実にブルースを歌っている.曲調は例によってB・B・キングっぽい.

My Tomorrowもブルースだけれど,今度はメロディーがローウェル・フルソンのBlack Nightsに似ている.曲の作者はファッツ・ワシントンで,Black Nightsの作者もファッツ・ワシントン,ということで,プロデューサーでもあった彼がこの手のメロディーを余程気に入っていたということだろう.

両面とも悪くない曲だけれど,LPでもCDでも正規のリイシューはされていないと思う.B・B・キングやローウェル・フルソンのようなスケールの大きさはないから,物足りない面はあるけれど,聞いて損はない.

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2007年11月 5日 (月)

このあたりでチェス・その6

これは,むらた まことさんに教えて頂いた逸品.

Johnny Thompson, So Much Going For You Baby b/w Bell Bottom Sue, Checker 1163.

Checker1163Sleeper...

このレコード,1960年代のブルースとしては,素晴らしい作なのだが,The Blues Discography 1943-1970にも,その前身のBlues Records 1943-1970にも出ていない.さらに,The R&B IndiesのCheckerの項を見ると,このレコードの番号Checker 1163は,アーティスト名も曲名も空欄になっている.このレコードが作られたのは1966年頃のようだが,それから40年くらいの間,誰も気がつかなかったということだろうか?この45回転盤は,近頃の相場からすればごくフツーの値段でつい最近買えたのだが,それは今でもその価値があまり知られていないから,なのだろうか?長い間忘れられていて,急に価値の出る骨董品や競馬の穴馬のことを英語でsleeperというのだそうだが,このレコードなんかは本当にsleeperだろう.しかし,そろそろ長過ぎる眠りから目覚めさせるべき時期なのではないか.

今後,ブルースのディスコグラフィには,Johnny Thompsonの項に次の2曲を追加しなければならない.

Chicago, circa 1966
Johnny Thompson, Vo; unknowns gtr, saxes, p, org, b, d.

14971    Bell bottom Sue             Checker 1163
14972    So much going for you baby  Checker 1163


その音楽

So Much Going For You Babyに針を降ろす.すると,ごく短いベースのソロに続いて,深みのある声で歌が始まるのだが...何ですか,この本格派のスロー・ブルースは?ジョニー・トンプソンは誰に似ているということもないが,B・B・キング以降のスタイルで,同じ時代の歌手だったらDukeのジェイムズ・デイヴィスとか,シカゴの人ならアーティー・ホワイトとか,そういうジャンルの人のように聞こえる.伴奏の方はギターもホーン陣も地味に聞こえるが,厚みのある,緊迫感のある音で歌を最大限に引き立てている.名門チェスでこれだけのものを作ったら,この人,もうちょっと売れて欲しかったところだ.

Bell Bottom Sueは歯切れの良いシカゴR&B.曲の形式や歌の文句は12小節AAB形式のブルースを元にしているようで,ブルース畑から出てきた人らしく思われる.


A. Williamsのこと

両面とも曲の作者はJ. Thompson - A. Williamsとなっている.このA. Williamsだが,Aで始まる名前は色々あるけれど,アンドレ・ウィリアムズだと思って間違いないだろう.レーベルにはプロデューサーの名前は見えないが,プロデュースも彼だろうか.アンドレ・ウィリアムズ自身がアーティストとしてCheckerでレコードを出したのは,レコード番号からいっても,マトリックス番号からいっても,もう少し後だろう.しかし,彼はコンポーザーとしても既にヒット作を出していたから,その実績を買われたとすれば,自身の録音以前から楽曲の作者としてチェスに出入りしていたのかもしれない.

Checker1163composer

ジョニー・トンプソンとアンドレ・ウィリアムズのつながりを示すレコードはまだある.トンプソンは1970年台にNewmissというレーベルから,シングル盤Mainsqueeze b/w I Lost Everything, Newmiss 777-1を出している.これは割と格好良いファンク曲とごくブルージーなソウル・バラッドの組合せだが,2曲とも作者はAndre Williamsとなっている.ウィリアムズとしてはジョニー・トンプソンに売れる可能性あり,と見て曲を提供していたものか.

Newmiss7771composer


現役ブルーズン・ソウル・シンガー

謎めいているジョニー・トンプソンだが,今,彼は自身のレーベルJ-Tを持っていて,そこからCD,Johnny "T" Thompson, Girl I Love You (J-T 93984)を出している.CDの売り文句によれば,シカゴ出身の彼は,現在はフロリダ州オーランドに居るのだという.彼の最初のレコードはここで紹介したChess/CheckerのSo Much Going For You Baby,2作目は上述のNewmiss盤だそうだ.もっとも,そのNewmiss盤が全国ヒットした,というのは信じ難い.そんなに当たった曲があったら,もう少し有名になっていたんじゃないか,と思う.

Johnnytcd CDの収録曲を見ると,The Town I Live In(マッキンリー・ミッチェル),There's Something On Your Mind(サニー・ワーナーとビッグ・ジェイ・マクニーリー),Cut You Loose(リッキー・アレン),Got To Find A Way(ハロルド・バラージュ)という具合にR&Bやシカゴ・ソウルの古典曲が見える.このレパートリーを見ると大体どういう位置に居た歌手なのか分かるようだ.

また,彼はビル・ピンクニーのオリジナル・ドリフターズに何年間か参加して,世界中巡業してた,などという経歴もあるそうだ.もしかすると,ドリフターズの一員として日本の土も踏んでいるのかもしれない.

今後,CDをきっかけとして, 「伝説のチェス・レコーディング・アーティスト」みたいな感じで遅すぎる脚光を浴びる可能性もある,かな?

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2007年11月 1日 (木)

このあたりでチェス・その5

前回に続いて,ウェスト・コーストのマイナー・レーベルのレコードでChess/Checkerから再発されたものをもう1枚.今度はファッツ・ワシントンのMovin'から出ていたもの.

Little Joe Blue, Dirty Work Going On b/w Pretty Woman, Checker 1141.

Checker1141 リトル・ジョー・ブルーは1990年に55歳で亡くなっているから,若死の方だったかもしれない.しかし,録音は多くて,そこそこ人気もあって,成功した部類だろう.ふっ切れないB・B・キング,という感じの歌手で,味のあるブルースは歌う好ブルースマンとは言えるけれど,なんかもう「ひと押し」が足りない,という人でもある.

Dirty Work Going Onはリトル・ジョー・ブルーの代表作.彼としては唯一チャートには入ったヒット曲で,1966年7月にビルボードのR&Bチャートで40位になっている.ヒットするだけの出来の良さは確かにある.ファッツ・ワシントンのプロデュースが上手いのか,リトル・ジョー・ブルーの良い面が発揮されたウェスト・コースト・ブルースの秀作だと思う.

このDirty Work Going On,米MCAから以前出ていた4枚組CD,Chess Blues (MCA/Chess CHD4-9340)でCDリイシューされていた.で,そのCDに入っているDirty Work Going Onを聞くと,同じ曲の同じテイクのようだが,ん?ん?何だこりゃ?CDに入っているのはホーンが入ってないぞ!せっかくホーン・アレンジがきまっている,と思っていたのにこれでは魅力は何割か割引だ.どんな音源がMovin'からChessに渡ったのか知らないが,ちゃんとレコード通りホーンが入った音をCD化してもらいたいものだ.

Pretty Womanはもう少しテンポを落としたブルース曲.リトル・ジョー・ブルーらしい(?)小物感は否めないが,こちらも1960年代ブルースの良作だ.

Chess Bluesの解説書によると,両面とも1966年3月,ロサンゼルスで録音されたもので,メンバーは次の通り.

  Little Joe Blue, Vo.;
  Larry Green, gtr.;
  Curtis Tilman, b.;
  Unknowns, saxes, p;
  Chuck Thomas, d.

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2007年10月24日 (水)

このあたりでチェス・その4

チェス・レコーズは,昔からあちこちのレーベルから音源を買うとか,リースとかしては,Chess/Checkerレーベルで再発していた.音楽的には売れる要素があっても,会社の配給力が弱くて売れない,という小レーベルの音源をChess/Checkerから再発するのはチェスにとっても,アーティストにとっても良い話だったろう.次のレコードはウェストコーストのBlaunというレーベルから出ていたもの.

Elliott Shavers and His Bossman, Rice And Gator Tails b/w Toe Jam, Checker 1079.

Checker1079 エリオット・シェイヴァーズっていう人は,本当に少ししか聞いたことがないのだけれど,ホンカーの流れを汲むR&Bインスト・サックス吹きのようだ.ジョー・ヒューストンとか,そっち方面の人ではないか.レコードは1960年代に色々なレーベルに残している.

さて,Checkerから再発されたこのレコード,両面とも調子の良いインストゥルメンタル・ブルースだ.演奏内容の方は,チェスが可能性を見出して拾いあげるだけの価値が確かにあるかもしれない.

特にRice And Gator Tailsの方は,なかなか良い感じ.少しラテンっぽいリズムを使っていて,いきなり,かなり格好よいブルース・ギターで曲が始まる.その後はシェイヴァーズのサックスとギターが交互にソロをとっていく.このギターに魅力があって,音色を聞いているとジョディ・ウィリアムズを思い起こしてしまう.もちろんギタリストはジョディ・ウィリアムズなどではなく,ジョニー・“ジュニア”・ロジャーズという人物が弾いている.この人はロイ・ミルトンのバンドでギターを弾いていた人で,ミルトンのSpecialty録音などにも参加している.そのロイ・ミルトンのSpecialty録音にはJunior Jivesというロジャーズの愛称を冠したらしい曲などもあって,その曲などでもかなりギターを聞ける.しかし,格好良さではこのシェイヴァーズ名義のChecker盤の方ではないか.

Toe Jamの方はアップテンポのブルースで,最初オルガンのソロ,その後シェイヴァーズのサックスのソロが続くというもの.どうもシェイヴァーズのソロが単純なフレーズに終始していて,少々盛り上がりに欠ける.バンドの方には活きの良さがあるけれど.

The Blues Discography 1943-1970によれば,このレコードは1963年ロサンゼルス録音で,エリオット・シェイヴァーズのテナーサックス,ジョニー・“ジュニア”・ロジャーズのギター以外,オルガン,ベース,ドラムスの奏者は不明だそうだ.このレコードを制作したレーベルはBlaunだが,これはシェイヴァーズ自身のものだったそうだ.

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2007年10月16日 (火)

このあたりでチェス・その3

トミー・タッカー絡みのチェッカー盤をもう1枚.これはCDでも聞ける曲.

Sugar Pie DeSanto, Slip In Mules (No High Heel Sneakers) b/w Mr. & Mrs., Checker 1073.

Checker1073 シュガー・パイ・デサント,チェッカー録音ではあまりブルースの曲は多くはないようだけれど,Slip In Mulesは味のあるナイス・ブルースになっている.その作者の名前にヒギンボーザム,つまりトミー・タッカーも連名になっている.この曲がタッカーのヒット曲,High Heel Sneakersのアンサー・ソングで,タッカー自身が作ったからだ.

トミー・タッカーの元歌では「今晩デートだから,真っ赤なドレスがいい」と歌うのに対して「赤のドレスはクリーニングに出したところ」,「踵の高い靴がいい」と言えば「あれは爪先が痛くてダメ」とシュガー・パイが返すこの歌,ヒットしてビルボードのR&Bチャートでは1964年4月に48位になっている.元歌のHigh Heel Sneakersとだいたい同じ様な曲調で,ピアノやオルガンのよく弾むリズムも心地良く,シュガー・パイの歌も表現豊かなように思う.

チェス・レコーズに関する本,Spinning Blues Into Goldによれば,トミー・タッカーはHigh Heel Sneakersのアンサー・ソングを作ろう!と考え,そのアイディアをデトロイト出身のプロデューサー,ビリー・デイヴィスに伝えると,2人ともシュガー・パイ・デサントの声が頭に浮かんだ,とのこと.曲を1日で作り,翌日にはレコーディング,だったというから早業だ.

Desantocd Slip In Mulesはウチにある日本盤CD,Down In The Basement, Chess/Universal MVCE-22040にも収録されている.だけれど,CDに入っているのはシングル盤のものとは別テイクだ.出来はどちらも良いので,どちらを聞いても構わないだろう.CDに入っているテイクは最初の歌い出しが抑え気味で,おおげさに言うとささやくような調子だったり,ギターの合の手がシングル盤と違ったりしている.一番違うのは間奏が終わった後の歌詞で,シングル盤ではCan't wear no high-heel sneakers...と第2ヴァースの歌詞を繰り返すのに対し,CDのテイクではBaby my red dress in the cleaner...と第1ヴァースの歌詞を繰り返している.

Mr. & Mrs.の方はLPでもCDでも出ていないと思うが,平凡なポップ・ソングなので,これは復刻の必要はないだろう.

Slip In Mulesの方はシカゴ録音で,ビリー・デイヴィスがチェス社長に要求していたハウス・バンドが伴奏していて,モーリス・ホワイト,レオナード・キャストンらがメンバーになっている.Mr. & Mrs.は,まあどうでもいいが,ロサンゼルス録音でジョニー・ハーツマンらが伴奏していることになっている.

割と最近出たDVD,The American Folk-Blues Festival, The British Tours 1963-1966, Hip-O B0008353-09で,シュガー・パイ・デサントの1960年代の姿を見れたのは嬉しかった.歌えるのはもちろんだけれど,若い頃のシュガー・パイ,ショーマンシップみたいなのも相当なもんだったのではないかな.

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2007年10月10日 (水)

このあたりでチェス・その2

ロバート・ヒギンボーザムことトミー・タッカーは,HiやAtcoでシングル盤を出した後,1964年,Checkerで出した最初のシングルHigh Heel Sneakersが大ヒット,次のLong Tall Shortyもチャート入り,と順風満帆かと思われた.しかし,Checker3作目のAlimonyは良い出来だったがチャートには入らなかった.次のレコードはChecker4作目で,Alimonyよりも良いくらいだが,やはりチャート入りしなかった.

Tommy Tucker, I've Been A Fool b/w Chewing Gum, Checker 1133.

Checker1133 聞きごたえがあるのがI've Been A Foolで,物憂いギターのイントロで始まるスロー・ブルースの秀作になっている.トミー・タッカーには特別に強力なブルース歌手というイメージは無いけれど,ここではじっくりと,何やら真情の伝わるブルースを聞かせている.これに鋭い音色で絡んで来るウェルドン・ヤングのギターもナイス.

ヒットしたHi Heel Sneakersでは「12小節ブルースながらお茶目な調子でメランコリックではない(Nadine Cohodas, Spining Blues Into Goldより)」ところが新鮮で受けたとすると,当時の人にはI've Been A Foolはそれと反対の古いタイプの曲と受け取られたのかもしれない.だとすれば商売としては当たらなくても不思議ではない.しかし,そうは言っても,この曲は1960年代のChess/Checkerのブルースとしては逸品の一つに違いない.

Chewing Gumは快活な曲で,ブルージーなノベルティR&B,という感じ.元気があって悪くはないし,こっちはお茶目路線だが,もうちょっと特徴が欲しいような気がする.

The Blues Discography 1943-1970からデータを書き写しておくと,1965年11月,ニューヨークで録音されたもので,メンバーは次の通り.

  Tommy Tucker, Vocal/org;
  Weldon Young, gtr;
  unknowns, gtr, b;
  Vinnie Basile, d.

I've Been A Fool
みたいなのはマスターからのCDリイシュー(というかディジタル・リイシュー)を望みたいところ.

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2007年10月 2日 (火)

このあたりでチェス・その1

このところニューヨークのブルースを続けてきたが,トミー・タッカーなんて人もニューヨークでの録音が多かった.彼の拠点はニュージャージー州ニューアークだったようでもあるけど,ニューヨークからそんなに遠くもないだろう.だから今回はトミー・タッカー.ていうか,本当はレコード・コレクターズ誌がチェス・レコーズの特集号なんか出したんで,ここいらでChess/Checker方面に話を持っていくのもいいんじゃないか,ということで.

Tommy Tucker, Alimony b/w All About Melanie, Checker 1112.

Checker1112 LP時代,トミー・タッカーはCheckerでアルバムを出しているが,そのLPには上のシングル盤の曲は収録されていない.タッカーのチェッカー録音はCDでも出ていたよう