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2017年8月

2017年8月28日 (月)

偉大な先駆者

ブルース音楽に関する研究の草分け,ポール・オリヴァー氏が亡くなったそうだ.90歳だったそうだ.一昨年にはサム・チャーターズも亡くなったし,ミュージシャンだけでなくブルース音楽の魅力を文章で伝える人の方も,まあ,段々とね.

氏の著書では,ブルースの歴史(晶文社),ブルース―アフリカ(晶文社),ブルースと話し込む(世紀音楽叢書),が日本語になっていると思われる(他にもあるかな?).特に「ブルースの歴史」と「ブルースと話し込む」は,日本人がブルース音楽を理解するための手がかりとして,欠くべからざるもの,であろう.他にもScreening The Blues, Blues Fell This Morning, Songsters And Saints, と重要な著作がある.それにレコードの監修,解説も数多くあった.

Screening The BluesとかBlues Fell This Morningの目次を見れば,クリスマスとブルース,宗教とブルース,賭け事とブルース,ヒーローとブルース,エロとブルース,旅とブルース,迷信とブルース...ブルース音楽に関する面白そうなテーマはオリヴァー氏がみな手を付けているではないか.それに,ソングスターが残した作品のルーツを探りながらレイス・レコーズ以前のアフリカン・アメリカン音楽の状況に迫るSongsters And Saintsも他に類のない力作だった.

音楽評論の仕事は,1952年のJazz Journalに掲載された記事が最初(Blues Off The Record, Da Capo)だそうだが,以後,英国の大学で建築学の研究を本業としながら,音楽の方でも,「ブルースと話し込む」のような密度の高い仕事をしてきたのだから,大変なエネルギーの持ち主だった.本人は建築学と音楽の関係について,建築の方ではvernacular architectureが専門で,ブルースもveranacular(土地に特有の)な音楽だし,みたいなことを書いていた(これもBlues Off The Record).

1997年には日本にやってきて,金沢市で開催された国際ポピュラー音楽学会大会で講演をしている.そのときの予稿は翻訳され,現代詩手帖1997年10月号に掲載されていたりする.ブルース音楽とネイティブ・アメリカンの関係,という内容で,関係は結局よく分からないようなのだが,着眼点はさすがに面白い.

オリヴァー氏の著作,これを機会に読み直すのもよいのではないか.

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2017年8月12日 (土)

20年間の軌跡

前回に引き続いて,これもナッシュビルのダウンホーム・ブルース.

Shy Guy Douglas, What's This I Hear b/w Monkey Doin' Woman, Todd 1092.

Todd1092 トム・“シャイ・ガイ”・ダグラスは,The Blues Discography 1943-1970で見ると,1949年から1969年のおよそ20年間に,29曲を録音している.意外と録音が多いんだな,と思う.リイシューも進んでいて,このTodd盤の2曲はHarp Blues Ace(UK) CDCHD710というCDで出ているそうだ.1999年発売という随分前のCDだけれど,今でも買えるだろう.傑作が詰まったCDなのだけれど,いろいろ他のCD,LPと重複するのがちょっと難点.

シャイ・ガイ・ダグラスについては,20年間の成果の一部しか聞いてはいないけれど,おおむねコンスタントに優れた作品を作ってきたのではないか.重量感と安定感のある声で聞かせるダウンホーム・ブルースはなかなかのものだ.ときには歌なしのインストゥルメンタルもあるけれど,その場合はハーモニカの妙技を聞かせる.

このToddレーベルの2曲は,1963年の録音で,傑作と言えるだろう.What's This I Hearはスロー・ブルースで,南部のブルースの魅力を伝えていて素晴らしい.ざらざらとした声による味わい深い節回し,重厚で暖かみのある伴奏,最初と最後に聞けるハーモニカ,いずれも良い.Monkey Doin' Womanは一転してアップテンポのブルースで,こちらも歌,ハーモニカとも良い味を出している.

ご本人の歌とハーモニカ以外のメンバー,ギター,ベース,ドラムは誰が演奏しているのかわからない.

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