« 今度は上手い人を(2) | トップページ | 話し込んで,分かること »

2016年7月 3日 (日)

今度は上手い人を(3)

このレーベルは何て読むんだろうか.キュー・ビー・アールとかでいいんだろうか.読み方が分かっても,名前の由来は分からないな.

Roy Gaines, Don't Deceive Me b/w Black Gal, Cu-Be-Ar 9340-58/59.

Cubear934058 1960年代後半の録音,とされている.Don't Deceive Meは,チャック・ウィリスがOkehレーベルでヒットさせたブルース・バラッドの名曲.いろいろな歌手にずいぶんカバーされていて,誰が歌っても様になる曲ではある.このゲインズのバージョンもまったりと歌われ,ナイス.

1950年代のことだが,ロイ・ゲインズは,若くしてチャック・ウィリス・バンドのバンド・リーダーを務めたそうだ.ウィリスはきっとライヴの度にこの曲を歌っただろうから,リーダーとしても馴染み深かい曲だっただろう.なお,ウィリスがDon't Deceive Meを録音したときは別のギタリスト(リロイ・カークランド?)だったと思うけれど,Atlantic時代のC. C. Riderとかではゲインズがギターを弾いている.

このCu-Be-Ar盤の伴奏はゲインズ本人のギター,オルガン,ベース,ドラムとハーモニカ,という比較的簡素なもの.オルガンは最終ヴァースなどで鋭く切り込んできて,目立つ.このオルガンを弾いているのはジョー・サンプルだ.

ザ・ジャズ・クルセイダーズで活躍中のジョー・サンプルが,読み方もはっきりしないマイナー・レーベルのセッションに登場するのは珍事かもしれない.おそらく,ロイ・ゲインズはジョー・サンプルにコネがあってセッションが実現したのだろう.

ジョー・サンプルとゲインズのレコード上の共演は1961年に遡る.古い雑誌記事だが,高地明,"テキサス・ファンキー・ギターのおもしろさ",Black Music Review,No.56,1982年にそのことが触れられている.記事によればザ・ジャズ・クルセイダーズのLP,Freedom Soundの2曲でゲインズは弾いているそうだ.ゲインズが1980年前後にザ・クルセイダーズとツアーしたのも彼らに浅からぬつながりがあってのことと思われる.

彼の兄,グラディ・ゲインズは,兄弟が暮らしていたテキサス州ヒューストン,フィフス・ワード地区の有名人として,ボクシングのヘビー級世界チャンピオンになったジョージ・フォアマンらと共に,ジャズ演奏家のイリノイ・ジャケーとジョー・サンプルの名前を挙げている(Roger Wood, Down In Houston - Bayou City Blues, University of Texas Press, 2003).ゲインズ兄弟とジョー・サンプルはフィフス・ワード町内の若い者同士として,古くから知り合いだったのだと思う.

伴奏にはハーモニカも入るが,ハーモニカ兼ドラム奏者もジャズ屋さんで,ドナルド・“ダック”・ベイリーという人だ.この人はリーダー作も結構あるようだけれど,オルガン奏者ジミー・スミスのドラマーとして有名らしい.いや,ジャズというと,ちんぷんかんぷんで分からないのだけれど.少しブルース寄りのものとしては,エスター・フィリップスのConfessin' The Blues(Atlantic)などでもドラムを叩いている.

ロイ・ゲインズは1934年テキサス州ワスコム生まれでヒューストン育ち,ジョー・サンプルは1939年ヒューストン生まれとされている.ロイ・ゲインズが生まれる4ヶ月前には,ヒューストンのフォース・ワード地区出身の歌手,ジョー・プラムがBlack Gal What Makes Your Head So Hard?を録音して,ヒットさせている.ゲインズ兄弟やサンプルは,ジョー・プラムのことを知っていたのだろうか?プラムは1940年代までヒューストンにいたと思われ,微妙なタイミングだけれど,ゲインズは会っていないとも限らない.プラムのレコードを彼らが聞いていた可能性もある.

このCu-Be-Ar盤のBlack Gal,歌い出しの部分で,ブラックギャル,ブラックギャルと繰り返すのを聞くと,ゲインズはプラムのBlack Galを知っていたのかもしれない,と思う.もっともジョー・プラムの曲との共通点はそのくらいで,全然違う曲ではある.こっちは,リズム,メロディーとも変てこで,そうねえ,率直に申し上げて,少し気色悪い.

ということで,Don't Deceive Meの方は聞けるので,盤として持っていて損ではない.ところで,ゲインズ兄弟,グラディが1934年5月生まれ,ロイが1934年8月生まれ,ということなのだけれど,同じ生年の兄弟というのは何か家庭の事情があるの?

|

« 今度は上手い人を(2) | トップページ | 話し込んで,分かること »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103105/63860792

この記事へのトラックバック一覧です: 今度は上手い人を(3):

« 今度は上手い人を(2) | トップページ | 話し込んで,分かること »