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2011年7月 3日 (日)

究極のモダン・ブルース(上)

もう二十年くらい前のこと.このレコードを手に入れたとき,それは感激して,何度も聴いたものだ.いま聴き直してもこのレコードに対する考えは変わらない.

Sonny Green, Don't Write A Check With Your Mouth b/w Don't Make A Good Boy Go Bad, Hill 339.

Hill339 このレコードの両面,2曲は自分にとっては最もモダンなブルースだ.1970年代のR&Bとしてアップトゥデイトな音であり,チャートを十分狙えるものである一方で,ブルースの形式であり,感覚的にもブルース音楽にほかならない.この2曲が制作されたのは1973年ごろだろう.その後,1970年代にも,1980年代にも,1990年代にも,21世紀になっても,ブルース音楽の録音は続いているが,この2曲よりも新さを感じるものがないように思える(もっとも最近の録音というのはあまり聞かないのだが).ブルース音楽の形式を究極まで発展させたときの,その進化の最終段階を見るような2曲だ.

と,思っているのだが,ブルース音楽に何を求めるかは人それぞれなので,賛同する人がいるかどうか,どうも心許ない.しかし,この2曲と,その前に出たIf You Want Me To Keep On Loving You,本当に良いんだから.

Don't Write A Check With Your Mouthに針を下ろすと,緊張感のあるリズム・セクションと共に聞こえてくるのは物憂げで催眠的な電子ピアノのリフで,このイントロで一気にこの音楽の世界に引き込まれる.最初に短い語りがあって,

I want you to listen real close, OK?

オッケーだよ,real closeに聴くに決まってるじゃないか.これだけ緻密に作られた音楽を聞くのだから一瞬でも気を緩めたくない.サニー・グリーンは伸びやかに,力強く歌い始め,それにギターが表情豊かに応答し,さらにホーンが音楽を暖かく包み込んでいく.このヴォーカルと伴奏アレンジの一体感といったら完璧だ.

Don't Make A Good Boy Go Badの方も同じくらい完璧で,同じくらい洗練されている.今度は電子ピアノではなくて,普通のピアノでキャッチーなリフが演奏されるが,これにも惹きつけられる.歌のメロディーがDon't Write A Check With Your Mouthとはがらっと変わり,こんなメロディーもアリだったか,と思っているうちに音楽の勢いはぐんぐんと増し,歌も伴奏も畳み掛けるように展開していく.

この2曲の素晴らしさが,歌手,楽曲,ミュージシャンの力と共にアレンジャーの力量によっていることは明らかだが,そのアレンジャー,マイルス・グレイソンとしても会心の作だったことだろう.無理に難点を見つけようとするなら,あまりにもアレンジャーの描く設計図通り進行するので,スポンテイニアスなものには乏しいのかもしれない.しかし,それを感じさせないほど念入りに制作された傑作だ.

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