« 同じ日のこと | トップページ | 焼き直しもオツなもの »

2011年2月13日 (日)

一家のピアノ

リトル・ブラザー・モンゴメリーの兄弟は上から順に,オリヴィア,ウィリー,レオン,アリス,エラ,ユーリアル(リトル・ブラザー),ジョー,ウィリー・マクシン,ウィリー・ベル,トリー,ということで,男5人,女5人,全部で10人いたのだそうだ.リトル・ブラザーが3歳か4歳のとき,親父さんが彼にピアノを買ってやると,この10人がみなピアノを弾くようになったというから,にぎやかなことだったろう.

The Little Brother Montgomery Trio, Mini-Skirt Blues b/w Brother Red's Boogie, FM 1002.

Fm1002 リトル・ブラザー・モンゴメリーが自身のFMレーベルから出したレコードのことは前にも書いた.そこでも書いたけれど,このFM 1002は両面ともEarwigでCD化(Little Brother Montgomery, At Home, Earwig 4918CD)されている.この前,J・B・レノアーのレコードでジョー・モンゴメリーの名前が出てきたんで,この一家のこと,このFM盤のことを思い出し,書いてみるか,といわけで.

さて,兄弟が皆ピアノを弾いたといっても,プロになったのはリトル・ブラザー以外ではJ・B・レノアーのバンドに参加していたジョー・モンゴメリーだけのようだ.あとはアリスの息子がポール・ゲイトゥン,というのはまあ知られているか.プロとしてレコードを出したのはそれくらいでも,親父さんはホンキー・トンクを経営していたとか,一家はほとんど何かしら楽器をやったとか,音楽とは馴染み深い環境だったようだ.

このレコードで面白いのはMini-Skirt Bluesで,リトル・ブラザーが歌うスロー・ブルースだが,ピアノを弾いているのが彼ではなく,一家の末っ子,トリー・“デューク”・モンゴメリーなのだ.トリーは1915年頃の生まれで,プロのミュージシャンではなかったそうだ.それで,このトリー・モンゴメリーのピアノだけれど,リトル・ブラザーのそれとは全然違う.緊迫した雰囲気の音色で,コロコロとよく転がり,そうだなあ,タイプとしてはボブ・コールの戦後録音とかが近いかなあ.まあ,ちゃんとしたプロの演奏家よりは腕は落ちるだろう.それと,リトル・ブラザーはいつものペース,いつものメロディーで歌っていて,これにリトル・ブラザー自身のピアノがつかないのは違和感はあるんだけど.

Brother Red's Boogieはリトル・ブラザーがよくやるタイプのブギウギ・ピアノ曲.いつもと演奏がちょっと違うような気がして,ひょっとしてこれもトリーがピアノ?と思いかけたけれど,それは気のせいで,そんなことはないようだ.普段より少しリラックスしているかな.

録音に参加したメンバーはみんなレーベルに書かれていて,ドラムは“レッド”・サンダース,ベースは“トラック”・パーハムとのこと.1968年12月6日の録音とのことだ.“レッド”・サンダースは1950年代に結構いろいろなセッションに参加している.

リトル・ブラザーが自分のレーベルで好きなように録音するという状況がなければ聞く機会がなかったと思われるトリー・モンゴメリー,このレコードの出来が特に素晴らしいとも言えないけれど,録音が残って,兄とは一味違うスタイルを聞けるのは良かったのじゃないかと思う.

|

« 同じ日のこと | トップページ | 焼き直しもオツなもの »

コメント

リトル・ブラザー・モンゴメリーの戦前録音CDを愛聴しているので、大変興味深く読ませて頂きました。
ところで、色んなブルースの曲名でネット検索をしたら近頃よくアマゾン・ジャパンのダウンロードのページが出てきて、以前取り上げられたJ.B.ルノアーやJr.ウェルスのSittin' In With盤なんかが売ってありました。恐るべし、というか、こんなシングル盤の音源までダウンロードで買えるようにするんじゃなくて、ちゃんとCDでリリースして欲しいと思います。音楽ビジネスの在り方、ミュージシャンが録音した楽曲作品への作り手・聴き手両側の想いが何だか崩れて行くような今日この頃だと感じてしまいます。

投稿: 輪高 | 2011年2月17日 (木) 17時45分

アマゾンのダウンロード販売,私も少し試しました.へえ,あのJ・B・レノアやジュニア・ウェルズもあるんですか.米国Amazon.comはかなり前からやっていたと思いますが,日本のアマゾンが始めたのはわりと最近だと思います.

> ちゃんとCDでリリースして欲しいと思います。

ううむ,これはどうでしょうか.私は古いブルースのダウンロード販売に結構肯定的なんですよ.

・もともと「アルバム」を意識して作られたものではないので,1曲ずつばら売りできる形態が合っている
・売る側からすると,ロングテールのテールの先っちょみたいな商品でも損失少なそう,いや利益が出るかも
・買う側からすると,物理的なメディアが部屋を占有することを回避できる(オリジナル盤ならスペース占有されてもいいんだけど)

なんてのが利点ですかね.で,解説書は別途テキトーな電子書籍形式でダウンロードできればオッケーだと思うんですが,いかがでしょう.

音楽ビジネスのあり方は,いずれにせよ技術と共に変わるんで,「そんなもんだ」と思っています.これまでも,楽譜出版,平板レコード,マイクログルーヴ(LPとドーナツ盤),CD,と音楽の売り方は変わってきましたし,音楽の作り方もそれに影響されてきた面があるかと思います.今度は「ダウンロード販売の順番」ということだと思います.音楽ビジネスの姿は,技術の進展に合わせていずれ落ち着くところに落ち着く,と見ております.

投稿: BackDoorO | 2011年2月17日 (木) 22時58分

なるほど。確かに、探していたあの曲この曲が家に居ながら、カタカタカタっとパソコンのキーボードを叩いたら百円やそこらで入手出来るなんて夢の様ではあります。ダウンロードを心情的に毛嫌いしていますが、貴重なシングル盤を探索する気力・体力・財力は無いので、そんな音源があったら買っちゃいそうです。何だか寂しい気持ちは拭い切れませんが、私が完全に「CDアルバム世代」だからでしょうね。

投稿: 輪高 | 2011年2月18日 (金) 07時51分

ものの本を見ると,電気録音のレコードが出たのが1925年,LPは意外と古くて1948年,RCAのドーナツ盤は1949年,CDは1982年,今は2011年,...そろそろ変化のある頃です.

それぞれのメディアごとに愛着がある人がいることと思います.私はMP3もCDもオッケーですが,78回転でぶん回るのも含めてアナログ盤は良いと思いますよ.

投稿: BackDoorO | 2011年2月18日 (金) 21時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103105/50864274

この記事へのトラックバック一覧です: 一家のピアノ:

« 同じ日のこと | トップページ | 焼き直しもオツなもの »