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2010年3月14日 (日)

悪行も善行も

Electro-FiのCDやNumeroのLight: On the South Sideの解説書を読んで知ったことだが,リトル・マック・シモンズは歌手兼ハーモニカ奏者として活動する傍ら,本業なのか副業なのか,御法度の薬物を商ってもいたという.1966年にはマリファナ所持で36ヵ月の刑を食らったが,出所すると懲りもせずにメキシコとテキサスを行ったり来たりしながら高品質のマリファナとヘロインの輸入販売なぞしていたそうだ.シモンズはそうやって集めた金で自分のスタジオを作り,Sky Hero,Simmons,PMなど自分のレーベルを立ち上げ,かなりのレコードを出している.当ブログでも,こんなのや,こんなのを採り上げてきた.彼の資金調達の方法は実にけしからんものだが,そのブルース音楽に対する愛情は本物であっただろうし,結果として良い作がいくつか生まれたので,この種の音楽を好む者的には,まあ,良しとしたい.本人は家賃をとらずに高齢の人にアパートを提供するとか,慈善もして,善人のつもりでいたようだ.

このレコードもシモンズのレーベルのもので,彼がハープで参加している.

Arelean Brown, Eagle Stirs His Nest b/w I Broken Many Heart, Simmons 432.

Simmons432 多分,これらの曲はSimmons/Black Magicから出たアーリーン・ブラウンのLPに入っているのじゃないかと思う.昔,やたらに露出度の高い衣装を着た写真のせいで彼女をゲテモノ視していて,そのLPは買わずじまいだった.今は普通に優秀な歌手だと思っているけれど.

それにしてもこのレコード,特にEagle Stirs His Nestは本当に素晴らしい.1970年代後半くらいの録音だと思うが,1950年代のシカゴ・ブルースを思わせるような,小気味の良いブルースだ.バンドの繰り出すリズムの気持ちよさも相当なものだが,それ以上にアーリーン・ブラウンの歌いっぷりの味わいがたまらない.正統派のシカゴ・ブルースの傑作だろう.この傑作も,シモンズが悪事を働いていなければ生まれなかったことになるのだが.

I Broken Many Heartの方はリズムがファンキーになる.こちらもバンドが切れ味良く,ブラウンの歌も良い.ブラウンは,小ヒットしたらしいI'm A StreakerとかImpeach Me Babyとかファンキーなものを他にも録音していて,この種の曲も得意と言えるだろう.

アーリーン・ブラウンはLP1枚の他,いくつかの小レーベルに録音したが,いまCDですぐ聞ける曲は少ないのではないか.歌手以外の仕事として,タクシー運転手,クラブのオウナー,食料品店,大家,カウンセラーなどをしたというから,シモンズと違って100%善良な人だったと思われる.1924年6月生まれで1981年4月没だから,亡くなったときは56歳か.もう少し長生きしていればねえ.

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コメント

少し暖かくなって、奥にしまってあるブルースのレコードを探しに行く勇気が出てきました(笑)。
マック・シモンズはそういう裏側がある引け目からでしょうか、アルバムだけを見ても、「Inflation blues](P.M.)で「Jesus, so wonderful」という曲をやってますし、「My message is love」(Sky Hero)というアルバムは、Reverend Malcolm Simmons名義ですし、マイケル・ジャクソンの「Thriller」をやっている「Mama was right」(Grandville)も同じようなプレスが2種類あって、僕の持っていないほうにゴスペルが1曲入っていたはずです。
でもそれはそういう姿勢だけで、サウンドからはゴスペルの持つ真摯さは伝わってきませんが・・・。
マック・シモンズの所を見ていて気が付いたのですが、デトロイト・ジュニアのアルバム「Chicago urban blues」(Antilles)のハープはマック・シモンズなんですね。
アメリカ本国で出た彼の最初のアルバムでしたよね、確か。
それからアーリーン・ブラウンですが、仰せのアルバムは
Arlean Brown sings / The blues in the loop (Simmons 1311)
Pushin our love aside, I can't believe it, Impeach me, You gonna miss me around here, Broken many hearts, I'm a streaker baby
My chicken man, I'm so blue, Eagle stirs her nest, I love my man, Why I love you?
ですね。
(だからSimmonsの2枚のシングルも、Dud SoundのもLa No Rm Ayaのも収録されているということです)
確かに「I'm a streaker baby」で売っていた人ですから、際物扱いだったかもしれませんが、音とプレスは悪いものの、ブルースとしての内容の濃さはまずまずです。
リー・ショット・ウィリアムスが今これだけチトリン・サーキットで受けているのですから、生きていれば今でも一緒のステージが見られたかもしれませんね。

投稿: shackinbaby | 2010年3月15日 (月) 21時53分

鬼平犯科帳に,評判の良い慈善家が実は大盗賊の首領で,というような設定の話があったと思うのですが,まあ,そういう人なんでしょう,シモンズも.

> デトロイト・ジュニアのアルバム...

そうですね.ぴよぴよと,いかにもシモンズらしい演奏です.軽いけれど,ちょっと良い曲もあるLPだったと思います.今となっては話題になりにくい録音でしょうけれど.

> 際物扱いだった...

ライヴで本物のストリーカー(ストリーキングって代表的な死語ですが)が出てきた,っていうのは凄いセンスだと思います.

投稿: BackDoorO | 2010年3月15日 (月) 22時39分

アーリーン・ブラウンのLPアルバムは以前からCDリリースを待っていますがなかなか出ませんね。未だ、Pヴァインのコンピレーション「Loose the Funk」収録のImpeach Me Babyしか聴いたことありませんが、これはお気に入りです。Beverly "Guitar" WatkinsがCDアルバムで取り上げたりしてて、アーリーン嬢の代表曲といえる作品なのでしょうね。残した録音は少ないのでしょうから、まとまった形でのCD化を期待したいです。

投稿: 輪高 | 2010年3月16日 (火) 07時37分

> 「Loose the Funk」収録のImpeach Me Baby...

Impeach Me BabyのB面のYou're Gonna Miss Meというのも結構いい感じで私は好きですね.この辺は上手く売れるようなCDにまとめにくいかもしれませんが.

CDで聞けるので他に知っているのはElectro-FiのLittle Mack Simmons, The PM/Simmons Collectionの3曲くらいです.Impeach Me Babyはこちらにも,と思ったら,こっちはシモンズのハーモニカが入った別バージョンですね.SimmonsのLPに入ってるのもこっちじゃないかな.

投稿: BackDoorO | 2010年3月16日 (火) 20時09分

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