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2009年7月26日 (日)

ウルフ学校卒業生・その2

ヘンリー・グレイはBlues Unlimitedに1970年に録音したすぐ後,同じ年にArhoolieに3曲(Louisiana Blues, Arhoolie CD 9004),Excelloに4曲(Swamp Blues, UK Ace CDCHD 661)と録音がある.その後,少し間が空いて,1977年にドイツでLPを作った(They Call Me Little Henry, Blue Beat 7732),なんて話があるけれど,それは聞いたことがない.Blind PigのLP(Lucky Man, Blind Pig BP 2788)が出たのは,1988年らしい.Blind PigのLPの前,グレイはフロリダのSunlandレーベルから何枚かシングル盤を出している.

Henry Gray and The Mighty House Rockers, Don't Start That Stuff b/w Talkin' About You, Sunland 103.

Sunland103 Sunlandは,1980年代にベテランの,比較的古いスタイルのブルースをシングル盤で出していたレーベルで,コンピレーションLPも出ていたようだ.このSunland 103には1983年というリリース年が記されている.

ヘンリー・グレイはDon't Start That Stuffという曲を気に入っていると見えて,このレコードの後も何度か再演している.重みのあるナイス・スロー・ブルース.グレイは左手がしっかりとリズムを刻みながら,グリッティな歌を聞かせている.ハーモニカはウィスパリング・スミスだろう.

Talkin' About Youの方は軽快なシャッフルの,ルイジアナ風ブルース.グレイならではのよく転がるピアノがかなり聞ける.

両面とも昔ながらのブルースで,何も新しいことはないが,ダウンホームな感覚は心地よい.特にDon't Start That Stuffには聞きごたえがある.

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2009年7月18日 (土)

ウルフ学校卒業生・その1

ハウリン・ウルフの伝記本を読むと,ウルフのバンドにずいぶん色々な,その後の有力ブルースマンが出入りしていることがわかる.マディ・ウォーターズのバンドもそうだろうが,ウルフが常によく目を光らせて,出来ると思った若手には声を掛けていたようだ.当ブログで取り上げたミュージシャンだと,ウルフとレコーディングがある人で言えばデトロイト・ジュニアアブ・ロックジェイムズ・コットンフレディー・ロビンソンなんかが居て,一緒にレコーディングしたことはないけどバンドの一員だったことがある,というならバイザー・スミスジョニー・リトルジョンアルヴィン・“ヤングブラッド”・ニコルズ,という風に色々名前が上がる.

Henry Gray, You're My Midnight Dream b/w I'm A Lucky Lucky Man, Blues Unlimited 1001.

Bluesunlimited1001 ヘンリー・グレイはウルフの録音,例えばI Have A Little Girlなどで小気味よくピアノを叩いていた.ウルフのバンドに出入りしていた間,へべれけになってウルフにお目玉を食らう,なんてこともあったらしいが,バンドのメンバーにいつもきちんとした身なりをさせるウルフの姿勢を尊敬しているようだ.もちろん80歳を超えた今も現役で,今年も新しくCDが出たそうだ.CD時代になってから録音が増えた人で,CDも比較的良いのだが,年齢と共にピアノの腕も声も衰えるのは否定できない.

さて,このレコードはグレイがシカゴから故郷のルイジアナへ戻って録音したもので,レーベルBlues Unlimitedは有名プロデューサーのジェイ・ミラーのものだった.ということで両面とも昔FlyrightレーベルがやっていたThe Legendary Jay Miller Sessionsの大シリーズでLPリイシューされていて,You're My Midnight Dreamの方はGonna Head For Home (Flyright LP517,シリーズ第2集),I'm A Lucky Lucky Manの方はBaton Rouge Blues (Flyright LP607,シリーズ第42集)に入っている.

そのFlyright盤の解説に,「これが1970年の録音とは信じ難い」と書かれているが,本当にその通りで,まるで1950年代の録音のようだ.You're My Midnight Dreamは重々しいスロー・ブルースで素晴らしい出来だ.とりわけヴォーカルの味わいは抜群で,これにねちっこく絡むレイジー・レスターのハーモニカも好演だ.曲の方はジミー・ロジャーズがBlues All Day Longというタイトルで録音した曲.

I'm A Lucky Lucky Man
の方は軽快な曲でこちらも良い出来で,聞いていてうきうきする.この曲をグレイはその後何度か録音して得意にしている.録音はジョニー・ロジャーズという人が1959年にAtomic Hに録音したものが最初だろう.

1970年3月,ルイジアナ集クロウリーで録音されたもので,伴奏はレイジー・レスターの他,ウィルフォード・ムーア(ギター)とウィルバート・ムーア(ベース),ハーバート・ムーア(ドラム)の兄弟,となっている.2曲ともその翌月に再録音して,それはArhoolieから出ている.

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2009年7月12日 (日)

狼とその音楽(続き)

LPとかCDで聞けるからいいや,ということでハウリン・ウルフのシングル盤はほとんど持っていない.これは,昔,LPで持っていないな,ということで買ったレコード.

Howlin' Wolf, Pop It To Me b/w I Had A Dream, Chess 2009.

Chess2009 このレコード,入手して,しばらくしてLPで両面ともリイシューされ(Killing Floor, P-Vine/Chess PLP-6079),ずっと後になってCDでも両面とも出ている(Ain't Gonna Be Your Dog, MCA CHD2-9349).両面とも1967年6月の録音でエディー・ショウのサックス,ヒューバート・サムリンのギター,ボブ・アンダーソンのベース,カッセル・バーロウのドラムなどが伴奏を勤めているとされている.

このレコードの録音された1967年にはシル・ジョンソンのCome On Sock It To Meがヒットしていて,Pop It To Meは題名のIt To Meの部分がかぶる.それで,曲の作者は,CDの方ではシル・ジョンソンとジェシー・アンダーソン,盤の方はジョンソン,(ジョー?)アームステッド,アンダーソンと記されている.それにイントロを始め聞いた感じからしても,Pop It To MeCome On Sock It To Meのヒットによって作られたアンサー・ソングだろう.1960年代後半のブルースのシングル盤なら,片面がこの手のファンキー・ソウルなのはフツーだし,ウルフにもうちょっと広いマーケットを,とチェスが考えて録音させたのかもしれない.出来は,ちょっと無理な曲というか,歌いにくそうに聞こえる.

一転してI Had A Dreamはごくオーソドックスなシャッフルのシカゴ・ブルースで,さすがにこういうのになると素晴らしい.ウルフの声はフィーリングを力ずくで耳の穴にねじこんで来るようだが,これでもウルフの全作品のなかでは中くらいかなあ.ハーモニカ・ソロも聞けるほか,ヒューバート・サムリンがいつものように弾けるようなギターを聞かせる.

なお,ウチの盤は両面ともステレオ録音だが,MCAのCDではモノラル録音になっている.なんでだろ.

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2009年7月11日 (土)

狼とその音楽

ハウリン・ウルフの本をぼつぼつと読んでいる.

ジェイムズ・セグレスト,マーク・ホフマン(著),新井崇嗣(訳),ハウリン・ウルフ ブルースを生きた狼の一生,ブルースインターアクションズ,ISBN978-4-86020-260-6

Wolfbook 集められるだけ集めた資料と証言に基づく,偉大なブルース歌手の生まれてから亡くなるまでの物語で,まだ全部は読んでいないけれど,素晴らしい読みものだ.最初の方の少年時代のところなどは可哀想で読んでいられない感じだが,笑い有り涙有りのエピソードをいくつも読んでいるうちに,その人柄と音楽に対する情熱が浮かびあがってくる.ブルース音楽を聞き始めてからずっとウルフは好きだったけれど,それが間違いでなかった,というのか,自分のウルフの音楽に対する愛着は生ぬるかったんじゃないか,とか思えて来る.

本を読んでからウルフのCDを引っ張り出して聞き始めると,これがまた良い曲ばっかりでいくらでも聞ける.

本の中でお気に入りのところをいくつか挙げると,こんなふう.

・10代のヒューバート・サムリン少年,アーカンソー州セイベルのジュークでウルフの頭上に落下!(p.79. コントのようだが,これが二人の運命的出会い)

・ウルフ,17歳のエタ・ジェイムズにラヴレターを届けさせるも,あえなく沈没!(p.136.エタ,ウルフに「くそおやじ!」なんて言ったの?)

・チェス社長,ウルフに飛行機は走るものではなく飛ぶものであることを教える(p.169.これは昔P-Vineで出たLP,Walk That Walkで聞ける)

・リトル・スモーキー・スマザーズ,チェス・スタジオの初録音でチェス社長に一日中罵倒され涙目!(p.170.リハーサルも長かったらしいし,チェスは妥協しなかったからあの音楽の質を保てたのだろう)

・1965年,ローリングストーンズと共にテレビ出演中のウルフ,サン・ハウスと25年ぶりに再会!(p.224)

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2009年7月 4日 (土)

買わなかったLP盤のこと・その4

昔,輸入レコード屋にウェスト・ヴァージニア・スリムという人のLPが置いてあったのを覚えている.レーベルはKent(Kent LP543)だったかもしれないけれど,Unitedの再発盤だったかもしれない.何度かその盤は見たはずだが,ウェスト・ヴァージニア・スリムなんつっても,彼について評論家が何か書いてるのを見たことがなかったし,まるで感心を持てなかった.それで手に取ることもないまま,そのLPのことは忘れていたけれど,CDで再発とかあるのだろうかね.忘れても問題ないLPかもしれないが,今になって少しだけ気になっている.

Jimmy Slim and the Blues 5, Sweet Chicago b/w Hey, Y'All, Rika 109.

Rika109 このジミー・スリムというのがウェスト・ヴァージニア・スリムことルーシャス・ジョンソンなのだそうだ.ウェストコーストで1960年代に活動していたと思われる人で,歌うだけでなく,ハーモニカも吹くようだ.このシングル盤はKentのLPの前,1967年2月頃にロサンゼルスで録音されたものとされている.

それでジミー・スリムのウェスト・ヴァージニア・スリムだが,どんな人かと言えば,二流か二流半くらいのダウンホーム・ブルースマン.このRika盤を聞く限り,歌でも楽器演奏でも上手くはないけれど,雰囲気は悪くない.

容易に想像できる通り,Sweet ChicagoというのはSweet Home Chicagoだ.ただ,Sweet Home Chicagoとしては少し変わったつくりで,なんかジミー・リードっぽい.リードの曲だとI'm Going Upside Your Headとか,そんな感じ.歌い方もジミー・リードっぽくて,ジミー・スリムの「ジミー」はジミー・リードの「ジミー」のつもりかもしれない.そうでなければルーシャス・ジョンソンという名前のどこから「ジミー」が出てくるんだ,という話になりそうだ.途中ハーモニカ・ソロが入るけれど,ホルダー使用(?)のごく単純な演奏で,特に良いということはないが,ローダウンな感覚はある.

ジミー・スリムがいつでもジミー・リードそっくりなわけではなく,レイジーなスロー・ブルースHey, Y'Allではまた違ったスタイルになる.こっちはライトニン・スリムとかサイラス・ホーガン辺りに似ていないこともない.なお,この曲ではハーモニカは入らない.

ジミー・スリムという人,どう聞いても小物だが,特にHey, Y'Allの方は嫌いでないなあ.ウェスト・ヴァージニア・スリム名義のLPは古レコード屋に今でもあるかもしれない.安く売っていたら買ってみるか.

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