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2009年3月29日 (日)

マジックの始まり

前回のルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンはマジック・サムと接触があった人だが,マジック・サムと活動していた経歴を持つ一人にマジック・スリムがいる.マジック・スリムは大量の録音を行っているが,その最初期のレコード.

Magic Slim, Love My Baby b/w Scuffling, Ja-Wes 0105.

Jawes0105 1966年の録音ということで,マジック・スリムは29歳になっている.印象としては,若いな,というところ.The Blues Discography 1943-1970に出ているメンバーは次の通り.

Morris Holt (Magic Slim), gtr;
unknown, Vo;
Paul Brown, ts;
Robert Perkins, b;
Willie Jones or Skin Man Whitehead, d.

へえ,ヴォーカルはマジック・スリムじゃないのか,これ.楽器担当は4人だから少人数の編成だけど,まあ,スカスカ感は否めない.

Love Me Babyは,なかなか重々しいスロー・ブルース.問題は,誰だか分からないが,マジック・スリムではない人のヴォーカルだ.ごく抑えたささやくような調子の歌い方だが,それが弱々しいように聞こえてしまう.そうなると聞き物はマジック・スリムのギター,となるが,頑張っているけれども,特別に凄い才能を感じるということもない.ただ,1960年代の,小レーベルのシカゴ・ブルースならではの,どろっとした雰囲気は十分にある.なお,この曲は昔買ったRed Lightnin'のLP,When Girls Do Itに入っていて,個人的には懐かしい.

Scufflingというのは,何やらラテンぽいリズムでがちゃがちゃと始まって,これに語りが加わって,というダンス・ナンバー.

マジック・スリム,このJa-Wes盤からは,メジャーなブルースマンになるような気配はあまり感じられない.しかし,その後,1975年頃にMean Mistreaterレーベルで出したレコード(自分が聞いたのはRoosterのEPリイシューだったけれど)になると,聞き違えるような,ずっとエネルギーある演奏をしていて,ほぼ独自のスタイルを確立している.大器晩成の人だったようだ.

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2009年3月22日 (日)

目指せ,マディじじい

何の本で知ったのか忘れてしまったが,すんごい昔のこと,歌舞伎の愛好家の中に「団菊じじい」という人種がいて嫌がられたのだそうだ.この人達は,「自分が見た(明治時代の)九代目団十郎,五代目菊五郎に比べれば今どきの役者はなっとらん」みたいなことばかり言っていたらしい.この言葉を知って思いついたのは,自分は来日したマディ・ウォーターズを見ているので,「マディじじい」になるといいんじゃないか,というアイディアだ.年寄りになったら若いブルース・ファンを相手に「ワシは生きているマディ・ウォーターズやジョン・リー・フッカーを見たんじゃ!見てない奴らはガタガタ言うな!」つって威張って嫌われるの.老後の楽しみ方としてはいいんでないの.この素敵な計画にも欠点があって,それは,相手をしてくれる若いブルース・ファンが周りにいないとダメということで,そうなるとせっかくマディを見たのに自慢できないことになる.

という訳で,1980年のマディ・ウォーターズ来日と関係があるアーティストのレコードを.

L. Johnson Jr., I Been Down So Long b/w You Gotta Have Soul, Big Beat 133-1376.

Bigbeat1376 L・ジョンソンJr.の「L」はルーサーのLだ.ルーサー・ジョンソンというシンガー・ギタリストが3人いることは知られているだろう.1人目は1960年代のマディ・ウォーターズ・バンドにいたルーサー・ジョージア・ボーイ(またはスネーク・ボーイ)・ジョンソン,2人目は1970年代にマディ・ウォーターズ・バンドに加わったルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソン,3人目はIchibanでアルバムを出していたルーサー・ハウスロッカー・ジョンソンだが,この3人の区別がつかなくなっても深刻な問題はないんじゃないか.だってねえ,どのルーサー・ジョンソンが誰なのか分からなくても,生活上それほど困ることはなさそうだもの.などと言ったらそれぞれの熱烈ファンに怒られるか.

さて,このシングル盤はルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンの初録音とされているもの.I Been Down So Longはマジック・サムのOut Of Bad Luckだ.ルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンはマジック・サムのバンドにしばらく在籍したということなので,その時期にマジック・サムのスタイルとレパートリーを身に着けたものだろう.その後もマジック・サム風の曲を録音したりしている.出来の方は,当然かもしれないが,マジック・サムのオリジナル版ほどには感動しない.初録音で未熟だから,ということもあるが,どうにも小物,小粒で深いものに欠けると思う.ただ,誠実に歌っていて,元気の良さは感じられる.

You Gotta Have Soulは上手く出来ていれば格好よいシカゴ・ソウルになっていたところだが,上手く出来なかった,という感じ.

The Blues Discograpy 1943-1970は録音年を1968?としている.メンバーは結構有名人が入っていて,次の通り.

Luther Jonson, Vo., gtr;
Johnny "Big Moose" Walker, p;
Jimmy Dawkins, gtr;
Willie Kent, b;
Robert Plunkett, d.

ルーサー・ギター・ジュニア・ジョンソンの歌とギターを初めて聞いたのは,マディ・ウォーターズの来日公演のときだった.バンドのギタリストとしてジョンソンも日本へやって来たのだった.その時点で,輸入レコード店で普通に買える彼のレコードは全然無かったと思う.調べたら来日以前の1976年,ヨーロッパでLPを作っていたようだが,それをレコ屋で見た記憶がない.そんな訳で,今では多過ぎるくらいCDのある人だが,当時はソロ・アーティストとは思えない,ほぼ無名の人だった.現在の彼はおっさん,または年齢から言えばお爺さんというところだが,最初からおっさんだった訳ではなく,マディ・ウォーターズ・バンドの中で彼は随分若く見えた.1939年生まれなので,40歳を過ぎていたことになるのだが,マディ(当時65歳)やパイントップ・パーキンズ(当時67歳)に囲まれれば断然若く見えた.ジョンソンはマディが登場する前,ウォームアップ役として,何の曲だったか,ごくありきたりのスタンダード曲を1曲歌い,ギターを弾いてみせた.その歌とギターは,マディらよりはずっと若い世代のもので,それがなかなか良くて,「期待の若手」みたいな印象を持ったものだ.もっとも,マディが登場した後は,リード・ギターはマディ自身か,そうでなければボブ・マーゴリンが弾いたので,ジョンソンは居るのか居ないのか分からなくなってしまったのだが.それから何年かして,RoosterでアルバムDoin' The Sugar Tooを出した後は,ほぼ期待通りの活躍ぶりだったと思う.

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2009年3月15日 (日)

Changeを歌う

今度の米国大統領の選挙中のキーワードは「チェンジ」で,ちょっとした流行語になって良く聞かされる言葉だった.そう言えば,昔買ったシカゴ・ブルースのレコードで,チェンジ,チェンジと繰り返し歌っているのがあった,と思い出した.

Little Oscar, Gotta Make A Change b/w Two Foot Drag, Toddlin' Town 109.

Toddlintown109 リトル・オスカーは,シカゴのソウル・ブルース歌手で,Palosに録音したSuicide Bluesは特に傑作として有名だ.これは,前に書いたとおりシル・ジョンソンがカバーしている.他にSupreme Bluesレーベルからもブルースの曲を出している.また,シル・ジョンソンのShamaレーベルからはLittle O,Blue Chicagoというレーベルからは本名のOscar Stricklinという名前でレコードが出ている.某サイトで試聴したところLoving Man (Blue Chicago 01)はまあまあのファンク・ブルースのようだ.他に何かあるだろうか?レコードは少ない方ではないかと思う.

さて,「チェンジ」がキーワードのGotta Make A Changeだが,別に社会のチェンジを期待するとか,社会にチェンジを求めるとか,そーゆー歌では全然ない.女房が子供を連れて出ていってしまったのは自分が悪いから,自分がチェンジしよう,という歌.「気が狂いそうで自殺しそう」というSuicide Bluesと言い,なんか自分を責める人なんだろうか?

Suicide Bluesほど張りつめた空気はないけれど,Gotta Make A Changeにはそれなりの聞きごたえがある.タイプとしてはジョニー・テイラーのブルースが割と近い方かなあ.やや高めの美声で,じっくり歌われるスロー・ソウル・ブルースだ.

Two Foot Dragは,少しブルージーなファンキー・ソウル曲で,聞けないことはないけれど,特に凄いということもないと思う.

The Blues Discography 1943-1970は1969年シカゴで録音されたものとしている.歌を好サポートするギターはフレディ・ロビンソンが弾いているそうだが,オルガン,ベース,ドラムの奏者は分からないようだ.また,Two Foot Dragではホーンが入るが,これも奏者は分からない.曲の作者にはリトル・オスカー自身にスコット・ブラザーズのウォルター・スコットやハワード・スコットなどの名前も見えるので,彼らが伴奏に付き合っていても不思議でないが,どうだろう.

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2009年3月 8日 (日)

大声の持ち主のこと

前回は1960年代のシカゴ・ブルースのレコードだったが,その頃のシカゴ・ブルースで,リイシューされないか,リイシューされてもあまり流通しない海賊盤CDどまりで,忘れ去られそうなものはいくらかあるのじゃないか.

Andre Odum, Turn On Your Love Light b/w Fattening Frogs For Snakes, Nation 13.

レーベのアーティスト名を書いてある通り読むとアンドレ・オーダムと読みそうだが,もちろんこれはアンドルー・"B・B"・オーダム,つまり"ビッグ・ヴォイス"・オーダムのことだ.

Nation13 アンドルー・オーダムの歌は,随分昔のことだけれど,ジミー・ドウキンズのLP,All For Businessで初めて聞いたと思う.このLPの何曲かで,なかなか骨太な歌を聞かせていた.ずっと後になって,アール・フッカーが伴奏に入ったBlueswayのLPも聞いたが,やはり良かったと思う.ただ,オーダムは馬力があって悪くない歌手だけれど,歌い方はB・B・キングっぽくて独創性があるとは言えないし,大味と言うか変化に乏しい面もあるので,どうしても聞きたいという人でもない.オーダムはWASP,MCMなどでもLPを出したけれど,雑誌とかでそう誉められてはいなかったように思うし,この辺は聞いていない.なお,MCMのものはStoryvilleやFlying FishでCD化されたようだ.

さて,シカゴの小レーベルから出たこのレコードは,オーダムとしては多分最初のレコードになるもの.

Fattening Frogs For Snakesはサニー・ボーイ・ウィリアムソンNo.2に同名の曲があるけれど,まったく別の曲.ずっしりとした,緊迫感のある,聞きごたえのあるスロー・ブルースだ.1960年代のモダン・シカゴ・ブルースの良作の一つだと思う.

Turn On Your Love Lightはもちろんボビー・ブランドの有名曲.ジェイムズ・コットンとかもカバーしていた.このオーダムのバージョンは,大体原曲に忠実で,悪くないけれど,独自の解釈も欲しかった.

The Blues Discographyによると1967年の録音で,ホーン,ピアノ,ギター,ベース,ドラム,ボンゴを含むバンドのメンバーは分からないようだ.

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2009年3月 1日 (日)

名手の真価

ウェイン・ベネットはギターの名人だ.マイティ・サム・マクレインやボビー・ブランドの伴奏者として日本国にも来て,素晴らしい奏者であるところを見せていた.レコードの方では,大抵ボビー・ブランドとか,専ら誰かの伴奏者としての録音だから,少々地味な印象はある.

Wayne Bennett, Rocking (Funky Broadway) b/w Casanova (Your Playing Days Are Over), Giant 703.

Giant703 これは珍しくベネットの自己名義の録音だが,名手の真価を十分発揮しているかというと,どうもなあ.

Rockingは,題名から想像されるように調子の良いインストゥルメンタル曲で,ベネットのギターがクールに絡む,というもの.途中1コーラス弱くらい,割と格好よいソロが入るが,全体的には流し気味のように思う.

さて,このRockingに,フェントン・ロビンソンが歌をオーバーダビングしてLet Me Rock You To Sleepという曲にした,ということで知られている(?).Let Me Rock You To SleepはP-VineのLP/CD,The Mellow Blues Geniusに入っているので聞き比べてみると,伴奏は同じようだが,ギターは違う.Rockingの伴奏トラックだけをそのまま使い,ベネットのリード・ギターは使わず,フェントン・ロビンソン自身のギターに入れ換え,で,ロビンソンに歌わせてLet Me Rock You To Sleepが出来たもののようだ.

裏側のCasanovaもインストゥルメンタルだが,ポピュラー・ソングのような曲で,何だこりゃ,と思う.ギターは随分弾いているけれど.

というわけで,悪くもないけれど,名人の自己名義録音としては物足りなさを感じる,というところ.

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