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2008年9月27日 (土)

意外とモダン・その2

ロイ・ブラウンは1970年代に入ってすぐ,Friendshipというレーベルからシングル盤を出していて,これについてJeff HannuschのI Hear You Knockin' (Swallow)のロイ・ブラウンの章はこう書いている.

(引用始め)(Friendshipレーベルに吹き込んだ)タイトルの1つ,Love For Saleは全国版のヒットチャートには入り損ねたものの,かなり評判になってMercuryレーベルにリースされた.その曲は,Let The Four Winds Blow以降の彼のレコードとしては一番良く売れた.(引用終り)

Let The Four Winds Blowというのはロイ・ブラウンがImperialに録音した曲で,1957年にビルボードのR&Bチャートで最高位5位までいったヒット曲だ.Love For Saleが出たのは1971年頃だから14年ぶりの浮上ということか.

Roy Brown, It's My Fault Darling b/w Love For Sale, Friendship 701.

Friendship701 Love For Saleが,十分とは言えずとも,良く売れたのは,ブラウンが1970年のモンタレー・ジャズ・フェスティバルに出演したことと関係あるかもしれない.だけど,それよりなにより,組んだプロデューサー/アレンジャーが良かったことが成功の最大の理由だ.レコードのレーベルに記載されている通り(小さい字で左のレーベルのスキャンでは読みにくいけれど),「Arr. & Prod. M. Grayson」だからなあ.当時絶好調の奇才マイルス・グレイソン,ヒットから遠ざかったベテランの再生もお手のものだっただろう.

そのLove For Sale,活きの良いリズムに乗って,よく歌うスクイーズ・ギターが1コーラスのソロを弾き,それをイントロとしてブラウンは歌い出す.最初聞いたとき,序盤の部分で歌い方が少し軽いか,と思い掛けたが,よく聞けばそんなこともなく,強弱高低,自在に声をコントロールして聞き手を引き付けていき,決めの文句の「Good Rockin' Brown is back in town」で声のピークに持っていく.その呼吸の良さといったら,流石だ.伴奏陣では,揺るぎないリズムで曲を駆動するベース,ドラム,リズム・ギターがとても心地よい,ということもあるが,ブラウンの歌にきめ細かく反応するリード・ギターの好サポートが光る.一方,ホーン・アレンジ名人のマイルス・グレイソンには珍しく,ホーンは聞けないが,その代わりにオルガンが重厚な響きを曲に加えている.この曲には,確かに繰り返し聞きたくなる魅力があって,1970年前後のウェスト・コースト・モダン・ブルースの逸品の一つとしてよいだろう.

マイルス・グレイソンはIt's My Fault Darlingではずっと凝ったアレンジをしていて,自信があったのか,こちらをA面にしている.ただ,これが成功作かというと,そうでもない.曲の方はグレイソンとラーモン・ホートンの作で,グレイソンは同じ曲をリトル・ジョニー・テイラーにも録音させている.そのリトル・ジョニー・テイラーのものと,このロイ・ブラウンのもので,どちらが先に録音されたのかは分からないが,「仕事から早く帰ったら,女房が変な男を」みたいな内容からすればLJTのために作ったのだろう.

さて,このロイ・ブラウンのバージョンだが,LJTのものとはかなりアレンジを変えている.ワウワウを掛けたギターがぴょんぴょん飛び跳ねるようなリズムを弾いているのを始め,ずっとファンキーに仕上げているのだ.グレイソンはLJTやテッド・テイラーにも結構ファンキーなのを録音させているし,「その方が売れる!」という確信があったかもしれない.しかし,変則的なリズムのせいでロイ・ブラウンは歌いにくそうに聞こえ,その実力が十分発揮されたとは思えない.イントロが印象に残るとか,最後の方のスクリーム具合は凄いとか,プラス面はあるけれど,聞きたくなるのは断然Love For Saleの方ということになる.

最初に書いたようにこのレコードはMercuryからMercury 73166という番号で再発されている.Mercuryは色々リイシューが出たから,この2曲も何かのCDで聞けるのかも知れない.

ロイ・ブラウンとマイルス・グレイソンの間のフレンドシップがどんなものだったのか,分からない.もし,このレコードの後,Mercuryでマイルス・グレイソンのプロデュースとアレンジの下,ロイ・ブラウンがもう2,3枚シングル盤を作るとか,LPの1枚も作るとかすれば素晴らしかった,などと思ってしまうのだが,それは実現することがなかった.

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