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2007年11月 5日 (月)

このあたりでチェス・その6

これは,むらた まことさんに教えて頂いた逸品.

Johnny Thompson, So Much Going For You Baby b/w Bell Bottom Sue, Checker 1163.

Checker1163Sleeper...

このレコード,1960年代のブルースとしては,素晴らしい作なのだが,The Blues Discography 1943-1970にも,その前身のBlues Records 1943-1970にも出ていない.さらに,The R&B IndiesのCheckerの項を見ると,このレコードの番号Checker 1163は,アーティスト名も曲名も空欄になっている.このレコードが作られたのは1966年頃のようだが,それから40年くらいの間,誰も気がつかなかったということだろうか?この45回転盤は,近頃の相場からすればごくフツーの値段でつい最近買えたのだが,それは今でもその価値があまり知られていないから,なのだろうか?長い間忘れられていて,急に価値の出る骨董品や競馬の穴馬のことを英語でsleeperというのだそうだが,このレコードなんかは本当にsleeperだろう.しかし,そろそろ長過ぎる眠りから目覚めさせるべき時期なのではないか.

今後,ブルースのディスコグラフィには,Johnny Thompsonの項に次の2曲を追加しなければならない.

Chicago, circa 1966
Johnny Thompson, Vo; unknowns gtr, saxes, p, org, b, d.

14971    Bell bottom Sue             Checker 1163
14972    So much going for you baby  Checker 1163


その音楽

So Much Going For You Babyに針を降ろす.すると,ごく短いベースのソロに続いて,深みのある声で歌が始まるのだが...何ですか,この本格派のスロー・ブルースは?ジョニー・トンプソンは誰に似ているということもないが,B・B・キング以降のスタイルで,同じ時代の歌手だったらDukeのジェイムズ・デイヴィスとか,シカゴの人ならアーティー・ホワイトとか,そういうジャンルの人のように聞こえる.伴奏の方はギターもホーン陣も地味に聞こえるが,厚みのある,緊迫感のある音で歌を最大限に引き立てている.名門チェスでこれだけのものを作ったら,この人,もうちょっと売れて欲しかったところだ.

Bell Bottom Sueは歯切れの良いシカゴR&B.曲の形式や歌の文句は12小節AAB形式のブルースを元にしているようで,ブルース畑から出てきた人らしく思われる.


A. Williamsのこと

両面とも曲の作者はJ. Thompson - A. Williamsとなっている.このA. Williamsだが,Aで始まる名前は色々あるけれど,アンドレ・ウィリアムズだと思って間違いないだろう.レーベルにはプロデューサーの名前は見えないが,プロデュースも彼だろうか.アンドレ・ウィリアムズ自身がアーティストとしてCheckerでレコードを出したのは,レコード番号からいっても,マトリックス番号からいっても,もう少し後だろう.しかし,彼はコンポーザーとしても既にヒット作を出していたから,その実績を買われたとすれば,自身の録音以前から楽曲の作者としてチェスに出入りしていたのかもしれない.

Checker1163composer

ジョニー・トンプソンとアンドレ・ウィリアムズのつながりを示すレコードはまだある.トンプソンは1970年台にNewmissというレーベルから,シングル盤Mainsqueeze b/w I Lost Everything, Newmiss 777-1を出している.これは割と格好良いファンク曲とごくブルージーなソウル・バラッドの組合せだが,2曲とも作者はAndre Williamsとなっている.ウィリアムズとしてはジョニー・トンプソンに売れる可能性あり,と見て曲を提供していたものか.

Newmiss7771composer


現役ブルーズン・ソウル・シンガー

謎めいているジョニー・トンプソンだが,今,彼は自身のレーベルJ-Tを持っていて,そこからCD,Johnny "T" Thompson, Girl I Love You (J-T 93984)を出している.CDの売り文句によれば,シカゴ出身の彼は,現在はフロリダ州オーランドに居るのだという.彼の最初のレコードはここで紹介したChess/CheckerのSo Much Going For You Baby,2作目は上述のNewmiss盤だそうだ.もっとも,そのNewmiss盤が全国ヒットした,というのは信じ難い.そんなに当たった曲があったら,もう少し有名になっていたんじゃないか,と思う.

Johnnytcd CDの収録曲を見ると,The Town I Live In(マッキンリー・ミッチェル),There's Something On Your Mind(サニー・ワーナーとビッグ・ジェイ・マクニーリー),Cut You Loose(リッキー・アレン),Got To Find A Way(ハロルド・バラージュ)という具合にR&Bやシカゴ・ソウルの古典曲が見える.このレパートリーを見ると大体どういう位置に居た歌手なのか分かるようだ.

また,彼はビル・ピンクニーのオリジナル・ドリフターズに何年間か参加して,世界中巡業してた,などという経歴もあるそうだ.もしかすると,ドリフターズの一員として日本の土も踏んでいるのかもしれない.

今後,CDをきっかけとして, 「伝説のチェス・レコーディング・アーティスト」みたいな感じで遅すぎる脚光を浴びる可能性もある,かな?

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コメント

ネット上でCDは試聴できました。ハロルド・バラージュ、マッキンリー・ミッチェル、タイロン・デイビスらの代表曲をやってるので、そういう気質の人なのですね。打ち込み省エネ・サウンドが主流だった80年代と違い、ガツンと歌えるシンガーがしっかりしたバンドでちゃんとしたアルバムが出せる今のご時世、ほんと 「伝説のチェス・レコーディング・アーティスト」として、カバーばかりではない立派なアルバムを期待したいです!

投稿: 輪高マリ | 2007年11月 6日 (火) 19時08分

歌う力を保っているなら,もったいないですよねえ.バンドとか曲作りとか1960年代のシカゴ・サウンドを再現して,って無理ですかね.

投稿: BackDoorO | 2007年11月 6日 (火) 20時20分

初めまして、名前の通りBB、ブランド、JBファンの37歳です。
JBの一周忌も近いですが、私のJBコレクターの師匠のBBSで
アメリカ在住の方が肺炎で入院と書き込んでから直ぐに訃報で
流石に凄い衝撃を受けました。昨年の日本最終公演で「しばらく
日本には来られないかもしれない」と発言。あのJBが随分弱気
だなと思ったら、まずやらないアンコールまでやって、これは
もう来日は無理かな、でもアメリカではライヴはやるんだし
新作も製作中らしいし、JBだしと思っていましたので…。
その最終公演でも、モロブルースな曲をキーボードで演奏。
ギターも2003年の白人の若手から黒人のベテランに交代で
やはり根っこはブルースな人だなあと実感。

さて、ブランドの別テイクの話題が以前書かれていましたが、
I'll Take Care Of Youもありました。83年に出たチャーリー
のLP、foolin with the bluesでのテイクはオルガンが全く
違うフレーズです。P-VINEから出たCDとMCAから出たテイク
は同じですから、マスターの取り違えですかね?

あと、DUKE時代のシングルですが04年にヤフオクに出てました。
「恋はにが手(Ain't Nothing You Can Do)」と「Honey Child」、
1964年8月、ビクター (JET-1418, 330円, mono)
値段は25,000円!当然(?)誰も落札せず。何枚現存している
やら?

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 04時06分

出していたのはこの方です。確かに出している物からして持って
いそうですね。

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 04時15分

私の好きなこの3人の共通するのは、ドラマーがジョン・スタークスだったことですね。ブランドからギャラが良いのでJBの絶頂期
時代66年から75年まで居て、その後BBのバンドでブランドと共演した2枚目のライヴで叩いてました。
彼は教則DVDも出してまして、JBのライナーを書いているハリー・ワインガーが何時録音したとか解説しながら教えてくれるとてもファンには堪らない内容になっています。

因みに昨年のJBライヴの打ち上げにJBファン歴40年の大先輩に
連れられて行きました!このDVDにも出ているベースのフレッド・
トーマスとタクシーでソウル・バーまで移動。当然緊張と英語の
知識がないので(笑)喋れず。と、言うかその前にプリンスホテルで
あの名物MCのダニー・レイが水割り飲みながらあの声で喋って
いるのに感動しました!あの声だ、この顔だよーと。
バーでは当然JBを聴きながら、ダニーの体がリズムをとるのを
目撃、流石40年聴いていて職業病です(笑)。いやー凄い体験でした
ねえ。因みに大先輩はJBのお葬式まで行ったそうで!ここまで
やれれば凄いの一言ですね。

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 04時45分

I'll Take Care Of Youもありました。83年に出たチャーリー
のLP、foolin with the bluesでのテイクはオルガンが全く
違うフレーズです。P-VINEから出たCDとMCAから出たテイク
は同じですから、マスターの取り違えですかね?

すいません、勘違いしてましたMCAの2枚組のテイクが別テイク
でした。こうやって調べるとアメリカMCAの仕事はいい加減ですねえ…。

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 08時21分

BBJBCDさん,はじめまして.

> その最終公演でも、モロブルースな曲をキーボードで演奏。
> 根っこはブルースな人だなあと実感。

JBの世代(1933年生まれ)だと,子供の頃の流行音楽はブルースだったでしょうから,ブルースも身についていたんですね.本を見たら子供の頃にルイ・ジョーダンのCaldoniaをいつも歌っていた,なんて話も出てきました.JBの日本公演を私は見ていないのですが,そんな「隠し芸」が出てくるなら見ておくべきでした.

> DUKE時代のシングルですが04年にヤフオクに出てました。
> 恋はにが手(Ain't Nothing You Can Do)」と「Honey Child」、
> 1964年8月、ビクター (JET-1418, 330円, mono)
> 値段は25,000円!当然(?)誰も落札せず。

う~ん,レア度からすれば高値がついても不思議はないけれど,最初から2万5千円はキビシイですねえ.それにしても日本ビクターは当時よく出したもんです.

リンク頂いた方は何かオークション終了のページに飛んじゃいますが,古い日本盤のシングルを色々出している人はいるようですね.マメにチェックすると掘り出し物があるかな.

> ブランドの別テイク...
> I'll Take Care Of Youもありました。
> MCAの2枚組のテイクが別テイクでした。

MCAの2枚組CD,I Pity The Fool/The Duke Recordings, Vol. One (MCAD2-10665)ですね.今,聞いて確認しました.本当に,これ,オルガンが全然違いますね.このCDの方は完成途上のテイクのように聞こえます.

どうもDuke音源の保存や整理があやしいようでもあるし,MCAのリイシューではよくチェックしていないようでもあり,困ったもんです.まあ,別テイクでも何でも出しただけマシ,と思うべきかもしれませんけど.

> 昨年のJBライヴの打ち上げにJBファン歴40年の大先輩に
> 連れられて行きました!

おお,それは素晴らしい.生涯の宝になりそうな経験ですね.

では,今後もよろしくお願いします.

投稿: BackDoorO | 2007年11月11日 (日) 11時15分

ご丁寧なお返事ありがとうございます。

>リンク頂いた方は何かオークション終了のページに飛んじゃいますが,古い日本盤のシングルを色々出している人はいるようですね.マメにチェックすると掘り出し物があるかな.
今もお持ちだと思いますが、また出品するのでしょうか?

アメリカの音源管理はいい加減なんでしょうね。ある大手の
レーベルではバイトに整理させてテープが滅茶苦茶になった
そうです。今のソニーが持っているレーベルです。ステレオの
マスターが見つからなくて、やっと出てきたとか…。

JBのブルースカバーは以前2枚組で発売されてました。
MESSING WITH THE BLUESというコンピです。
THE THINGS THAT I USED TO DO、CALDONIA、GOOD ROCKIN' TONIGHT 、EVERY DAY I HAVE THE BLUES、FURTHER ON UP THE ROADなんて有名な曲をカバーしているんですよね。

まあ詳しくは師匠の気合の入ったサイトで。レコ漁日記の昨年の
3月に打ち上げの細かい話もあります。とにかく半端な数ではない
情報量です。

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 13時55分

素朴な疑問なんですが、BBのアルバム「ジャングル」オリジナルは青っぽい縁取りで、何故75年のビクターの再発以降は黒なんでしょうか?今回の紙ジャケも黒でした。オリジナルにはこだわらない
のか?まあ、内容とは関係ないですが。

投稿: BBJBCD | 2007年11月11日 (日) 14時00分

> アメリカの音源管理はいい加減なんでしょうね。ある大手の
> レーベルではバイトに整理させてテープが滅茶苦茶になった
> そうです。今のソニーが持っているレーベルです。ステレオの
> マスターが見つからなくて、やっと出てきたとか…。

やれやれ.恐ろしい.失われる音を0にもできないでしょうし,過去のレコードが何でも将来に残すべきだとも言いませんけど,ある音楽ジャンルの歴史を作ったようなものだけは大事にして欲しいですよ.

> JBのブルースカバーは以前2枚組で発売されてました。
> MESSING WITH THE BLUESというコンピです。

そんなのが出ていましたか.JBは守備範囲外のように考えていたので,知りませんでした.2枚組が作れるんじゃ,結構ブルースも録音してるんですね.

> まあ詳しくは師匠の気合の入ったサイトで。

URLをここに書いておきます.

http://www.bekkoame.ne.jp/i/jb-escape/

かなり完璧なディスコグラフィなどもあって,役に立ちそうです.

> BBのアルバム「ジャングル」オリジナルは青っぽい縁取りで...

ウチにあるKent盤も青い縁取りです.これは再プレスだと思いますが.黒い縁取りのKent盤が出たことがあるのか,なんとなく誰も気が付かなくて,日本ビクター盤以後そのままになっているのか,ちょっと分かりません.

投稿: BackDoorO | 2007年11月11日 (日) 19時10分

UKのACEから出た4枚組の箱物のブックレットでも青でしたので
初版から青のようです。ユナイテッドから出た再発は微妙に
デザインも違う。

投稿: BBJBCD | 2007年11月12日 (月) 06時06分

これも青ですね。黒にしたのはビクターの判断か?
とにかくオリジナルとは違うのは確かなようです。
しかし、65年に1回だけケントに録音したのをずっと
調べなかったんですから、ディスコグラフィも当てに
なりませんね…。
JBのディスコグラフィも証言によってドラマーが
異なっていたりと謎が多いです。
>結構ブルースも録音してるんですね.
BBと共演しているDVDもありますから。BBが前座です。
最後に共演してSWEET LITTLE ANGELを歌ってます。
紙ジャケで再発されたSUPER BADのGIVING OUT OF JUICEは
JBがオルガン弾きまくる完全なブルースで、昨年のライヴは
この曲のインスト版ですね。
ギターはジョニー・オーティスのバンドに居たJimmy Nolen
ですし、ドラムはブランドバンド出身ですからブルースはお手の物
で演奏できます。
やはり紙ジャケで出たGET UP OFFA THAT THINGにも、いきなり
Jimmy Nolenがギターを弾くブルースが入ってます。

アルバートにフレディもJBのカバーをインストでカバーして
いますし、ジュニア・ウエルズもバディ・ガイもカバーしている
くらいですから根っこは同じですね。

投稿: BBJBCD | 2007年11月12日 (月) 06時41分

こちらが初版のリンクです、すみません。

投稿: BBJBCD | 2007年11月12日 (月) 06時44分

> UKのACEから出た4枚組の箱物のブックレットでも青でしたので
> 初版から青のようです。

なるほど.どうも「青」有力ですかね.レーベルがグレーに黒文字,で,モノラルの盤(KLP5021)を見るまでは結論できないとは思いますが.

> BBと共演しているDVDもありますから。

ああ,有りましたねえ,って買っていませんが.

ジミー・ノーレンはブルース屋のセッションで出てきますし,自己名義の録音もそこそこありますよね.

> ジュニア・ウエルズもバディ・ガイもカバーしている...

ジュニア・ウェルズなんかはジュニア・JBかよ,ってことも度々ですから.

では,また.

投稿: BackDoorO | 2007年11月12日 (月) 19時27分

Johnny Thompson の話に戻りますが‥‥

「伝説のチェス・レコーディング・アーティスト」的な構成のbluesのLPはp-vineから昔出ていて、その中にちゃんと入ってましたよ。

投稿: ali | 2007年11月17日 (土) 10時39分

> p-vineから昔出ていて、その中にちゃんと入ってましたよ。

The Real Chicago Blues Today - 60's Style, Chess(P-Vine) PLP-6083ですね.ホントだ,これ,入っていますね.やれやれ,何年も聞かないものだから忘れていましたよ.まあ,リイシューされている訳がない,という先入観もあってチェックしなかった,せいでもあるんです.ご指摘ありがとうございました.

このLP買ったときは,デトロイト・ジュニアの2曲が好きで,繰り返し聞いたもんです.トンプソンのSo Much Going For You BabyはLPの中でも目立つ出来ですが,何で忘れていたものか,訳が分かりません.ジョニー・トンプソンって名前がフツー過ぎて印象に残らなかったんじゃないか,なんて妙なことを思います.

かなり以前にリイシューされているのですから,ディスコグラフィー類に記載されていないのは何とかして欲しいです.

投稿: BackDoorO | 2007年11月17日 (土) 12時19分

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