« 意外な展開 | トップページ | またか,と言われても十八番 »

2007年8月 1日 (水)

サンタ・フェ鉄道の旅

テレビで見たのだけれど,その列車を牽引する機関車には大きな字でSanta Feと書かれていた.ちょうど,この写真のような感じだった.

サンタ・フェの機関車の写真

サンタ・フェ鉄道について検索すると,Wikipediaのエントリーに行き着いたりする.

Wikipedia: Atchison, Topeka and Santa Fe Railway

そこに出ている現在の路線図を見ると米国南部,北部,西部を結んで相当複雑なことになっているが,元々はニューメキシコ州サンタフェからカンザス州トピーカに至る鉄道路線として開業したものだそうだ.テキサスの方へ行く路線等はその後できたものらしい.

サンタ・フェ鉄道はブルースの歌詞の題材としてよく使われてきた.題名に「サンタ・フェ」と入る曲は,ヴィクトリア・スピヴィー,ジム・ジャクソン,リトル・ブラザー・モンゴメリー,ピーティー・ウィートストロー,ウィリー・フォード,スミス・ケイシー,サンダー・スミス,リー・ハンター,ママ・ヤンシー,と,ウチにあるのだけでも随分色々ある.これらのブルースだが,いずれもサンタ・フェ鉄道にまつわる内容ではあっても,どうも歌詞の方の路線はばらばらで,その間の関係はあまりないように思える.例外的にリトル・ブラザー・モンゴメリーのSanta Fe Bluesとサンダー・スミスの同名曲が,第1ヴァースで同じ歌詞を使っており,少しだけ相互乗入れしていることに気が付くくらいだ.

そんな訳で,混沌とした一連のサンタ・フェものブルースだが,そのリストには1965年メンフィス産の1曲も含まれている.

Clyde Hopkins, Fatten Pin b/w Santa Fee, Black Gold 305.

Blackgold305 Santa Feeは,綴りはヘンだが,サンタ・フェ鉄道にまつわるブルースである.これが,絶妙のダウンホーム・ブルース.重厚で響きの美しい,印象的なピアノのイントロから始まり,スロー・ブルースがじっくり展開していく.ホプキンス自身の歌の他,ピアノ,ギター,サックス,ベース,ドラムスというバンド構成で,演奏の技量は優秀ではない,というか平凡だろう.くぐもった声で歌うホプキンスが強力な歌手という訳でもない.しかし,ギターもサックスも決して歌を邪魔することなく,全体に調和がとれていて,自然に歌の世界に引き込まれる.

このクライド・ホプキンスの曲だが,それ以前に吹き込まれたサンタ・フェ鉄道もののブルースと関係があるのだろうか?聞き比べてみたら,関係する曲のあることが分かった.それはピーティー・ウィートストローが1936年に録音したSanta Fe Bluesで,ピーティーが第3ヴァースで使っている歌詞をクライド・ホプキンスは第1ヴァースで使っているのだ.曰く,

    寂しいと思ったら,そこに座って,手紙を書いてくれ.
    そしたら俺はグレイト・ノーザン線か,そうでなければサンタ・フェ鉄道で飛んで帰る.

グレイト・ノーザンというのはミネソタ州とか北部を走っている鉄道のようだ.

Great Northern Railway Historical Society

グレイト・ノーザン鉄道とサンタ・フェ鉄道は方角的には代替になるような関係でもなさそうで,この歌の主人公は一体どこにいるんだ?というツッコミがあっても不思議でない.おそらく,よく知られた長距離の鉄道路線ということで名前が出てきたのだと思う.

Garonpeetie なお,ピーティーのSanta Fe Bluesの歌詞はピーティーに関する研究書,Paul Garon, The Devil's Son-in-Law, Charles H. Kerrで紹介されている.この本,もともと1971年に出版された本の改訂版で,2003年に出ている.まあピーティーのことがすごく好きなら入手しても...という本かなあ.

クライド・ホプキンスは,どこかでピーティーのレコードを聞いてその歌詞を覚えたのだろうか.ホプキンスは21世紀に入ってからCDを作っているそうなので,世代的にはピーティーの活躍期にぎりぎり間に合うかどうか,というところだと思う.最初のヴァース以外はピーティーと共通の部分は無いようだ.ホプキンス自身の歌詞となっている,というより適当にどこかで聞いたようなブルース詩を繋げているように思われる.

マトリクス番号からするとA面(?)のFatten Pinというのはウォーキング・テンポのブルース曲.歌い方は普通にAAB形式のブルースだけれど,なぜか,この曲,途中でコードが変わらない.間奏のラッパのソロは本物なのか声帯模写なのか分からないような感じ.全体にドサクサとしているが,ざらざらしたホプキンスの歌を中心にワイルドな魅力はそれなりにある.

クライド・ホプキンスのことはブルース&ソウル・レコーズ誌の第67号(2006年2月)の記事,This Magic Moment(pp.124-125)でかなり詳しく書かれている.記事を書かれた日暮泰文さんはミシシッピ州ロビンソンヴィル辺りの電柱でこの人のポスターを見た,とも,彼がシングル盤とCDを出しているNotownというレーベルの住所がミシシッピ州ルールヴィルだ,とも書いておられる.だとすればミシシッピ州内を拠点とする人なのかもしれないし,上のBlack Gold盤が作られたメンフィス辺りの人なのかもしれない.なんとなくシンガー・ピアニストと思い込んでいるのだが,彼の楽器演奏については確かなことが分からない.Black Gold盤以外の録音はNotownから出た1980年のシングル盤1枚と2005年頃のCDが1枚あるだけのようだ.1980年のシングル盤というのは我が家にあるのだがCDの方は未聴で,そのCD,どこに行けば売っているのかよく分からない.

それにしても,ミルス・アレンにせよ,クライド・ホプキンスにせよ,トム・フィリップスはどこで,どうやって,こんな超ダウンホームな人達を生け捕ってきたのだろうか.

|

« 意外な展開 | トップページ | またか,と言われても十八番 »

コメント

いいなぁ、こういう文章。
素晴らしい考察です。
ところで、Notownではなくて、Nutownみたいです。
ここからもう一枚アルバム出しています。
http://www.excite.co.jp/music/product/?k=Clyde+Hopkins&target=artist

投稿: むらたまこと | 2007年8月 4日 (土) 00時02分

> ところで、Notownではなくて、Nutownみたいです。

なるほど,CDはNutownていうレーベル名で出ているんですね.
1980年のシングル盤はNotownというレーベル名でした.まあNutownもNotownも同じなんでしょうけど,Motownのパチモンみたいなので改名したんですかね.

どこに行けば売っているのか...なんて書いちゃったらAmazonとかで検索しても普通に2枚とも出てきますね.やれやれ.

投稿: BackDoorO | 2007年8月 4日 (土) 10時52分

「サンタフェ・ブルース」の音源を持たないのに、かの地に想いが飛んでロマンが広がっちゃいます、嗚呼。Pヴァインの戦前テキサス・ピアノ・ブルース集「サンタフェ編」というCDが以前から気になりつつ未入手でしたが、また欲しくなりました。

投稿: 輪高マリ | 2007年8月 5日 (日) 17時43分

いわゆるサンタ・フェ派と呼ばれる,テキサス南部のピアノ・ブルースマンのレパートリーにもSanta Fe Bluesというのがあった,らしいですが,あまりレコードになっていないようで,どのSanta Fe Bluesかよく分かりません.サンダー・スミスとかリー・ハンターとかはその流れを汲む人達かなあ,と思います.

> 戦前テキサス・ピアノ・ブルース集「サンタフェ編」

これは,どこかで売っていたら是非どうぞ.

投稿: BackDoorO | 2007年8月 5日 (日) 23時12分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103105/15977439

この記事へのトラックバック一覧です: サンタ・フェ鉄道の旅:

« 意外な展開 | トップページ | またか,と言われても十八番 »