« チャンピオンのロックンロール時代・その1 | トップページ | ニューヨーク・ギタリスト/ロッキン・ブルースマンその1 »

2007年8月23日 (木)

チャンピオンのロックンロール時代・その2

チャンピオン・ジャック・デュプリーがブルース・アーティストとしては有名人だ.だけど,ジャック・デュプリーが一番好きだ,というブルース・ファンが大勢居るという気はしない.個人的には,録音があまりに多過ぎて,あまり作品をマメにチェックする気にならない人,というところか.力強い声,多彩とは言えないが乱暴なくらいワイルドなピアノ,ところどころ顔を出すニューオーリンズ臭,と,その個性には魅力があるのだけれど.

デュプリーが米国内で活動していた1940年代~1950年代の録音でベストはどれだろうか?最初期の1941年のColumbia録音,1944年のJoe Davis録音,Continental録音等は歌とピアノの他にはドラムが入る位の,弾き語りに近いスタイルで作られている.これらの録音は,印象に残る録音ももちろんあるけれど,リロイ・カー似であったり,ピーティー・ウィートストロー似であったりして,個性に欠けるのも結構多いと思っている.その後の小編成のバンドが付いたもの,Red RobinとかKingの録音とか,AtlanticのBlues From The Gutterとかの方が密度が高いのでないか.Vik録音もそのセンのものとして評価してよさそう.

Champion Jack Dupree And His Orchestra, Old Time Rock And Roll b/w Rocky Mountain, Vik 0279.

Vik0279 このレコード,前回のDirty Woman b/w Just Like A Womanと同一セッションで録音されたもの.ラリー・デイルのギター,ジーン・ムーアのドラム,アル・ルーカスのベースが付く1957年のニューヨーク録音.

Old Time Rock And Rollだが,ロックンロール音楽全盛期に演じられた「昔のロックンロール」とは何だろうか.実は盤面に針を降ろして,イントロが出たところで「ああ,そうか」と分かってしまう.デュプリーの語りの中に「1929年」という年が出てくるが,デュプリーがここでやろうとしているのは1928年の暮に録音されたパイントップ・スミスのPine Top's Boogie Woogieの1957年バージョンなのだ.デュプリーの語りはオリジナルで「ブギウギ!」と叫ぶところを「ロックンロール!」と言い替えた感じだし,ピアノはデュプリー独特の手癖が混じるが,まあ大体昔のブギウギに倣っているようだ.ただ,ドラムとギターが何やら南国風(なのか?)ビートを叩き出しているので,曲全体としてはあまりPine Top's Boogie Woogieっぽくない.

1910年生まれのジャック・デュプリーだから,Pine Top's Boogie Woogieのオリジナル録音が発売されたときは18か19歳.ティーンエイジャーのときにリアルタイムでこの古典曲に出会っているのかもしれない.1957年に,ロックンロールがダンス音楽としてティーンエイジャーの人気を集めているの見ると,「そんなもん,昔からあるわい!」と言いたくなるジャック・デュプリーを想像しながら聞くといいかも.

話は横道に逸れてしまうけれど,前回アクセル・ツヴィンゲンベルガーの名前を出したら彼の名前を検索ワードにしてここに来る人が結構いる.レ・フレール人気恐るべし,ということか.ツヴィンゲンベルガーよりパイントップ・スミスなりアモンズなりルイスなりを先に聞くべきだと思うけれどね.調べてみるとツヴィンゲンベルガーはジャック・デュプリーとの競演盤を複数作っているようで,やはり関係は深いようだ.ウチにあるツヴィンゲンベルガーのCDはBoogie Woogie Classicsといって,タイトルからしたらPine Top's Boogie Woogieも入っているかな,と思ったが入ってなかった.代わりにアルバート・アモンズのBoogie Woogie Stompを演奏していて,これはPine Top's Boogie Woogieを下敷にした曲だ.という訳でデュプリーもツヴィンゲンベルガーもPine Top's Boogie Woogie由来のものをやっている,というお話.

盤を引っくり返して,Rocky Mountainの方は快調な速めのミディアム・テンポのナイス・ブルース.バンドが終始揺るぎの無いビートを刻み,デュプリーが思いきり声を張り上げ,ピアノは得意のフレーズでごりごりとこれに絡む,というもの.

録音が多いジャック・デュプリーだから,このVik録音をどうしても聞くべきだとは思わないけれど,リイシューでもされたら聞く価値はあると思う.

|

« チャンピオンのロックンロール時代・その1 | トップページ | ニューヨーク・ギタリスト/ロッキン・ブルースマンその1 »

コメント

チャンピョン・ジャックって特別に好きなアーティストというわけじゃないけど、昔ジミー・ラッシングとカプリングで発売されていたアルバムのキング録音は印象に残ってます。なかでも、ジョージ・ハーモニカ・スミスのハープを含む55年の"Overhead Blues"はクールでカッコいいですね。

投稿: t-42 | 2007年8月23日 (木) 14時08分

やはり「特別に好きなアーティストというわけじゃない...」って感じですか.そうですよね.

> 55年の"Overhead Blues"はクールでカッコいい...

ああ,Overheadですか.確かにアレは馬鹿にカッコいいです.私がレコードを買い始めた頃にはラッシングとデュプリーのカップリング盤(KingのAudio Labレーベルですか)というのはもう見掛けなくなっていました.それでGustoの2枚組LPで初めて聞いたのですが,そのときは狂喜しましたよ.今はCollectablesのCDで聞けるようになっているので,未聴だという人には楽しんでもらいたいもんです.

投稿: BackDoorO | 2007年8月23日 (木) 20時37分

ジャック・デュプリーは、私もやはり「特別に好きなアーティスト」ではなかったんですが、代表作の一つらしいAtlantic盤「Blues From The Gutter」を近頃入手し、なかなか愛聴しています。曲名にT.B., Habit, Evil Woman, Nasty Boogie, Junker, Bad Blood, Goin' Down Slowなどの荒んだ単語が多く、スローブルースの緊張感が何だか好きです。最近のフィリップ・ウォーカーのアルバムで「Bad Blood」が取り上げられていたのに気付いたのですが、何かの因縁でしょうか?

投稿: 輪高マリ | 2007年8月23日 (木) 22時40分

> 最近のフィリップ・ウォーカーのアルバムで「Bad Blood」が...

へえ,フィリップ・ウォーカー,ずいぶん渋い曲を引っ張り出してきますねえ.誰のバージョンで覚えたんでしょうか.オリジナルはウォルター・デイヴィスのThink You Need A Shot.デュプリーはこのタイトルでも録音しているみたいです.Bad Bloodのタイトルではジョニー・ヤングが録音しているし,エイモス・ミルバーンのOperation Bluesというのもこの歌でした.注意すれば色々カバー・バージョンは見つかりそうです.

Blues From The Gutterはサックスとかギターとか伴奏陣のサポートも良いと思います.良い曲が多くてやはり代表作でしょう.

投稿: BackDoorO | 2007年8月23日 (木) 23時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103105/16207329

この記事へのトラックバック一覧です: チャンピオンのロックンロール時代・その2:

« チャンピオンのロックンロール時代・その1 | トップページ | ニューヨーク・ギタリスト/ロッキン・ブルースマンその1 »