もったいないよ
いまさら何を,という話だが,1950年代から1960年代に掛けて,無名なアーティストがシングル盤で発売していたブルース音楽というのは,現在CDやらダウンロードやらで簡単に聞けるものばかりではない.需要が無くて商売にならなければディジタル復刻されないのは当然だし,音楽的に「どうでもいいや」というのも多いのだが,その一方で「これが広く聞かれることなく放置されてよいものか」というのも確実にある.あまり有名とは思われない次のレコードはどうだろうか.聞いた人が少ないとすれば,もったいないことだ.
Ben Harper (Music by the Cinco's), Driveway Blues b/w Here Comes My Gal, Talent 106.
どんな内容かというと,ハーモニカ入りの思いっきりダウンホームなブルース.素晴らしいと思うんだが.
とりわけDriveway Bluesの出来がよい.リラックスしたテンポのスロー・ブルースで,ひなびた味のある生ハープをバックにゆったりと歌われる.このヴォーカルが逸品で,さびの効いた渋い声で,ちょっとレイジーで,張りもあって,その一方で暖かみもある.ハーモニカと歌は両方ともベン・ハーパーによるものらしいが,同時に聞こえるので多重録音なのだろう.
Here Comes My Galの方はミディアム・テンポのブルース.こちらのハーモニカはジミー・リードっぽい甲高い音色で,女声ヴォーカルも入り,最後はハーパーと掛け合いのようになって,全体的には大分賑やかな印象になる.Driveway Bluesほどではないけれど,こちらも悪くない.
The Blues Discography 1943-1970によれば1960年にロサンゼルスで作られたこのレコード,ベン・ハーパーが歌とハーモニカを担当している以外,The Cinco'sというバンドのメンバー(ts, p, g, b, d)は分からないようだ.ベン・ハーパーの録音は他にCencoレーベルに2枚,Skylarkレーベルに2枚ある他,TalentレーベルではThe Cinco'sという名前でもレコードを出しているそうだ.もちろん,これらも聞いてみたいのだが,果して,聞ける日が来るのかどうか.
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コメント
以前から気になってたのですが、このベン・ハーパーは現在活動しているベン・ハーパーとはどういう関係なんでしょうか?
親子とか、たまたま名前が同じとか・・・
このシングル、つい最近大阪は心斎橋にある某レコード店に入荷してましたが、すぐに売れてました。
投稿: t-42 | 2007年5月27日 (日) 17時51分
今の,有名なベン・ハーパーはこのレコードが出来てから何年も経って生まれているようなので同一人物でないのは確かです.Wikipedia(英語の)に出ている今のベン・ハーパーの情報だとお父さんとかでもなさそうで,偶然の一致っぽいです.
# 何やら同じ名前の有名人がいる,という認識しかありませんでしたが.
> 心斎橋にある某レコード店に入荷...
買った人は良いお買物ですよ.
投稿: BackDoorO | 2007年5月27日 (日) 20時36分