« ブルース洪水暦 | トップページ | もったいないよ »

2007年5月14日 (月)

コメディアン兼ブルース・シャウター

少し前のことになるが,今年の2月に発売されたブルース・アンド・ソウル・レコーズ誌74号の98ページを見て,びっくりした.

「ああああ,ロスコー・ホランドって,顔,あったの?」

いや,顔は誰しも一つはあるのだけれど,ロスコー・ホランドの顔を写真で見れる日が来るとはまったく思ってもいなかった.それもLPのジャケット写真の中に写っているんだが,この人,LPなんて出ていたのか.おまけに,な,なんと,そのジャケットではピアノを弾いている(まさか弾いてる真似じゃないだろう).楽器を弾く人だったなんて全然知らんかった.名前くらいしか分からない人だと長い間思い込んでいたのだけれど,そうか,そうか,こーゆー人だったのか.LPはDootoレーベルからコメディのシリーズとして出ていたモノだそうだ.The Blues Discography 1943-1970のロスコー・ホランドの項には「このアーティストはコメディの録音をしている」と書いてあるけれど,それがこれだったか,なるほど.

ロスコー・ホランドはコメディ方面の方が実績があるのか,The Blues Discography 1943-1970に載っている彼のレコードは1枚だけだ.だけど,そのたった1枚のおかげで彼の名前は忘れられないものになっている.

Roscoe Holland, Endlessly b/w Troubles, Troubles, Troubles, Rand 3148.

Rand3148 録音地はロサンゼルスとされているが,正確な録音時期は分からないようだ.音の感じからすれば1960年前後~60年代前半位,というのが一番ありそうだ.

Troubles, Troubles, Troublesはウェストコースト・ブルースの快作.曲の方はローウェル・フルソンがTrouble Bluesとして録音して,B・B・キングがTrobles, Trobles, Troublesという題名でヒットさせた有名曲.これをちょっとテンポを早めにして,分厚いホーン陣とよく弾むリズムをバックに,ロスコー・ホランドは張りのある声で気力十分に歌っている.非常に熱気のある歌唱と演奏で聞いていても力が入るが,ホランドが3コーラス歌い切ると,今度は猛烈なサックス・ソロが飛び出して来る.猛烈なのは当然で,レーベルには「Saxophone: Big Jay McNeely」と記されている.さすがにマクニーリーはその方面の第一人者らしいパワーで聞かせる.

このレコードはEndlesslyがA面のようだ.こちらも有名な曲のカバー・バージョンで,オリジナルはブルック・ベントンが1959年にヒットさせたポップR&B.ブルック・ベントンのものと聞き比べると,オリジナルは結構早いテンポなのに,ロスコー・ホランドの方はかなりテンポを落としているし,ベントンがあくまでソフトで滑らかな歌い方を崩さないのに対し,ホランドの方はブルース・シャウター声を張り上げたりする.伴奏もホランド版の方がずっと武骨だ.そんな訳で,ホランドのEndlesslyは,それなりに歌手の個性を活かすべく,独自の解釈をしたバージョンとは言えるだろう.ただ,このホランド・バージョンをそんなに聞きたいかと言えば,そうでもない.ブルック・ベントンとロスコー・ホランド,どっちのEndlesslyを聞きたいか,と言われたらブルック・ベントンと答えそうだ.

このレコードのバンドのアレンジだが,特に傑作Troubles, Troubles, Troublesでは非常に上手くできている.アレンジャーはマックスウェル・デイヴィス,とレーベルに明記されている.デイヴィスはサックス奏者として自己名義の録音も多いと思うが,それと共にB・B・キングやローウェル・フルソンのKent録音等で腕をふるったアレンジャーとして印象深い.リトル・ジョー・ブルーのStanding On The Thresholdのアレンジなんかも良かった.このロスコー・ホランドのレコードでもデイヴィスはとても良い仕事をしていると言えるだろう.

|

« ブルース洪水暦 | トップページ | もったいないよ »

コメント

はじめまして。
「シングル盤」とか「コレクタ-」などで検索していまして、ここにたどり着きました。
僕は基本的に戦前戦後を通してあらゆるタイプの北米黒人ダンス音楽を聞いています。
いまはジャンルは違いますが、音楽系のブログやホームページをいくつかやっています。(そのうちのひとつはアドレスを貼り付けておきました)
ブルースはもちろん今でも聞きますが、以前ほどの情熱はなく、この学究的ともいえる真摯なブログにであって衝撃を受けています。
いくつかお聞きしたいことや追加事項があるのですが、まずはレスの付いていないここから、教えていただきたいと思います。
ロスコーですが、僕も「Troubles, troubles, troubles」から入りました。冒頭のBB系のギターに続く重厚なバック、張りがあり歌心のあるロスコーのヴォーカルにノックアウトされたものでした。
果たしてロスコーは「コメディアン兼ブルース・シャウター」なのでしょうか?
僕には、基本的にカクテル・ラウンジ・ピアノ・ブルース・シンガー、以後カメレオンのようにスタイルを変えている人(笑)ってイメージです。
コメディアンというのはDootoの800番シリーズでアルバムを出しているからでしょうか。このシリースがそういう位置づけなのか同課分かりませんが、Vernon Green & The Medallionsも800番台でアルバムを出しています。
DootDTL812という彼のアルバムは、ジャケットの色合いとデザインが素晴らしくこの時代を反映しているのでとても印象に残っていますが、曲的には冒頭に入っている「Foul mule train」が最近のイギリスのクラブ系ロッキン・ブルーズ好きでは高く評価されているくらいで、コメディー系の曲は入っていません。
彼はその後自己のレーベルRandでレコードを出していきますが、「Troubles, troubles, troubles」のような重厚なブルースは他に出していなそうです。僕はRandのアルバムを2枚(「Beyond the reef」と「Roscoe」)持っていますが、ここではほとんどポップなカクテル・ラウンジ・シンガー然としています。ブルース・シャウターって感じは全くありません。
でも疑問なのは、そのどちらのジャケ写真も時代が違っているとはいえ、微妙に「違う」顔をしているのです。特に後者の「Roscoe」は明らかにズラっぽいし全体に?です。ジャケ裏にはちゃんとRoscoe Hollandとありますし、レーベルもRandです。
でもそのRandも、前者のアルバムのロゴ・デザインは「Troubles.....」と同じもの、後者はブルーの別のロゴです。
別人ということはないと思いますが、そういう意味で僕にはカメレオン的に見えるシンガーなのです。
かなりな部分を裏をとらないで自分の所有レコードだけで書いてしまっているので、ずいぶん間違っていることがあると思います。その辺はどうぞお許しください。
長文を大変失礼いたしました。
また時々寄らせていただくと思います。よろしくお願いいたします。ほんと、時々はブルースも聞かなくちゃ・・・です。
今夜はエイス・ホルダー、全部聞くかぁ!(笑)

投稿: むらた まこと | 2007年7月 1日 (日) 14時33分

むらたさん,はじめまして.

> 果たしてロスコーは「コメディアン兼ブルース・シャウター」...

いや,このタイトルはBlues Records 1943-1970やBlues Discography 1943-1970にある「このアーティストにはコメディの録音...」という記述と,私が唯一聞くことができたTroubles, Troubles, Troublesのシングル盤の内容から「そんなものかな」と考えて付けたもので,多分に先入観に基づくものです.だもんで,

> 基本的にカクテル・ラウンジ・ピアノ・ブルース・シンガー、以後カメレオンのように...

というお説が真実のように思われます.

> 「Foul mule train」が最近のイギリスのクラブ系...

へえ,そんなことになっているのですか.じゃあDooto録音とか近いうちにCDで出るかもわかりませんね.

> Randのアルバムを2枚...

Randレーベルのロスコーの録音をフォロウしているコレクターの方というのは珍しいのではありませんか.The R&B IndiesなんかでもRandレーベルの項にEndlessly/Troubles, Troubles, Troublesしか出ていません.上に書いたディスコグラフィーの編者もTroubles...以外実際には聞いていないのでしょう.むらたさんは,ほとんど誰も知らないような希少盤をお持ちなのだと思います.

> 微妙に「違う」顔をしているのです

これは,どっちかが適当に他人の写真で間に合わせたんじゃ...

それにしても興味深い情報,ありがとうございました.私が音楽に使えるお金と時間とエネルギーには限りがあって,完璧な情報を私一人が書くのはちょっと無理です.足りない部分や見当の違うことがあちこちにあると思いますので,今後もどしどしご指摘下さい.

>そのうちのひとつはアドレスを貼り付けて...

リンクを張っておきました.ここに来る御常連も見に行くと思います.

投稿: BackDoorO | 2007年7月 1日 (日) 19時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103105/15073467

この記事へのトラックバック一覧です: コメディアン兼ブルース・シャウター:

« ブルース洪水暦 | トップページ | もったいないよ »