シャウターとささやき
昔々,若いブルース・ファンだった頃,パイニー・ブラウンというシャウターにはまった.はまった,といっても聞いたのは1曲だけ,King系のコンピレーションLPに入っていたWhispering Bluesという歌だった.これが良くて,1953年録音のジャンプ・ブルースなのだけど,ごわごわした迫力ある声で,味のある節回しでゆったりと歌う.昔は,「こんな野太い声でささやき(Whispering)のブルースはないよな」と思っていたが,これは歌っている人がささやくという意味ではなく,「他人が自分の悪口をひそひそ言うのはうざくって仕方ない」という内容なので,別におかしくはない.その,他人の悪口の部分を表す女の語りが終始絡む,というノベルティはちょっと変てこだけれど,面白い効果がある.
それで,この人の録音は他に聞けないか,と思ったけれど,その頃はあまりパイニー・ブラウンなんてリイシューも新録もなかったと思う.シングル盤でNashville Wimmin b/w One Of These Days (Sound Stage 7 2657)を聞けたけれど,これが,まあ同じ声の同じ人ではあるんだけれど,60年代終りのソウルのスタイルで無理矢理仕上げて,どうも歌いにくそうで,好きになれなかった.最近になってこれがローカル・ヒット,と知って意外に思ったりしたが,Sound Stage 7盤を聞いて以来,パイニー・ブラウンという人に興味を失いがちになってしまった.
Piney Brown, Ain't It A Shame b/w Two Lips In The Dark, D-JKN 8813.
それから,年月は流れ(二十ン年?),今,パイニー・ブラウンの聞けるCDというのが我が家には2枚ある.1つはDelmarkのAppolloレーベル・シリーズの1枚で1948年の録音が8曲入っている(Delmark DE-754).もう1つは2006年に出たOne Of These Daysというタイトルの単独アルバム(Bonedog BDRCD-20).1948年と2006年とは間が空き過ぎだが,どちらが良いかと言うと,どちらも物足りない.1948年の方は,スムースだけど,小粒なシャウター,ときどきワイノニー・ハリス似という感じ.2006年のは,思ったより良いが,トシが80過ぎだし(彼は1922年生まれ),そんなに期待するのは無理.
彼のシングル盤は,あまり持っていない.今回のD-JKN盤以外にSound Stage 7盤を2枚とNew World盤というのをこれまでに入手できた.SS7のは前述のとおりソウルか,そうでなければロック,1980年代のNew World盤はディスコっぽく聞こえる.流行りを採り入れるのは悪くはないけど,この辺りの作品は1922年生まれのシャウターには無理があるんじゃないの.SS7のOne Of These DaysやNew World盤の両面は2006年のCDで再演しているが,その再演版の方がブルース寄りに仕立て直されて良いと思う.
ということで,D-JKN盤は自分の入手したブラウンのシングル盤では一番良かった.多分1980年代のもので,ブラウンは還暦過ぎだと思う.Ain't It A Shameは,ロイ・ブラウンの同名曲ともロイド・プライスの曲とも違う,パイニー・ブラウンが自身で作った曲.ミディアム・テンポのブルースで,ギター2本,ピアノ,ベース,ドラム,という編成の伴奏が付く.それで,パイニー・ブラウンだが,歳はとっても,声の迫力は失っておらず,強引に声を張り上げる歌いっぷりに爽快感がある.Whispering Bluesほどじゃなくても,二番目くらいに好きかも.2006年のCDでも再演している.
Two Lips In The Darkの方は,かなり本気でスウィートなソウル・バラッドをやっている.彼の武骨でしなやかさ皆無の節回しじゃ全然無理なマテリアルだと思うけどね.それでもこの人が声を張り上げると何やら破壊力がある.
レーベルの住所はオハイオ州デイトンとなっている.Distributed by Jewel Recordなんてなっているが,このJewelはシュリーヴポートのアレではなく,オハイオ州シンシナティにあった別の会社.
パイニー・ブラウンというシャウター,ピークのときの力は相当なものではなかったか,と思う.しかし,なんかまだ「こんなものじゃないだろう」というもやもや感がある.もっと古い,1950年代にあちこちのレーベルに録音したものはWhispering Blues以外未聴なのだけど,これらを聞かないと本領は判然としないかもしれない.
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これが,ジェシー・アンド・バズィー名義のものとはだいぶ感じが違う.こちらはベース,ピアノが入って,ずっとにぎやかで,前作のカントリー・ブルースまがいからR&B風になっている.
ジェシーというのはジェシー・パーキンスといって歌手でハーピスト,バズィーというのはバズィー・ルビンスキーといってギタリスト,というのは分かっている.The Blues Discography 1943-1970は1958年10月の録音として,録音地はニュージャージー州ニューアーク?,としている.はてなマーク付きだが,本当はどうなんだろう.
I Don't Knowウィリー・メイボンが1952年にヒットさせてスタンダードになった,あの曲.一応ウィリー・メイボン作とされる曲だが,クリプル・クラレンス・ロフトンがStrut That Thing(1935年録音)やその再演版のI Don't Know(1939年録音)で同じ歌詞を使っていて,ロフトンの作というのが正確だろう.ロフトンはロイヤルティーを貰い損ねたそうだけれど.そんな曲の歴史にはおかまいなく,またしてもスキップ・イースタリングは原曲とは全然別のものを作り上げている.これは,どういうスタイルとも表現しにくいが,歌い方は一応ソウル歌手の手法,という感じ.伴奏もふくめた全体の音には何となく,てれん,としたユルい雰囲気が感じられる.アレンジは,Hoochie Coochie Manとは違って,比較的ブルースらしさが残るものになっている.そのせいもあって,斬新さには欠けるけれど,それでも十分個性的だ.
ジェイムズ・“スキップ”・イースタリングという人は,白人ソウル歌手でピアニストだそうだが,1960年代からニューオーリンズのいくつかのレーベルでレコードを出している.20年位前にCharlyがリイシューLPを出していたようだ.このレコードは1971年のもので,ヒューイ・スミスがプロデュースしている(参考:
ニューオーリンズのR&B歌手トミー・リジリーは,1973年からプロデューサー業に転身し,その初期の制作作品がこのローズ・デイヴィスのものだという(John Broven, Rythm & Blues in New Orleans, Pelican).The Blues Discography 1943-1970は1968年録音としているが,おそらく間違いで,1973年頃の録音と思われる.
両面ともCDで簡単に聞けるので,アナログのシングル盤を引っ張りださなくてもよいのだけど,まあ安かったし,お買い得な方だ.
ウィリー・ガーランドという人は,1960年代にKentから出したシングル盤で知られている,いや知られてもいないだろうが,シンガー/ハーピストだ.Kent盤は1967年録音だけど,それにしては古すぎるスタイルで,それがちょっと良いのだけれどね.そのKent録音の3曲はP-VineでCD化されている(West Coast Modern Blues 1960's, PCD-3060).初録音は1955年で,ガーランド・ザ・グレートという,ちょっとプロレスちっくな名前で出たものだった.そのうちの1曲Hello Miss Simmsというのは,以前買ったStompin'レーベルのLPに入っていて,これが彼のハーモニカをフィーチャーした活きの良いインストゥルメンタルで,意外と格好よかった.同セッションのものが,UK AceのCD,Spark Records Story (CDCHD801)にも2曲入っているようだ.
ニュー・オーリンズのブルースマン,エディー・ラングのレコードでは,このブログの最初の方で
1973年に出たらしいこのレコード,デイヴィスが実力を出し切っているとは言えない.悪いとも言えないけれど.















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