2017年7月23日 (日)

ナッシュビルの片隅で

テネシー州ナッシュビルのブルースやらR&Bやらずいぶんリイシューされたと思うけれども,コレはどうだろう.CDとかで聞いたような記憶がない.

Morris Bailey and the Thomas Boys, Tell Me Why b/w Calendar Hanging On The Wall, Bailey Records 500.

Bailey500 アーティスト名がBaileyでレーベル名もBaileyだから,これはアーティスト自身のレーベルなのだろう.しかし,モリス・ベイリーなんて言われても,誰だかさっぱり分からない.

ナッシュビルのブルースには色々と幅があって,ロスコー・シェルトンみたいなソウル・ブルース的なものもあれば,シャイ・ガイ・ダグラスみたいなハーモニカ入りダウン・ホーム・ブルースもある.このモリス・ベイリーのレコード,1960年代のナッシュビル・ブルースの中でも極端な方で,かなり驚いた.

編成は本人の歌とギター,もう1本のギター,ハーモニカ,以上.カントリー・ブルースに近いようなもので,1960年代に,このスタイルの音楽をよくシングル盤として出したものだ,と感心する.レコードにするくらいだから,こういう音楽が1960年代のナッシュビルのどこかで,演奏され,人気があったのか.

Tell Me Whyに針を降ろせば,イントロからたちまちローダウンな雰囲気に飲み込まれる.よくカバーされるThat's All Rightのタイプのスロー・ブルースだが,ざくっざくっと重々しいリズム,渋い声,それに終始絡まる生ハーモニカが合わさって,何だか大変な雰囲気になっている.1947年のオサム・ブラウンの録音を思い出したりもする.演奏の技量が極上とは言えないかもしれないが,貴重な音楽の記録のように思われる.

Calendar Hanging On The Wallの方はアップテンポのブルースになるが,こちらも超ダウンホームな仕上がり.

The Blues Discography 1943-1970は1962年ごろにナッシュビルで録音されたもの,としている.知られざる逸品ではないかなあ。

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2017年7月16日 (日)

ワイルド・アトランタ・ブルース

これも,「ブルース ─ その源流のさすらい人 第1集」のLPに入っていて,よく聞いた.

Danny Boy, Wild Women b/w Kokomo Me Baby, Tifco 824.

Tifco824 特に気に入っていたのはWild Women.ダニー・ボーイのダウンホーム感覚ある歌,曲名とおりワイルドに盛り上がる伴奏が組み合わさり,大変に魅力ある作品になっている.

Kokomo Me Babyの方は,もう少し大人しく,クールな印象だが,こちらも快調.歌のメロディーだけ聞いていると気がつかないが,文句からするとSweet Home Chicago/Kokomo Bluesの系統の歌だと分かる.

東海岸のカントリー・ブルースに関する研究書,Bruce Bastin, Red River Blues, the University of Illinois Pressにこの録音のことが書かれている.ジョージア州アトランタでカントリー音楽のレコードを作っていたビル・ロウリーという人がいて,このレコードは,彼のスタジオで1958年に録音されたものだという.一方,The Blues Discography 1943-1970は1961年2月録音,としていて食い違っている.

Red River Bluesによると,ダニー・ボーイはハーモニカ奏者を連れてスタジオに現れたが,このハーモニカ奏者が困った奴で,商売道具のハーモニカを持って来なかったという.借りてきたハーモニカは音が外れていたが,それを使って録音は行われた.聞いた感じでは,その影響はあまりなさそう.ベース,ギター,ドラムはビル・ロウリーのスタジオにいた白人のカントリー音楽のミュージシャンだった.

ダニー・ボーイは歌とリズム・ギターを担当したという.リード・ギターは白人カントリー・ギタリスト,ジェリー・リードが弾いている.彼は,カントリー音楽の方では成功して,全米ヒットをいくつも出している.Wild Womenの間奏でぎゃらぎゃらぎゃら...と弾くのは彼なのだろう.

曲の作者は両面ともD. Thomasと記されている.一方,たまたまダニー・ボーイ・トーマスという人物がニューヨークの会社からレコード(Groovy 3002)を出しているが,これはソウル・バラッドをやっていて,アトランタのダニー・ボーイとは別人だ.

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2017年7月 9日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(11)

ジョー・リチャーズらと共に「ブルース ─ その源流のさすらい人(London(J) GXF2001)」のLPで覚えたのがドリフティング・チャールズことチャールズ・タイラーだった.

Drifting Charles, Drifting Clouds b/w Evil Hearted Woman, Lanor 515.

Lanor515 そのLPの中でも,チャールズ・タイラーのDrifting Cloudsというのは好きで,繰り返し聞いたものだった.その後,1982年というから35年も昔の話だが,Louisiana R'nB from Lanor, Red Pepper RP702,というLPが出て,彼の曲を4曲聞けるようになった.

今聞き直してもDrifting Cloudsは優れたサザン・ダウンホーム・ブルースだと思う.ゆったりと,レイドバックしたスロー・ブルースで,タイラーの歌は,ちょっとした節回しに味があって,聞き飽きない.タイラー自身によるギターがまた良い.まあ,自分でギターを弾く人が聞けば上手いとは思わないかもしれない.しかし,伝えたいことを伝える,という点では,見事な演奏だ.

Evil Hearted Womanは軽快なルイジアナ・ロッキン・ブルース.これはRed PepperのLPにも源流のさすらい人のLPにも入っていなかった.ありがちな曲かもしれないが,間奏の短いギター・ソロなど,悪くは無い.

1963年5月,ルイジアナ州クロウリーで録音されたとのことで,本人の歌,ギターの他,アル・フォアマンのギター,ルーファス・シボドーがベース,オースティン・ブルサードがドラム,というメンバー.チャールズ・タイラーはLanorレーベルで4枚シングル盤を出した後,流れる雲のようにどこかへ消えていった.

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2017年7月 2日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(10)

今度はもう少し録音の多い人を.

Raful Neal, It's Been So Long b/w You Don't Love Me No More, Whit 6904.

Whit6904 少し録音が多い,と書いたけれども,1950年代,60年代のレイフル・ニールは,ぱらぱらとシングル盤を作ったくらいのもので,マイナーな方のアーティストだったと言えるだろう.1980年代後半以降になるとアルバムを出して,一気に録音が増えたけれども.

レーベルのWhitはJewel/Ronnの一部門だから,この2曲は権利を持っている会社が内外でリイシューしていると思う.今,CDでどうなっているか知らないのだが,LP時代に日本国ではP-VineがIt's Been So Longを出していた(Harp And Blues, PLP725).そのLPが出たのは1983年,もう四半世紀近くも昔のことになってしまった.

ぴーっという高い音のハーモニカで始まるIt's Been So Longだが,ジョー・リチャーズのDreaming Dreamingとかギター・ゲイブルのHello Operatorとか,その手のものにカテゴライズされる曲.ルイジアナの歌手らしい曲ではある.このレイフル・ニールの作品は,比較的テンポを速くして,しゃきっとした仕上がりになっている.しみじみした哀愁よりは,活きの良さが勝っているようだ.

反対側のYou Don't Love Me No Moreは,がらっと雰囲気が変わり,ファンク・ブルース.アレンジャーは,同じレーベルでレコードを出していたボビー・パウエルだ.楽曲,ホーン・アレンジ,ハーモニカ・ソロ,とソツがなく,合格点はとれそうな感じ.何か,もう一つ不足しているとしたら,ヴォーカルにそれなりの味があるものの,少々あっさりしすぎで,熱さ不足のように思わないでもないことか.そういう個性なのかもしれないけれどね.

The Blues Discograpy 1943-1970は,1970年,ルイジアナ州バトンルージュで録音されたもの,としている.

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2017年6月25日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(9)

この人は,ルイジアナの歌手の中で,オブスキュアな方だろうか.

Joe Richards, Dreaming Dreaming b/w You'ld Better Change, Carl 504.

Carl504 ルイジアナ州オペルーサスのレーベルから出たもので,1962年オペルーサス録音.ジョー・リチャーズは,このレコードを出した後,ジョー・リッチという名前でクロウリーのT-Birdから1枚出して,シングル盤はその2枚で全部のようだ.

昔々のことだが,T-Bird録音の方が,ブルース─その源流のさすらい人,第1巻,London(J) GXF2001,というLPで紹介されていて,そのLPのおかげで,この人の名前をどうやら記憶していた.

Dreaming Dreamingはスリム・ハーポのRaining In My Heartみたいなタイプの曲.結構良い声をしていて,ほのぼのとしたところも,哀愁もあって,ナイスなルイジアナR&Bではある.けれど,すごく印象に残る個性があるかというと,どうもなあ.ジョー・リチャーズは,この歌をT-Birdでも再演している.聞き比べると,T-Birdの方は,このCarl盤より少しゆっくりしているかな,というくらいで特にどちらの出来が良いということもない.

You'ld Better Changeの方は,ロックンロールっぽさもある,速いテンポのロッキン・ブルース.スリム・ハーポとかでもこんなのがあったな,などと思う.なかなか楽しく聞ける.ハーモニカが好演しているのだが,デイヴィッド・“ディー・ディー”・グラドニゴという,あまり有名じゃなさそうな人が吹いている.The Blues Discography 1943-1970を見ると,彼のハーモニカ演奏を聞けるのは,他にはロスコー・シェニエの2曲と,ロンサム・サンダウンのあまり有名でない曲くらい,のようだ.

You'ld Better Changeの方はUK AceのRhythm n Bluesin By The Bayou Rompin' & Stompin', Ace CDCHD 1388,T-Bird録音はBluesin' By The Bayou, Ace CDCHD1368,More Louisiana Swamp Blues, Flyright CD 24などのCDで復刻されている.

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2017年6月18日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(8)

これはLPからのシングル・カットなのだそうだけれど,ナイス・ブルース.

Tabby Thomas, Welfare Blues b/w Leave It Like It Is, Maison De Soul 45-1027.

Maisondesoul1027 以前にも書いたように,タビー・トーマスは,色々なことをするR&B歌手,のようだが,ときどき良いブルースがある.彼は,1980年代にMaison De SoulレーベルにLPを3枚録音しているそうだ.これらを,昔どこかのレコ屋で見たかもしれないが,何となく持っていない.これは,そのうち1枚め,Rockin' With The Blues, Maison De Soul LP-1010に入っているもの.

Welfare Bluesはスロー・ブルース.Welfare Bluesといっても,福祉行政に不満を言うとかいう内容ではなく,福祉窓口の列に並んでいた女といい仲になったが,それが,...という男女間の歌になっている.モダンで,スムースな作りの曲で,なかなか良い味わいの曲だと思う.

Leave It Like It Isはミディアム・テンポのソウル曲.楽曲は悪くないけれど,トーマスの歌が,ちょっと曲に合わないようだ.

1984年の録音.本人の歌,オルガンの他,ヘンリー・グレイのピアノも入り,クリス・トーマスもギターかドラムで参加しているようだ.

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2017年6月11日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(7)

前回に続いてアコーディオンの入るものを.

J. J. Caillier, Baby, Scratch My Back b/w Bring It On Home To Me, Caillier 8600.

Caillier8600 ええと,このJ・J・ケイリアー(と読むんですかね)という人だが,現在この名前で活躍しているザディコ・ミュージシャンは1967年生まれのJ. J. Caillier IIIという人だ.このレコードを作ったのは,その人なんだろうか?1984年デビュー,ということだから,まあこのレコードを出したとしても辻褄は合う.

とはいうものの,選曲がスリム・ハーポの有名曲に,サム・クックの超有名曲,って1967年生まれとしては懐メロ的じゃないかね.ひょっとして,先代の,今のJ・J・ケイリアーの父親じゃないか,などと考えたりする.

音楽の方だけれど,スリム・ハーポのBaby, Scratch My Backが,かなりいいんじゃないかと思っている.単純だけどノリの良いリフを,素朴なアコーディオンの音色でいつまでも反復して,それに語りが入る,という音楽.これが,妙な吸引力があって,ひとりでに体も動こうというもの.なんかローカル・ダンス音楽の恐るべき底力を伝えているぞ.

Bring It On Home To Meの方は,特にソウルフルってこともないが,アコーディオンが素朴に絡むのは悪くない.

R&B Indiesを見ると,Caillierレーベルは1975年からレコードを出しているようで,レーベル・オウナーがJ・J・ケイリアー.これは当代のJ・J・ケイリアーの父親じゃないと時代が合わないのではないか.

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2017年6月 4日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(6)

引き続きビル・パーカーというルイジアナのドラム奏者のことだけれど,Goldbandレーベルに録音していた頃からおよそ30年,自分のレーベルを作って出したレコードがこれ.

Bill Parker, I Know I'm In Love b/w The Things You Do, Optune 279.

Optune279 このレコード,写真付きのスリーヴが付いてた.その写真というのが,アコーディオンを抱えているのだが,あんた,ドラマーじゃなかったのかい?

それで,レコードのレーベルにはZydecoともR&Bとも書かれていて,本人の演奏なのかどうか,アコーディオンも入る.ザディコなら売れる,と思ったか?両面とも曲の作者とプロデュースはウィリー・P・ギドリー,つまりビル・パーカー自身となっている.

I Know I'm In Loveは確かにザディコでR&Bという感じ.にぎやかで,楽しく聞ける.パーカー自身が歌ってはいるが,これが弱点.残念ながら,歌はかなりダメな方だ.

The Things You Doはちょっと甘口のブルース・バラッド.まあ,雰囲気的には悪くないような...ただ,これもパーカーの歌が素人っぽいのが減点材料.

ということで,The Things You Do, Optune LP-0261というアルバムも出してはいるが,これ以上この人の歌を聞きたいか,と言われると,ビミョーなところ.

Billparker

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2017年5月28日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(5)

ビル・パーカーというドラマーが,ルイジアナで長い間活躍していて,いろいろな録音セッションに参加している.自身の録音は1950年代から1960年代にかけてGoldband等にある他,自身のレーベルOptuneでもレコードを出し,1990年にはLPも出ている.このシングル盤は1960年か61年の録音.

Bill Parker/Little Miss Peggy, Oink b/w Peggie's Blues, Goldband 1121.

Goldband1121 Oinkというのは,サックス中心の,陽気なR&Bインストゥルメンタル.Oinkって豚の鳴き声だが,サックスがぴ〜ぴっ,と頓狂な音を出すのが豚だろうかね.向こうの豚は甲高い鳴き声なんだな.

聞く価値があると思うのは,リトル・ミス・ペギーという女性歌手が歌うPeggy's Blues.リトル・ミス・ペギーって,誰だか分からないが,この頃,ビル・パーカーの録音のいくつかで歌手として起用されている.Peggy's Bluesはスロー・ブルースで,ルイジアナのブルースとしてはダウンホームでもなく,サックスも入り,ジャンプ・ブルースに近いように思う.それで,リトル・ミス・ペギーという人,目一杯の声量でシャウトしまくる.イントロが終わって,歌が始まれば,その迫力に,おおっ,と驚く.その勢いが最後まで持続するから,偉いものだ.伴奏のアレンジは少し落ち着きがないようで変てこだけれど,この豪快な歌いっぷりを聞くと,それはどうでもよくなる.有名ではないけれど,上手いと思うし,力量ある女性シャウターなんじゃないか.

ビル・パーカーは本名ウィリー・パーカー・ギドリー(Willie Parker Guidry).The Blues Discography 1943-1970によると,このレコードの伴奏陣は,サックスにD・D・ジョーンズ,ピアノにルーズベルト・ディカーソン,ギターにチェスター・ランドル,ベースにポール・ルイス,ということだそうだ.

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2017年5月21日 (日)

ルイジアナ・ブルースのいろいろ(4)

前回のレコードと同じく,これもジェイ・ミラーのレーベルから出たものだけれど,時代はあれより少し古い.

Mr. Calhoun, Hello Friends, Hello Pal b/w On The Sunny Side Of Love, Zynn 508.

Zynn508 ミスター・カルフーンといったり,ポルカ・ドット・スリムといったり,ヴィンス・モンローといったりもする,この方の本名はモンロー・ヴィンセント.色々な名前で少しずつレコードを出しているけれど,単独のアルバムは無さそうだから,そう有名でもないだろう.そうではあるけれど,質の高い作品を残した人だった.

このレコードの2曲,最初に聞いたのはGonna Head For Home, Flyright LP-517というLPでのことだった.もっとも,そのLPに入っているのはシングル盤とは別テイクだった.

Hello Friends, Hello Palはミディアム・テンポのブルース.ごくダウンホームな伴奏に,よく通る美声が心地よく,とても良い出来.この声の質が抜群なので,大ヒット曲みたいなのは無くても,ミスター・カルフーンことヴィンス・モンローは忘れられない歌手ということになる.

一方,On The Sunny Side Of Loveはメロディアスな,バラッドっぽいブルース曲.ケティ・ウェブスターも同じ曲を録音していた.この曲でも,朗々と,安定感ある歌を聞かせ,良い感じに和める.適度に力の抜けたハーモニカにも味がある.

The Blues Discography 1943-1970によると,録音は1959年.メンバーは,歌とハーモニカがヴィンス・モンロー,ギターがギター・ゲイブル,ドラムがクラレンス・エティーン,ということで,ほぼギター・ゲイブルのバンドによる伴奏といえそうだ.

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