2017年10月15日 (日)

サバイバーの正体

この人が何者なのか,はっきり分かる日が来るとは思ってもいなかった.

Benny Turner, I Don't Know b/w Good To Me, M-Pac! 3090.

Mpac3090 ジョージ・リーナ―のM-Pac!レーベルから出た,ベニー・ターナーという人物のレコード,1963年1月のコピーライト表示がある.ところが,The Blues Discography 1943-1970には載っていない.これは,ちょっとブルース音楽からは外れる,という判断があったからかもしれない.1960年代のリーナ―のレーベルらしい,シカゴのソウルとブルースの境界のような位置づけの作品ではある.

I Don't Knowは,High Heel Sneakersを速くしたようなリフも使っていて,その辺はブルースに近いのだが,ゴスペルっぽい効果もかなり使って,特に最後の方は初期ソウルの雰囲気になる,というもの.リッキー・アレンなんかにも近いようにも思う.Good To MeはR&Bバラッドで,それなりの重みと暖かみがある,というもの.両面とも凄いとも思わないが,悪くないシカゴR&Bだろう.

このレコードを入手して30年くらい経つのではないかと思うが,ベニー・ターナーとは,1960年代のシカゴに居た,誰だか良く分からないR&B歌手,と認識していた.それが,なんと,Living Blues誌の最新号(251号)の特集は,他ならぬ,このベニー・ターナーなのだ.記事によると,最近CDを出していて,Survivor: The Benny Turner Storyという本まで出したのだという.本って,...本を出すほど有名だったのか,この人.

彼は,これにも驚いたのだが,有名シンガー/ギタリスト,フレディー・キングの5歳年下の弟なのだそうだ.キングのバンドのベース奏者として音楽家としてのキャリアを開始して,1959年にはディー・クラークのバンドに加わり,彼のVee-Jay録音に参加したという.その後,ジョージ・リーナ―に紹介され,One-derful!やM-Pac!から自己名義のシングル番を出すことになる.1960年代から1970年代にはフレディー・キングと行動を共にして,キングの1964年8月のセッションに参加している.キングの死後はマイティー・ジョー・ヤングなどとも活動したが,ニューオーリンズへ移って,マーヴァ・ライトのバンドのベース奏者として成功し,自己名義のCDも何枚か出した,という経歴だそうだ.

1960年代にジョージ・リーナ―のレーベルで録音していた連中,マッキンレー・ミッチェルやジョニー・セイルズやオーティス・クレイやロニー・ブルックス...みんな既にこの世の人ではない中で,ベニー・ターナー,よくぞ生き残ったものだ.78歳になったそうだが,これkらも元気でいてほしい.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月 9日 (月)

ブルース・ハーモニカの源流

前回紹介した本,Blues for Francis (Music Mentor Books)の118ページ,「白人のレコード会社は1920年台までは基本的に黒人音楽を録音しなかった」という文に脚注がついている.その脚注は,「カズンズ・アンド・デモス,ディンウィディー・カラード・カルテット及び多くのジュビリー・グループによる録音,それにヨーロッパで行われた驚くべき数の録音によって,この説は今では成り立たないものと研究者は考えている」としている.そうだ,この「ヨーロッパで行われた驚くべき数の録音」のことを書こうと思っていたのだ.

1920年代以前に,ヨーロッパで録音された黒人音楽を,可能な限り集めたCDのボックス・セット,というのが販売されている.Black Europe, Bear Family BCD16095,というのがそれだ.LPサイズ,厚さ8.5cmの箱に収められたCDの数は44枚,これに300ページほどの解説書が2巻,これはライナーノーツなどではなく,ハードカバーの「本」というべきもので,ずっしりと重い.その他に解説書の索引やディスコグラフィカル・データのpdfファイルを収めたデータCDもついてくる.お値段も重量もそれなりのものだ.

さて,CDが44枚あっても,大半はさほど興味がわかない.アフリカン・アメリカンのものは4割くらいだろうか.残りはアフリカ大陸の人がヨーロッパで録音したものだ.アフリカン・アメリカンのものでも,ブルース好きが聞けるものはさらに限られる.それでも,いくつかは聞く価値がある.

この大仰といってもよいCDセットを買い込んだのは,ピート・ハンプトンの録音が一気に76トラックもリイシューされたからだ.これまでは3曲くらいしか聞いていなかったので,こんなにCD化されていると知ったときは,かなり驚いた.ピート・ハンプトンは,1871年,ケンタッキー州ボウリング・グリーン生まれの歌手,ハーモニカ,バンジョー奏者で,1903年に英国に渡り,同年から1910年までの間,英国で多くの録音を残している.

ハンプトンの録音で,特に重要なのは,何バージョンか収められた(The, Dat) Mouth Organ Coonだろう.1904年のNicoleレーベルに録音された2つのテイクが良いと思う.何やらのどかな調子の歌で始まるが,やがて曲は加速し,ラグタイム・ピアノをバックにハーモニカ・ソロが始まる.リズミカルに,ノリよくハーモニカを吹きながら,「わうわー」と叫んだりするのだが,聞いていると,「これは,だいたいサニー・テリーみたいなもんだね」と思う.誰しも考えることは同じとみえて,分厚い解説書にも,「何十年も後,サニー・テリーのレコードで1940年代以降に広まったスタイル」と書かれている.音をベンドする技術もいくらか使われている.とにかく,これがアフリカン・アメリカンによるハーモニカ演奏として最初に録音されたもので,後の録音とのつながりも感じられるのだから,重要なものだろう.

ハンプトンの録音では,他にI'm Goin' To Live Anyhow Till i Dieというのも良い.これもラグタイム・ピアノをバックにノリがよく,バージョンによっては「ウェーイ!」とシャウトして盛り上げたり,なかなかのものだ.黒人作曲家のシェップ・エドモンズが1901年に発表した曲で,楽譜としてよく売れたらしい.1920年代には白人ミュージシャンによって何度か録音されたそうだが,黒人の間でもそれなりに知られた曲と思われる.というのは,ハンプトンの録音から55年後,1959年にミシシッピでアラン・ロマックスが録音したギターとヴァイオリンのデュオ,マイルス・プラッチャーとボブ・プラッチャーのI'm Gonna Live Anyhow 'Til I Die (リイシューはYazoo Delta Blues and Spirituals, Prestige LP25010など)に,この曲の痕跡が見えるからだ.

他に,Peter C. Huir, Long Lost Blues, University of Illinois Pressで「プロト・ブルース」とされ,後にスタンダード化したBill Bailey, Won't You Please Come Homeが何バージョンも収められているのも注目される.

ハンプトンは,Poor Mournerなんて曲も録音している.故ポール・オリヴァーが,Songsters and Saintsの中で,フランク・ストークスのYou Shallと結びつけて解説していた歌で,米国ではスタンダード・カルテットやカズンズ・アンド・デモスによって1890年代から録音されていた曲だ.ところが,この録音はレコードが見つからないらしく,残念なことにCDには入っていない.黒人作曲家ボブ・コールとジョンソン兄弟の有名曲で,何人かの歌手が録音しているUnder The Bamboo Treeもレコードが見つからなかったようで,CDに入っていないが,これも聞いてみたかった.

CDセットには他にも注目作はあるが,それらについては,またの機会に.他のリイシューで出ていたものもあるが,音は良くなっている.例えば,ザ・ヴァーサタイル・フォーのDown Home Rag(1916年録音)などは不朽の傑作,と思っているが,以前のDocumentのリイシューなどよりずっと良い音だ.

高価なボックス・セットを特に勧めるわけではないが,紹介はしておきたかったので.




| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月 1日 (日)

出版物から(3)

何ヶ月か前に入手した本で,ちゃんと読んではいないが,Caroline Beercroft and Howard Rye, Blues for Francis - The life and Work of Francis Wilford-Smith, Music Mentor Books, ISBN 9780956267955というのを持っている.

フランシス・ウィルフォード=スミス,といえば,かつてMagpieレーベルで驚異的なピアノ・ブルースのLPシリーズを監修し,その後,Yazooでもピアノ・ブルースのCDシリーズを監修していた英国人,ということで知る人ぞ知るところであろう.彼は1927年生まれで,Yazooのシリーズは次に何が出るか,と思っているうちに,2009年に亡くなってしまった.彼は,本業としてはカートゥーン作者として有名だったそうだが,ブルース,とりわけピアノ・ブルースに関する見識の高さは抜群だった.

この本の大まかな内容は,色々な人のウィルフォード=スミスに関する思い出,彼が家(Trumpets Farm)に招いて録音をした6人のピアノ奏者,彼が持っていたBBCのラジオ番組用原稿,に分かれている.分量的に多いのは,BBCのラジオ番組用原稿の部分だが,レコードは戦前録音が多く,これをラジオで掛けていたのか,エゲレス国は進んでいるな,と思ってしまう.

その,ラジオ番組用原稿の部分だが,レコードを掛けながらお話をしたようだが,アーティスト名,曲名,レコード番号,レーベルのスキャンがあって,それでレコードにまつわる文章がある,という形式になっている.ん?これ,当ブログと書式だけは似ているぞ.いや,レコードと書いていることのレベルで,こっちは落ちるけど.

Magpieのあのシリーズをやっていた人だからといって,彼がラジオで掛けていたのはピアノ・ブルースばかりでもない.1980年3月に「悲劇と災害」をテーマに放送したときはチャーリー・パットンのHigh Water Everywhereも掛けているし,同年2月に「監獄」をテーマにした放送では,サム・コリンズやロバート・ウィルキンスと共にカルビン・リーヴィのCummins Prison Farmを掛けている.また,ゴスペル音楽を流すこともあったようだ.

そうはいっても,やはり,ピアノ関係でマニアっぽさを見せていて,それが面白いと思う.ジェシー・ベルが弾いている(かもしれない)エリザベス・ワシントンのレコードとか,彼以外にラジオで流す人がいるだろうか.

フランシス・ウィルフォード=スミスという人物に興味があれば,欲しくなる本だろう.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月17日 (日)

出版物から(2)

最近のLiving Blues誌,#250では,アレックス・ヴァン・デル・トゥーク(カタカナがこれでよいかどうか,分からない)のブラインド・ジョー・レイノルズに関する記事が面白かった.この記事はThe New Paramount Book Of Bluesという本からの抜粋なのだそうだが,その本はまだ見ていない.

ブラインド・ジョー・レイノルズは,1930年にParamountに録音したOutside Woman Bluesなどで知られている.ミシシッピ・ブルースのジャンルに分類されてきた人だ.録音後70年以上が経過した2001年になって,Ninety Nine Blues b/w Cold Woman Bluesがようやく発見,復刻された,なんていうこともあった.その70年ぶりに日の目を見たCold Woman Bluesというのはかなりの傑作ではないかと思う.

ブラインド・ジョー・レイノルズに関しては,ゲイル・ディーン・ワードローがリサーチをしていて,その結果はHe's A Devil of a Joeという記事(Chasin' That Devil Music, Miller Freeman Booksに収められている)で発表されている.それによると,次のことが分かったとされている.

(1)タレント・スカウトのH.C.スパイアはブラインド・ジョーをルイジアナ州レイク・プロヴィデンスの近くの製材所のバレルハウスで発見した,と言っていること.
(2)ルイジアナ州モンローで演奏していたジョー・シェパードという人物にたどり着いたこと.
(3)シェパードは1968年に亡くなって,ワードローは接触できなかったものの,その甥はレイノルズの録音を自分の叔父によるものと認めたこと.
(4)シェパードはヴィクスバーグから20マイルのルイジアナ州タルラーで育ったこと.
(5)「レイノルズ」という偽名は,タルラーの北数マイルにある地域の名称から付けたものかもしれないこと

このワードローのリサーチは,多くの証言に基づいたもので,疑う余地があるようにも思えない.ところが,ヴァン・デル・トゥークによると,ブラインド・ジョー・レイノルズはジョー・シェパードとは別人かもしれない,ということなのだ.

ヴァン・デル・トゥークは,まずParamountレーベルのマトリクス番号に着目している.レイノルズの録音の番号は次のようになっている.

L-144-3 Outside Woman Blues
L-145   Ninety Nine Blues
L-146-2 Nehi Blues
L-147   Cold Woman Blues

この直前にはウェスト・バージニアのアーティスト,直後にはセントルイスのアーティストのグループが録音している.例えばセントルイスのバレルハウス・バックはL-152,L-153,チャーリー・マクファデンL-154,L-155,となっている.そうすると,番号のつながり具合からすれば,レイノルズとセントルイスに何か関係があるかもしれない,ということになる.

記事は,レイノルズがレイク・プロヴィデンスでスカウトされたということは否定していないのだが,Paramount録音の後,同じスタジオに居た他の音楽家と共にセントルイスへ移住したのではないか,と推測している.

レイノルズは,Paramountの後,Victorにブラインド・ウィリー・レイノルズの名前で録音する.そのVictorで録音された曲名の中に,Third Street,それからGoose Hillという地名が出てくる.ゲイル・ディーン・ワードローは,ベス・ミラージという人の証言として,これらがヴィックスバーグにあった場所だとしている.ところが,ヴァン・デル・トゥークはグース・ヒルという地名がヴィックスバーグにあったという証拠はない,としている.一方,イースト・セントルイスには,グース・ヒルと呼ばれる地区が今でもあるという.

グース・ヒルがイースト・セントルイスの地域であれば,サード・ストリートもイースト・セントルイスに以前存在した有名な歓楽街のように思われる.ピーティー・ウィートストローが住んでいた,という地域だ.確かに,地名に関してはこちらの可能性が高そうに思われ,レイノルズがセントルイスかイースト・セントルイスに居たというのは辻褄が合いそうだ.

ところで,セントルイスのある住人の死亡証明書が発見されている.死亡の日時は1931年3月21日午後11時45分,死亡したのは37歳くらいの黒人で,氏名はジョー・レイノルズ,職業は「ミュージシャン」.出身地はアラバマ,となっているそうだ.これがレコードを出していたブラインド・ジョー・レイノルズなら,レイノルズがセントルイスの住人だったという仮説は正しそうに思われる.そうだとすれば,1968年まで存命だったジョー・シェパードの方は「人違い」となるのだが,どうなのだろう?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 3日 (日)

出版物から(1)

Zydecodisco Robert FordとBob McGrathによるThe Zydeco Discography 1949-2010 (Eyeball)を買った.これは,The Blues Discographyみたいな大判の本ではなくて,ブルース・アンド・ソウル・レコーズ誌などと同じ大きさの本だ.

ザディコはあまり聞かないけれど,これを見ると,そうか,それでも1%くらいは聞いているな.この本は382ページだから,3ページか4ページ分くらいだなあ.

少し前にJ・J・ケイリアー(カタカナがこれでよいのか,分からない)のレコードのことを書いたとき,どうもデータが分からなくて,それで,この本も持っていた方がいいんじゃないか,と思って入手したわけ.

それで,どうもJ・J・ケイリアーというのが今活躍中のJ.J. Caillier IIIとは違うんじゃないか,とは思っていたが,このディスコグラフィーを見たらはっきり分かった.やはり,このケイリアーはJ.J. Caillier IIIの父だった.1986年ラフィットで録音されたもので,息子のケイリアーIIIはキーボード,アコーディオンはファーネスト・アーセノー,サックスとウォッシュボードがキャット・ロイ・ブルサード,などというメンバーだそうだ.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年8月28日 (月)

偉大な先駆者

ブルース音楽に関する研究の草分け,ポール・オリヴァー氏が亡くなったそうだ.90歳だったそうだ.一昨年にはサム・チャーターズも亡くなったし,ミュージシャンだけでなくブルース音楽の魅力を文章で伝える人の方も,まあ,段々とね.

氏の著書では,ブルースの歴史(晶文社),ブルース―アフリカ(晶文社),ブルースと話し込む(世紀音楽叢書),が日本語になっていると思われる(他にもあるかな?).特に「ブルースの歴史」と「ブルースと話し込む」は,日本人がブルース音楽を理解するための手がかりとして,欠くべからざるもの,であろう.他にもScreening The Blues, Blues Fell This Morning, Songsters And Saints, と重要な著作がある.それにレコードの監修,解説も数多くあった.

Screening The BluesとかBlues Fell This Morningの目次を見れば,クリスマスとブルース,宗教とブルース,賭け事とブルース,ヒーローとブルース,エロとブルース,旅とブルース,迷信とブルース...ブルース音楽に関する面白そうなテーマはオリヴァー氏がみな手を付けているではないか.それに,ソングスターが残した作品のルーツを探りながらレイス・レコーズ以前のアフリカン・アメリカン音楽の状況に迫るSongsters And Saintsも他に類のない力作だった.

音楽評論の仕事は,1952年のJazz Journalに掲載された記事が最初(Blues Off The Record, Da Capo)だそうだが,以後,英国の大学で建築学の研究を本業としながら,音楽の方でも,「ブルースと話し込む」のような密度の高い仕事をしてきたのだから,大変なエネルギーの持ち主だった.本人は建築学と音楽の関係について,建築の方ではvernacular architectureが専門で,ブルースもveranacular(土地に特有の)な音楽だし,みたいなことを書いていた(これもBlues Off The Record).

1997年には日本にやってきて,金沢市で開催された国際ポピュラー音楽学会大会で講演をしている.そのときの予稿は翻訳され,現代詩手帖1997年10月号に掲載されていたりする.ブルース音楽とネイティブ・アメリカンの関係,という内容で,関係は結局よく分からないようなのだが,着眼点はさすがに面白い.

オリヴァー氏の著作,これを機会に読み直すのもよいのではないか.

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2017年8月12日 (土)

20年間の軌跡

前回に引き続いて,これもナッシュビルのダウンホーム・ブルース.

Shy Guy Douglas, What's This I Hear b/w Monkey Doin' Woman, Todd 1092.

Todd1092 トム・“シャイ・ガイ”・ダグラスは,The Blues Discography 1943-1970で見ると,1949年から1969年のおよそ20年間に,29曲を録音している.意外と録音が多いんだな,と思う.リイシューも進んでいて,このTodd盤の2曲はHarp Blues Ace(UK) CDCHD710というCDで出ているそうだ.1999年発売という随分前のCDだけれど,今でも買えるだろう.傑作が詰まったCDなのだけれど,いろいろ他のCD,LPと重複するのがちょっと難点.

シャイ・ガイ・ダグラスについては,20年間の成果の一部しか聞いてはいないけれど,おおむねコンスタントに優れた作品を作ってきたのではないか.重量感と安定感のある声で聞かせるダウンホーム・ブルースはなかなかのものだ.ときには歌なしのインストゥルメンタルもあるけれど,その場合はハーモニカの妙技を聞かせる.

このToddレーベルの2曲は,1963年の録音で,傑作と言えるだろう.What's This I Hearはスロー・ブルースで,南部のブルースの魅力を伝えていて素晴らしい.ざらざらとした声による味わい深い節回し,重厚で暖かみのある伴奏,最初と最後に聞けるハーモニカ,いずれも良い.Monkey Doin' Womanは一転してアップテンポのブルースで,こちらも歌,ハーモニカとも良い味を出している.

ご本人の歌とハーモニカ以外のメンバー,ギター,ベース,ドラムは誰が演奏しているのかわからない.

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2017年7月30日 (日)

今は地下6フィート

これもテネシー州ナッシュビルのダウンホームなブルース.地元の有名レーベルから出たもの.

Robert Garrett, Quit My Drinkin' b/w Do Remember, Excello 2216.

Excello2216 ロバート・ギャレットという人は,1916年1月28日テネシー州フリーヒル生まれ,1987年11月24日死去ということで,もうじき死後30年になる.古くはExcello Story (Excello DBL28025) のLPにQuit My Drinkin'が入っていたりして,まあまあ知名度はないこともないだろう.

ロバート・ギャレットという人は,よく通る声で泥臭く歌う.歌が上手いとは思わないが,上手くないのも味のうちというタイプだろう.なんか、タイミングが,どうも,テキトーだと思うが,気にしないことにする.

両面ともスロー・ブルース.リード・ギターは意外とモダンだが、これはおそらくジョニー・ジョーンズが弾いている.ギャレット自身もギターを弾くが,Do Rememberのイントロで聞ける生ギターがそれだろう.他にピアノ,ドラムが入る.

Do Rememberは,リロイ・カーのSix Cold Feet In The Groundで,間奏の後に少し違う歌詞が入る.生年からすれば,リロイ・カーが1935年に録音したこの古いシティ・ブルースを知っていてもおかしくはない.それでも60年代のシングル盤としては古風な方だろう.

The Blues Discography 1943-1970は1962年のナッシュビル録音としている,

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年7月23日 (日)

ナッシュビルの片隅で

テネシー州ナッシュビルのブルースやらR&Bやらずいぶんリイシューされたと思うけれども,コレはどうだろう.CDとかで聞いたような記憶がない.

Morris Bailey and the Thomas Boys, Tell Me Why b/w Calendar Hanging On The Wall, Bailey Records 500.

Bailey500 アーティスト名がBaileyでレーベル名もBaileyだから,これはアーティスト自身のレーベルなのだろう.しかし,モリス・ベイリーなんて言われても,誰だかさっぱり分からない.

ナッシュビルのブルースには色々と幅があって,ロスコー・シェルトンみたいなソウル・ブルース的なものもあれば,シャイ・ガイ・ダグラスみたいなハーモニカ入りダウン・ホーム・ブルースもある.このモリス・ベイリーのレコード,1960年代のナッシュビル・ブルースの中でも極端な方で,かなり驚いた.

編成は本人の歌とギター,もう1本のギター,ハーモニカ,以上.カントリー・ブルースに近いようなもので,1960年代に,このスタイルの音楽をよくシングル盤として出したものだ,と感心する.レコードにするくらいだから,こういう音楽が1960年代のナッシュビルのどこかで,演奏され,人気があったのか.

Tell Me Whyに針を降ろせば,イントロからたちまちローダウンな雰囲気に飲み込まれる.よくカバーされるThat's All Rightのタイプのスロー・ブルースだが,ざくっざくっと重々しいリズム,渋い声,それに終始絡まる生ハーモニカが合わさって,何だか大変な雰囲気になっている.1947年のオサム・ブラウンの録音を思い出したりもする.演奏の技量が極上とは言えないかもしれないが,貴重な音楽の記録のように思われる.

Calendar Hanging On The Wallの方はアップテンポのブルースになるが,こちらも超ダウンホームな仕上がり.

The Blues Discography 1943-1970は1962年ごろにナッシュビルで録音されたもの,としている.知られざる逸品ではないかなあ。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2017年7月16日 (日)

ワイルド・アトランタ・ブルース

これも,「ブルース ─ その源流のさすらい人 第1集」のLPに入っていて,よく聞いた.

Danny Boy, Wild Women b/w Kokomo Me Baby, Tifco 824.

Tifco824 特に気に入っていたのはWild Women.ダニー・ボーイのダウンホーム感覚ある歌,曲名とおりワイルドに盛り上がる伴奏が組み合わさり,大変に魅力ある作品になっている.

Kokomo Me Babyの方は,もう少し大人しく,クールな印象だが,こちらも快調.歌のメロディーだけ聞いていると気がつかないが,文句からするとSweet Home Chicago/Kokomo Bluesの系統の歌だと分かる.

東海岸のカントリー・ブルースに関する研究書,Bruce Bastin, Red River Blues, the University of Illinois Pressにこの録音のことが書かれている.ジョージア州アトランタでカントリー音楽のレコードを作っていたビル・ロウリーという人がいて,このレコードは,彼のスタジオで1958年に録音されたものだという.一方,The Blues Discography 1943-1970は1961年2月録音,としていて食い違っている.

Red River Bluesによると,ダニー・ボーイはハーモニカ奏者を連れてスタジオに現れたが,このハーモニカ奏者が困った奴で,商売道具のハーモニカを持って来なかったという.借りてきたハーモニカは音が外れていたが,それを使って録音は行われた.聞いた感じでは,その影響はあまりなさそう.ベース,ギター,ドラムはビル・ロウリーのスタジオにいた白人のカントリー音楽のミュージシャンだった.

ダニー・ボーイは歌とリズム・ギターを担当したという.リード・ギターは白人カントリー・ギタリスト,ジェリー・リードが弾いている.彼は,カントリー音楽の方では成功して,全米ヒットをいくつも出している.Wild Womenの間奏でぎゃらぎゃらぎゃら...と弾くのは彼なのだろう.

曲の作者は両面ともD. Thomasと記されている.一方,たまたまダニー・ボーイ・トーマスという人物がニューヨークの会社からレコード(Groovy 3002)を出しているが,これはソウル・バラッドをやっていて,アトランタのダニー・ボーイとは別人だ.

| | コメント (3) | トラックバック (0)

«ルイジアナ・ブルースのいろいろ(11)